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6-3 襲撃

 回想は終わり、洞窟の前です。

 「さて、と。ここが例の円板がある洞窟だな。入ってみるか」


 探索の結界を張り、洞窟内をゆっくりと進む。

 最近、どうも予定外の魔物に出会(でくわ)すことが多いからな。念のためだ。

 一応、俺達の役目は、他の奴の報告の裏付けでしかないからな。大丈夫なはずだ、多分。

 どうも嫌な予感がするが。


 「誰のせいだと思う? 僕はやっぱりあの性悪女がいけないと思うんだけど」


 「…何の話だ?」


 「だから、最近妙な依頼ばっかり受けてる元凶だよ。絶対あいつのせいだ」


 まぁ、セシリアが持ってきた依頼なのは確かだが。

 「俺達がこなす依頼は、基本、全部セシリアを通すんだ。セシリアのせいってのは違うんじゃないか」


 「僕らが嫌がっても“お願いします”って有無を言わさず押し切ってるのはあいつだよ。

  ここんとこ、そんなんばっかりじゃないか。

  そりゃ、僕らじゃなかったらヤバかったものばかりだったけどさ」


 「そこまでわかってんなら、許してやれよ。

  向こうも仕事なんだから」


 「意外と女の子には優しいんだ? もしかして、ああいうのが好み?」


 「おいおい、商売相手に何考えてんだ。

  こういうとこに私情入れると、ロクなことになんねぇぞ」


 「へえ、フォルスがそんなに真面目だったなんて、知らなかったよ」


 「へいへい、そりゃどうも。

  あんま考えたくはないが、たしかに最近、予定外の戦闘するハメになってるからな。気を抜くなよ」


 「探索よろしくね」




 ゆっくりと洞窟内を進む。さほど深くない洞窟内には、俺達以外には動くものはないようだ。

 セシリアにもらった図面を見ると、もう少しで目的の円板があったところだ。

 …何か近付いてくる。数は3。後ろだ。

 レイルを軽く小突き、親指で背後を指す。その後、指を3本立てて見せる。

 大きさからして、多分人間だ。洞窟で人に襲われるというと、1年前のあれ以来だ。

 あれが何者だったのかは知らないが、ギルドの職員が絡んでいた可能性が高い。もし、今回もそうだとしたら、セシリアも1枚噛んでるってことになる。あのセシリアが、俺達をハメるってのは、考えたくないが。


 とりあえず、今は後ろの3人の対処だ。

 魔法士が混じってる可能性も考えると魔素を全部こっちに引き寄せたいところだが、それをすると奴らの動きを感知できなくなる。魔力を練り始めたら引き寄せるくらいでいいか。




 魔素の分布状況からいって、俺と同じ探索の仕方はしてない。

 3人は、一定の速さで歩きながら近付いてくる。さっきまでの俺達の歩く速さと同じくらいだから、多分距離を保ってついてくるつもりだろう。

 俺達が止まっても同じ速さで進み続けてるのは、俺達と関係ないからか、俺達が止まったことに気付いてないからか。

 前者の可能性もないわけじゃないが、後者だと思っておいた方がいいな。

 敵なら、奥まで行ききる前に、ここで不意を突いて迎え撃つか。


 レイルに合図して呼び寄せ、光と音を遮断する結界を張って待つ。

 しばらくすると、3人の男が通り過ぎた。

 剣士2人に、もう1人は魔法士か? どこかで見たような顔だが…。そうか、魔狼の時のパーティーのサブリーダーだ! あのパーティーは潰れたとか言ってたっけ。そんな連中がここで何かすることあるのか?


 結界の中で、小声でレイルに教える。

 「例の魔狼ん時に潰れたパーティーのサブがいた」


 「解散したんじゃないの?」


 「わからん。よそのパーティーに加わって、ここで仕事って可能性も一応あるが」


 「逆恨みで僕らに仕返し?」


 「その可能性は高いな。剣士は剣抜いたままだったし」


 「殺していいよね?」


 「一応な。後で報告とか面倒臭いが」


 「そっちはフォルス()の仕事だから。

  洞窟入ってから襲ってくるなんて、頭悪いね。魔法士が役に立たないじゃない」


 「それはこっちも同じ条件だからな。

  向こうは剣士が2人だ、勝てると踏んだんだろ」


 「だから頭悪いんだよ。

  僕ら狙うんなら、倍は用意しないと。

  じゃあ、後悔させてあげようか」


 知った顔がいたせいで不意打ちはし損ねた。

 俺達は、結界を維持したまま、ゆっくりと後を追う。魔法士の周りの魔素をできるだけ薄めながら。

 その間に連中は洞窟の奥まで行っちまって、キョロキョロしていた。俺達を捜してるってことは、もう間違いないな。

 で、今回の依頼の対象の円板ってのは…魔法士の足下か。下手に魔法とか当てて壊さないようにしなきゃな。

 レイルに目配せしてから結界を解き、3人に声を掛ける。


 「俺達に何の用だ?」


 同時に、魔法士の周囲の魔素を全部俺達の側に引っ張る。あいにく魔法合戦に付き合うつもりはないんでね。


 追ってきたはずの相手が突然背後から声を掛けてきたもんだから、奴らは面白いほど動揺している。

 一応、俺達を狙ったっていう確信を得てから殺したいところなんだが、さて。


 「貴様ら、よくもイアンを! 仇討ちだ、覚悟しろ!」


 魔法士が叫んだ。やっぱ逆恨みか。


 「言っとくが、あんたらのリーダーを殺したのは魔狼だろ。俺達を恨むのはお門違いじゃないか? 武器を捨てて帰るならよし、そうでなければ返り討ちだ。あんたらに勝ち目はないぞ」


 ま、こんなんで引くくらいなら、わざわざ追ってこないだろうし、手順ってやつだ。

 俺達は逆恨みされた被害者で、翻意を促したが聞き入れられず戦闘になったってな。

 魔法士が魔素を集めようとしてるようだ。悪いな、させねぇよ。


 「なんだ!?」


 今更慌てても遅いぜ。

 おっと、戦士2人が突っ込んできた。すかさずレイルが立ち塞がって剣を叩き斬る。


 「なに!?」


 どうせレイル相手なら力押しできると踏んでたんだろ? 残念だったな。レイルの身体強化は人間の筋力じゃ敵わねぇよ。

 レイルは剣に魔力を載せて剣士達をぶったぎっていく。

 俺も、風の刃を水平に三段放ち、魔法士を輪切りにした。

 魔素を奪われてることに気付けなかった時点で、あんたの負けは決まってたんだよ。

 レイルの方も終わったようだ。

 剣や鎧ごと斬り裂く剣なんて反則だからな。普通の剣士じゃ太刀打ちできねぇよ。相手が悪かったな。


 「レイル、魔力は平気だな?」


 「当然。たった2人だよ? しかし、あの魔法士は間抜けだったね。

  魔素がないことにも気付けないなんて」


 「まぁ、そう言うな。お陰で楽に勝てたんだ」


 さて、本命の妙な板は、と。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >「殺していいよね?」 あっさり笑! >俺達は逆恨みされた被害者で、翻意を促したが聞き入れられず戦闘になったってな。 事実はそうだけど、心情的にはねー。 幻影にされたイアンにはちょっ…
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