5-3 魔素溜まり
今回、ちょっと短いです。
魔素溜まりの始末はギルドに任せることにした。
魔素溜まりの性質や存在理由については、わかっていないらしい。
実際、俺の目で見ても闇のような黒い魔素の塊にしか見えないし、中に何があるのか感じることもできない。
何より、魔素を操れる俺が、表面を離れた後の魔素にしか干渉できないってのがおかしい。
試しに魔石を糸で縛って近づけてみると、表面に触れた途端に魔力を吸い出されて黒くなってしまった。
魔石そのものは、魔素溜まりの内側には入っていかないようだ。
魔力を持たない石ころなんかを投げてみても弾かれる。跳ね返るのではなく、柔らかい壁にぶつけたような感じだ。
少し離れて、土の矢を作って飛ばしてみた。
触れた瞬間、土に戻って落ちていく。
どうやら、魔力を吸収されてしまうらしい。
なら、火の玉ならどうだ?
わかりやすく、爆裂する火の玉をぶつけてみたが、シュ…と消えてしまった。魔力が分解されて魔素に戻ってしまっているらしいな。
さて。この情報は、ギルドに流すべきだろうか。
言ってしまえば、俺の推測でしかないからな。
先入観を持たせずに、ギルドの方で色々試してもらった方が、後々役に立つ情報をもらえそうだよな。
「レイル、ここに魔素溜まりを見付けたってことは報告しないとな」
「ギルドの方でちゃんと辿り着けるように、場所を伝えてやんなよ」
言外に「場所だけ教えよう」と伝えると、レイルも同意してきた。
もちろんギルドは信用しているが、職員全部を信用しているってわけじゃないからな。
勝手に実験したことをわざわざ教えて、揚げ足を取られてやる必要はない。
「しかし、猫のお陰で、偶然とはいえ魔素溜まりが見付かったのは助かったな」
「ふふん。みゃあのすごさがわかったかい?
連れてきてよかったじゃないか」
しまった。レイルが勝ち誇ってやがる。
どのみち、この前のことを持ち出されりゃ、猫は黙認せざるを得ないんだが、まぐれでもなんでも、こうやって手柄を立てられちまうと文句は言えない。
冒険者は、成果が一番重要だ。たとえ猫でも、そこを主張されちまえば否定はできないよな。
「ああ、すごいすごい。ついでに、その魔素溜まりを何とかしてくれたら、もっとすごいんだがなぁ」
「妬かない妬かない。大丈夫、僕の相棒は君だけだよ、フォルス」
「そりゃどうも。
んじゃ、魔素溜まりの件はギルドに投げるってことで、帰るか」
「ん」
とにかく、帰って報告だな。




