表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/113

幕間 ノイエ・ノーキンという人

 ノイエ・ノーキンという少女にはたくさんの美点と欠点が存在した。


 彼女は生まれた時から、どんな人間であっても受け入れた。英雄として生きてきた世にも恐ろしい顔の老人の笑顔に笑い、帰る先を失った幼い一人の少女の身を心から心配し涙を流し、神子として、大貴族の令嬢として、高嶺の花として扱われていた美しい少女を自分の無二の親友と出来たのは、ノイエという少女が優しい娘であった事と同時に、彼女自身に全くの欲望が存在しないという事であった。


 生まれて間もない乳幼児の頃から、昨日と違う乳母が現われても、彼女はそれに怯えて泣くことはなく、望めばなんでも用意するであろう祖父がいくら聞いても、彼女からは、遂にその最後の日まで欲しいとおねだりをされたことはなかった。これは、彼女が幼く、物を知らなかったという事もあるが、そもそもとして、彼女自身に欲望が存在しなかったから、悪意を想定することも、欲しいと望むという事を知らなかった。


 そんな彼女であるから、幼いころに騙されて人に連れ去らわれたし、運ばれた先で泣く自分と同じくらいの子供を励ました。事件は、ニックの活躍で早々に解決したが、ノイエは祖父が助けに来てくれて嬉しかったというよりも、新しくできた友達を紹介できると喜んでいた。そう、ノイエは自分が危機的な状況にあったという認識がない。彼女は全ての人を受け入れる。自分より先に相手の事を考える。それは美点であるが、同時に恐ろしい思考であった。



 学園での最後の日、王子から彼女に伝えられた婚約解消の言葉。彼女はそこでよくわからない感情に直面し、一人でそれに悩んだ。悩めば悩むほどに顔がゆがみ、涙がこぼれる。それを、今度は、自分が大切に思う友人に見られ、彼女から何度も何度も謝罪をされて、それが何のことなのかわからないまま、親友に逃げられる。


 ノイエは、一年近くそれを、その時の事を考え続けた。その間に、王国の社交界、王家としては秘密裏に、巧妙に悪意を持って彼女を追い出した。悪意を知らないノイエがそのことに気づくことはなく、しかし同時に、自分の存在が迷惑をかけていると判断して、彼女は自分から命を捨てに行った。



 悪魔は彼女がその身にまとわりつかせる黒い想い、その濃密さに復讐を望んでいると思い声を掛けたが、ノイエにそんな感情は全く存在せず、まず話がかみ合わなかった。


 長い騒動の一夜の後で、目を覚ましたノイエは目の前にいた美しいハーフエルフのギクリから祖父ニックへの熱い思いを語られて、ノイエは困惑をする。彼女が持っていない欲しいと望む気持ちがそこにあった。


 その気持ちをどうするべきなのか、何度も夢見る学園での最後と合わせて考え一人で悩むと、ベスから外に連れ出され、長く生きてきたベスの考え方をノイは手に入れた。そして、悩むギクリを受けいた時、ギクリのそれはノイエの想像して以上の歓喜という結果があった。


 言葉にしないと伝わらない言う言葉、ギクリから言われたその言葉に、ノイエは決断した。



「どうしても言葉を伝えないといけない人がいます。」

「それは? 誰? ノーちゃん」

「私は、ザーマ様に謝りたい! メラク王子とザーマ様の2人の結婚を祝福したいのです! 」

「ノイエ様! 」

「はぁ!? ノイエ! お前! いや、そんな事を」

「はい、メイちゃん、兄さん、どおどおどお、落ち着いて」

「……、ノ―ちゃん、なんでそんなことを望むの? ザーマ様って、メラク王子は結婚相手のハイビィッシャー家の令嬢よね? 元婚約者である貴女がお祝いを言いに来たなんて言ったら、警戒するでしょうね。それに、」

「待って! ベス! ノイエちゃん、私は、あなたに幸せになってほしい。なんで、そんな事を考えるのか教えてちょうだい」


 ノイエが食堂に集まった皆の前で自分が決断したことを口にした。一番初めにメイが、続いてニックはそれに怒り、それをヒノクはそれを宥める。ベスはその言葉を受け止めて冷静に反論し、ニーナと悪魔は話がよくわかっていない。唯一、ギクリだけがその先をノイエに尋ねた。


「お祖父様たちが、私の幸せを願ってくれているのはよくわかりました。ギクリお、お母様が思いを叶えられて、それを認めてもらって、あんなに喜ばれたのを見て、私は、私の大切な友人、ザーマ様に涙のまま別れたくないのです」


 ノイエが学園での最後の日の事を話す。一同は何も言わずにその話を聞き、そして、そのことを何度も何度も夢に見てきたノイエの大きな苦しみの一端を知ることができた。


「私は、メラク様がこちらに目を合わせることなく別れを告げてくれたのは、本当に辛かったのだと思います。一番に愛した人ができたのに、結ばれない。……、だから、私にお願いしたかったのだと、思います。私はそれが理解できなかったから、きっとひどい顔でその場を離れ、ザーマ様に余計な重荷を与えてしまった。」

「ノイエ、うぅ、」「ノイエ様、」「ノイエ、」「ノーちゃん、」「ノイエちゃん」「ノイエさん」「あれ、何だろう、目が痛い、主に焼きつくように痛い」

「私は今度こそ、お二人をお祝いしたいのです。本当に素晴らしい結婚式にして、お二人を、ザーマ様を祝福したいのです!」

「わかった。任せろ! 」

「了解しました」

「あんたって子はほんとに、」

「任せない、ノーちゃん! 旦那様が用意しているのだから、最高の式になるわよ! 」

「ノイエちゃん、絶対に叶えるからね! 悪魔もいいわね! 」

「頑張ります」

「痛い、熱い、ナニコレ、何なのこれ、」 


 ノイエの思いが皆に伝わり、全員がそれに向けて協力することを約束する。その後、屋敷の戻ったドラムにノイエの望みが現状叶いそうにないことが伝えられる。そして、更に迫る危機にニック達が動き、それを打ち払って、解決したと思ったら、実は結婚自体が悪だくみの一環かもしれないという事が判明し、皆が押し黙る。


「……ノイエ、」

「お祖父様、お二人の結婚を望むのは、悪いことなのですか? やっぱり、それは、いけないことだというのですか? こんな、こんなにあのお二人は愛し合っているのに、う、う、ううう」

「ノイエ、分かった。任せろ。なぁ、ドラム、リョーエン、ギクリ、協力してくれ」

「……、侯爵が考えていることは決して実現させない。しかし、王子と娘が結婚することは、愛している二人を引き裂くことはやるべきではないのぉ」

「ノイエちゃん、ほんとに立派になりました。貴女の噂を信じかけた自分が恥ずかしい。任せなさい。神に二人必ず引き合わせましょう」

「ノイエ、貴女の幸せを叶えるためだから、絶対になんとかするわ! 悪魔もいいわね? 」


「あの、それってホントに幸せなの? なんか、いや、お嬢ちゃん、ねぇ、貴女、ほんとに人間? すごく今まぶしいのだけど? 」


 負けヒロインが望む結末の為に保護者達が動く。

ああ、やっとタイトル回収ができた。


捕捉しますと会話の一部は第47部 王宮に向かう 1 の最後にかかります。


誤字脱字など報告をいただいたところは、何度か修正しておりますが、あまりの多くて見つけきれないことありますので、何かありましたら感想で構いませんのでご報告ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ