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幕間 王宮にて

時間を戻す。

具体的には、リョーダンが北の砦にて他国の情報を察知し、更にハイビッシャー侯爵の悪だくみを勘違いしていて叫ぶより前、王都にてドラムが特別警察隊を率いて中央教会で聖堂騎士団と激突し、ハイビッシャー侯爵が怒鳴り込んできた後、王都内で渦巻く民の不満を官吏が一斉にドラムに突き付けた頃の事である。


その一連の騒動について、王家の耳に、現国王の代わりに政務に勤めるサダークの知るところとなる。そして、サダークは王家の名の下に、その問題にあたっての会議が開かれ、その場にてドラムは顔面を蒼白に染めて、呆然と立ち尽くしていた。


「王国の民は皆、悪魔の噂におびえ、日々の生活に喘いでいる。だれかが責任を取るべきだと言っているのだ!」

 「全ては、私が、責任を取ります。陛下、ですから、」

「黙れ!!お前の言葉だけで王都10万の民が納得するか!!!」

 「…、この命をもって、」

「お前の、英雄の命が、お前の名が、尊きものだということは充分に理解している。しかしそれは、こんなことで使うものか?」

 「…、王家に責任に問わせるなど、臣下が選ぶ道では、」

「答えろ!ドラム!お前は、誰の為に働いた。お前の働きは全て!王家に対しての物であるのだろう?ならば、その結果、起こって事の責は誰がとるべきか、分かるだろう?」

 「いえ、しかし、」


サダーク第一王子が急遽開いた会議は王宮で働く長官以上の役職の者がほぼ全員が集められ、一番の上座に第一王子たるサダーク座り、それに対面する形でドラムが着席していた。

その場には、ハイビッシャー侯爵や、結婚式に参加するために呼ばれた高位の貴族は一人も参加しておらず、あくまで王宮内で働くものだけが集められていた。


しかしそれは、王家に尽くす、王家を支えるものが集められていることを意味し、誰もが、王家の者の物言いに口をつぐみ、ドラムはただ一人、詰め寄られ、責め立てられていた。それは、あまりにひどい光景であった。


まず結論があり、それに向かうように議論を進めるそのやり方に参加するものすべてが困惑する。そんな会議の中で、自分の思い描く結果に向かおうと生き生きと言葉を捲し立てるメラク王子と、その言葉をぶつけられて、沈み込み、遂には口を閉ざしたドラムの姿は正に対照的であった。



「王都の窮状を鑑みれば、この状況下で結婚式などできない、いや、結婚自体するべきではない!皆、責任を感じなくていい。すぐに中止にする!私がすべての責を負う!」

「メラク、しかし、それはあまりに短慮すぎる。いきなり中止ではなく、延期なり、」

「兄上、この混乱は全て、私とハイビッシャー侯爵、ザーマにあります。王位継承権をお返しします。すべてを捨てます。私は、教会でも、追放でも何でも構いせん。私の結婚のために起きた全ての事は、原因たる者たちが責を負うのが当然でしょ?」

「メラク!いい加減しろ!この場は、王都10万の民の不満を如何に解消するかという会議の場だ。それを、お前が邪魔してどうする。」

「兄上、いえ、誰かが責任を取るべきだと、」

「責任は後で話せ、いいから今は、」

 「…」

「一旦、会議は中止にする。明日また、同じ時刻に、」

「「「「はい」」」」「…」

「メラク、部屋に戻れ、ドラム、すまないがそのまま残ってくれ。」


遂には、その場にて最高の決定権を持つサダークが口を挟みこまざるを得ないほど、メラクの発言は暴走する。

一年以上、政務の場に顔を出さなかった第三王子メラクは何かに憑りつかれたかのように一方的に喋る。王族とそれに仕える貴族であるという意識、身分の差というものあるが、メラクのそのあまりの迫力と何よりも鬼気迫る発言に会議に参加するものは何か恐ろしいものを感じた。


第一王子サダークの視点


サダークは自分の右手で一同に向かって、しゃべり続ける弟に恐怖する。その大演説を聞きながら、いったい何が起こっているのか懸命に考える。だが、理解ができない。


王都で日々募る民の不満を如何にするべきか話す会議であったはずが、メラクが参加すると言いだし、そのあまり勢いについ承認したことを後悔していた。


会議の冒頭、すべての議論を尽くす前に、いきなり自分が悪いから罰を与えろと言い始める弟に会議の場は硬直する。


今回の会議は別に犯人探しが目的ではない。問題を共有し、現在抱える複合的な問題に対してどう立ち向かうかの認識を得るためのものだ。誰が責任をなど言いだすと会議が止まることになるから、そんなことは後々やればいい。

王都の民の求める青天井の物価高を、物不足をいかに解消し、ドラムのいう不穏な噂を一掃し、治安を回復すればいいのか考えるべき場で、いきなり弟が変ことを口にして、議論が止まる。


まるで、自ら進んで罰を受けたいと望んでいるようにすら見える弟にやけっぱちな考えを改めるように穏便に提案するが、メラクはそれを受けて更に過激な言葉で返してくる。話の内容は、無茶苦茶であるのに、筋道は通っているので質が悪い。

このままでは、何も進めることができないので、メラクを一喝し、会議を中止した。


隣の弟も気になるが、その弟と議論を交わしたドラムが気がかりだ。


会議に参加したものは、大なり小なり衝撃を受けていたが、一番ダメージを受けていたのは儀典長官で一連の騒動で実行部隊を率いたドラムであろう。

官吏たちの言い分ではドラムこそが今回の元凶である。しかし、ドラムはこれまでの仕事ぶりから、ただ一心に王家への忠誠心で働いたと思われる。

メラクの結婚式を完璧に素晴らしいものにするべく働き、問題となるものを排除するべく動いた結果であるから、責めるのは酷ではあるが、全く責めないとはいけない。


しかし、だからと言って、結婚する王子が自ら責任を取ると口にしてしまえば、


「…、その、ドラム?」

 「陛下、私が、責任を、磔にしてもらい、」

「違う、お前はそこまで責任を感じることはない。あいつは、その、あれだ、結婚を前にして少し精神がおかしく、」

 「私のせいで、王家に、王国に、…私は、」

「ドラム、落ち着け、いいか早まるな!あいつも言ったが、お前の武名は尊きものだぞ、決して、早まっては、」


「陛下!失礼いたします。留学中のアルフェ様(第二王子)より、急報が!」


「なに?分かった、確認する。ドラム、いいか、決して早まるな。これは第一王子として命じる。一旦、すべての職責を解く、家に戻り、少し休め」

「…、はい、お心遣い感謝いたします。」

「早まるなよ?いいな?絶対に早まるなよ?」

「はい…、」


僅かな時間で、10は老けたドラムに念を押して、家に戻す。

急報の内容を確認するために、部屋に戻ろうとすると、更に、メラクが部屋の外に控えていた。


先ほどの、会議の場で見せた鬼気迫る表情ではなく、どちらかといえば、少し理性を取り戻した顔でこちら見てくる。

その様子に、先ほどの急報の内容が気になった。


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