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チート授与

 俺は昨日の事を思い出し、とりあえずアラネアに対してイラっとした。

 想像していた召喚士とのギャップもだが、甘え慣れた態度でグイグイ来るのも正直腹が立つ。


 失敗してくれたから良い物の、危うく人格的に殺されかけたのだ。

 謝罪されたって、すぐには許せない。


 それにしても、お姫様との結婚?


 別に面食いでは無いが、会ったことも見た事も無い相手との見合いなんて、どうしたものか。

 それに、結婚するって事は……

 もしかして初夜なんかもあったりして……


 そんな悶々とした思春期真っ盛りな妄想をしていると、俺は急に背後に気配を感じた。


「あ、あの、レオン様、お着替えを」


 うわっびっくりした。

 決してエロい事を考えていたのではなく、これは朝に起こる男特有の生理現象で……

 なんて言い訳をしたい所だが、今の俺はレオン王子なのだ。

 威厳を持って接せねば怪しまれる。


 俺の人格はレオンで、記憶も正常と言う”てい”なのだ。

 なので、俺を着替えさせようとしている少女にも、特に自己紹介はされていない。


 記憶によれば、召使いのレティシアとか言ったか……

 見た目は俺よりも少し年上なぐらい。

 名前に関しては、レオンの中でも記憶が曖昧だった。

 自分の召使いの名前ぐらい覚えとけよ。


「ああ、たのむ」


 とは言う物の、着替えを人に任せるのなんて、どうしていればいいのか分からない。

 小さい頃母親に着替えさせてもらって以来だよ。




 そんなタイミングでガチャっと音がし、アラネアがノックも無しに部屋に入って来た。

 王子の私室なのに、失礼な……


「おはよう~!」


 俺はレティシアによって、丁度ズボンを脱がされていた。


「ノックぐらいしろ! と言うか帰ったんじゃ!?」


「ああ、うん。今から帰るんだけど、その前にね。って、なに、今更恥ずかしいの? まあ、昨日よりは多少元気そうでなにより」


「うるさいな! 何しに来た!」


「ああ、私と契約した方が良いかなって、さて、何が出るかな何が出るかな」


 アラネアは部屋にズカズカと踏み込むと、俺の頭を指でバチンと弾いた。

 もはやデコピンの痛みではなく、スタンガンを喰らったような強烈な衝撃だ。


 レオンの記憶によると、アラネアの様な”グランツ”と呼ばれるシェル使いは、他人と契約してシェルを使える様に出来ると言う。

 おお、これが俺の異世界チートかと、デコピンで吹き飛びながら俺は思った。


「あ、ごめん。失敗。もう一回」


「失敗とかあるのかよ!? お前絶対ワザとだろ!」


「ごめんね?」


「ね、じゃねえぇよ!」


「てい!」


 高価そうなフカフカ絨毯の上で、大の字に倒れる俺。

 パンツ姿に下半身が寒いと、マイサンは萎んでいる。


 中身が混ざっていようが、曲がりなりにも一国の王子に対する扱いでは無い。

 だが、召使いのレティシアが目の前の暴挙を止められないとなると、こんな奴だがアラネアも相当偉いのだろう。


 レオンの記憶によると、世界に六人いる上位グランツの一人だと言う。

 あれ、こいつ下手な王様より全然権力あるんじゃね?


 俺が悶絶しながら立ち上がると、レティシアはいつでも着替えの続きを出来る様にスタンバっている。




「で、何が出来そう?」


「何って、何?」


「いや、ほら、目を閉じて~イメージして~何が見える?」


「目を閉じてって、うわっ」


 目を閉じると、暗闇の中に何かが見える。


「ほら、シェルの声を聞いて。それが君のシェルだよ。パウワァを感じるだろ~」


 声?

 言われてみると、確かに微かな音が聞こえる。

 それは穏やかな波の音の様だ。


「これは?」


「なになに?」


 アラネアは俺の頭が軋むような力で鷲深むと、一緒に目を閉じた。

 俺の見ている光景が、アラネアにも見えているらしい。


「なんだこれ? もっと意識を集中して、シェルが君の声をちゃんと聞き取れてないからぼやけてるんだよ」


「んな事言われても、これが何か分からないと集中も何も……」


「違う違う、これはまだなにものでもないから、だから君が定義するんだ。というか、君は一つしか定義できないし」


「定義?」


「すでに決まったシェルが備わっているって事だよ。返品不可のね。仕方が無い。一度私に向けて使ってみなよ。どうやったって私の下位互換にしかならないんだから、遠慮しないで、ほら」


「使うったって」


「いい? シェルは、精神力で操るんだ。ほら、考えれば」


 そう言うとアラネアは手をかざし、風を手の平の上で遊ばせ始めた。

 召喚されたと言われても、シェルと言う魔法をじかに見たわけじゃなかったので、俺は大いに感動する。

 何といっても、これを俺も出来ると言われていて興奮しない筈がない。


 俺はアラネアの真似をして手をかざした。

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