医者
初戦闘の後の諦め。
俺をおぶって走ってくれた青年は自分の事を【白上 鏡斗】と名乗り、『早く治せよー』と言って立ち去った。とてもありがたい。このご時世こんな人がまだ日本にも居るんだなぁと感じた。『あ、やっば!!』と柊が生きたり叫んだ。『どうした⁉︎』と反射で言った俺は少し後悔した。『俺クラス言ってないじゃん⁈てことは、俺だけ休み扱いかも⁉︎もーー勘弁だぞ。』呆れるなぁ。『早く行こうぜ。一応診てもらおうよ、その肩もさ。』もう俺も休みになるつもりだっての。『おはようございまーす』と訪ねた返事はとってもあどけないものだった。『はぁーい!どこいててかを、ここに、かいてください!』3、4歳の女の子だ。これに?って、自由帳じゃないかこれ!と戸惑っていると、『これに書けばいいんだね?ありがとう。お医者さん』と柊が女の子を撫でていた。さすがは隠れモテ男。リア充になったらこいつ殺してやろ。と俺たちが入ってきた診療所のドアとは別のドアがガチャっと開いた音がして、『結菜ー?そろそろ行くよ!幼稚園で遊べなくなっちゃうぞ〜!』とお母さんの声が聞こえてきた。するとすぐに『やだー!ゆいお友達と遊びたいー!でも病気の人いるよー?』としっかり自分のしたい事も今の現状も伝えている。この子、さては天才か。そんな事を考えてる俺をよそに次はお父さんが飛んできた。『すいません。患者さんがきていたのに気づかなくて!すぐ診ますので、こちらに』とのれんの奥に通された。『いつもここ開けてすぐが患者さんこないんで、油断していて…』と頭をかいている。『大丈夫ですよ。こっちもこんな時間に押しかけてすいません。』と俺よりも柊が早く、丁寧に反応していた。こいつといれば面倒ごと減るな。と心から思っている俺をよそに俺と柊自身の状態や世間話など本当に話をうまく引き出し、続けていた。コミュ障ではないと自負している俺だが、こんなのがいると自分に自信を失っているのだった。『あのー?ふくらはぎですか?太ももですか?』と聞かれて我に帰った。俺の足をじっと見てる。。『あ、えと、右のふくらはぎです。』と慌てて答える。もう自分なのかと驚いていると、すぐに自分の処置も終わった。『シップと塗り薬渡しておきますね。よければ今後とも、ご贔屓に』と笑顔を向けてくれた。これも柊の力なんだろうと諦めて診療所を出た。『なぁ、あの医者すごく患部を見てなかったか?』とすぐ柊が聞いてきた。確かに、自分と思ったことは同じだが、あのくらい普通なのかもしれない。久しく病院になんか行ってないしなぁとも考えて、『もしかして、透視とかしてたり⁈』と冗談で誤魔化し、あれだけ頑張って行こうとしていた学校なんて諦めてどこを当たってみるかの見当をつけ始めるのだった。
眠いです。