敵
とりあえずどの辺が彩凛の行きたいところかを考えながら柊の家まで全力で走っていった。ついた頃には制服は汗が沁み始めていた。いつも柊が学校にいる時間を考えると、いつも家を出ているであろう時間よりなかなか早いけど怒られないかな?と少し俯いていると、すぐに柊の家のドアがバンッ!っと弾かれた。俺まだインターホンも押してないんだけど⁈『てんめぇ…』と出て来たのは驚くほど激昂した柊だった。驚きと動揺で何がなんだか分からなくて後ずさったが、すぐにマブダチの意図を理解できた。『完全に俺が悪かった。全力な』『たりめーだ、よっっ!!』と二つ返事とともに、ゴンッという鈍い音が頭全体に響いて視界と体がぐらりと揺れてしりもちをついた。『効くなぁぁ!口ん中血の味がする!』と少しの痛みと嬉しさを含んだ笑顔で柊をみる。俺は文字どうり全力を食らったがとても清々しかった。『とりあえず学校行ってみようぜ』と言いながら柊は笑顔で手を貸し座り込んだ俺を起こしてくれる。『そーだな』と短く返し学校に向かって走り始めた俺たちだった。
柊の家を出て、学校まであと半分というところで俺はいきなり石か何かにつまずいてダイナミックに前転した。。『おい、お前何やってんの?…ぶっ』と俺を見て柊は吹き出した。『それにお前どこでこけたんだよ!ドジっ子か⁈あはははは!早く行かなきゃって、はは!笑わせんなよー!』俺は痛えんだっつの!置いて言ってやる!『先行くからな!』と走り出した途端。俺の踏み込んだはずの地面が浮いた。『うおぁ⁈』また前転をして頭を打ち、さらにその勢いで全身をビターンと打った。『いった〜もーなに⁈』さすがになすすべなしだ。地面が浮く?今俺の足近くになにが起こったんだ!柊の方を振り向いても『いや、地面がせり上がった感じだった、ぞ?うん。』俺たちが、ワケがわからない。と沈黙していたその時。 『いやぁ〜2回もでんぐり返し見せてくれて面白かったよ!【稲妻】クン!』
と金髪の20代半ばほどの男が声をかけて来た。少しの間二人とも呆気にとられたが、俺はすぐにピンと来た。あのカード!確かあのカードに書かれてた意味は稲妻だったはず。。俺の今現在2番目の秘密をいつ知られた⁈もちろん1番目は彩凛への恋心だ!とバカみたいなことを考えていた時。『あなたは誰ですか?』と冷静に静寂を破ったのは柊だ。なんでこんな事を?とかどうやって?とか聞きたいことはたくさんだったがこれが先決だと思った。『なんで?んなの笑えそうだったから以外に理由なんかいるかぁ?』と痛めつけて遊ぼうとしてますと絵に書いたような笑みを浮かべる気味の悪いチンピラ。『…通してもらえます?』と俺は一応聞いて見る。しかし、『通すと思ってんの?ばっかじゃねぇ⁈』とチンピラの正答を投げて来た。柊が違う道を行こうと目配せをしたが、『ん?逃げるの?いいけど、痛い目にあうよ?』とチンピラの浮かべていた笑みはさらに深く、興奮したものになった。俺と柊はピリッとした空気が体を覆うのを感じて少し緊張した。『あ、あとさ?俺!こんな事出来んのよ!』と柊の事を見つめたかと思うと地面から土の柱が勢いよく飛び出して来た。とっさに避けたが真下から伸びて来た柱は柊の肩を直撃した。『うぐっ…』と言って柊はうずくまった。