4.真なるステータス
ちくしょう。
俺は勇者じゃないのかよ!
普通ここは国を救ってくださいだろ!
神様も神様だ!
ただの旅行者ってなんだよ!
絶対手違いだろ!
城の前でグルグル唸るが城を追い出された事実は変わらない。
くそう。
こうなったら絶対に見返してやる。
強くなって助けを求められるようになってやる!
それでこの国だけ差別して、土下座するじじいの前で高笑いしてやるんだ!!
新たな決意を胸に俺は顔を上げた。
強くなるにもとりあえず現実を見なければ。
…………これからどうすれば良いんだ?
分からない現実を目の当たりにして俺は考える人のポーズを取る。
…………。
………………。
……………………。
何も浮かばない!!
わざわざ有名なポーズまでとったのに良い案は一切浮かばなかった。
逆に足がプルプルするというバットステータスを手に入れた。
くっ、これもじじいの罠か。
こ、こんなことには負けないぞ。
杖が必要なお年寄りのようにプルプルしながら噴水近くの椅子まで移動する。
すると心優しいカップルが席を譲ってくれた。
けっ、爆発しろ。
お礼を言いながらも恨めしい目で立ち去るカップルを追う。
しかしカップルは俺の視線に気づくことなくダーリン今日の夜ご飯作ってあげるとイチャイチャしながら視界から消えていった。
くっ!
これが格差社会か!
キリキリ痛む胸を抱えると、視界にドラゴ○ボールが入ってきた。
「そういえば俺は何を持っているんだ? スマホとかカバンとかで無双するラノベもあった気がする」
もしや、最初不遇からの最強コースかとワクワクしながら自分の持ち物を確認する。
左手にはドラゴンボ○ル1巻の初版。
右手は空。
カバン、なし。
財布、どこかに落としたのか見当たらない。
スマホ、元々持ってない。
ノオオオォォォ!!!
何もないじゃないか!!
どうすんだよ!!
椅子から転げ落ち地面に手をつく。
そんな俺を避けるように人々は距離を置きながらヒソヒソと囁いている。
「何かしら?」
「ちょっと頭のおかしな子なのかしら?」
「服もおかしいわ」
そんな声に混じって子どもの声も聞こえてきた。
「ママー、あれ何?」
「しっ! 関わっちゃいけません」
どこの世界も非情である。
「くそー!!」
俺は叫び声を上げ、その場から逃げ出した。
これからどうすればいいんだよ!
言葉は分かるけど、お金の何もない。
ウルトラハードモードじゃねーか!
ある程度叫んで走ったところで俺はエネルギーが切れた車のように立ち止まる。
「つ、疲れた……」
気持ち的にはこのまま走り続けていきたかったが、体の限界がきたようだ。
こ、これが体力2の実力か……。
現代っ子がそんなに走れると思うなよ!
膝に手を当て、ゼーゼーしながら息を整える。
隣を駆け抜けていく6歳くらいの子どもが恨めしい。
どんだけ体力がないんだよ!
ふざけんなよステータス!!
本当にそこらへんの子どもに負けてるじゃないか!
ステータス出てこい!!
先程見たステータスを思い浮かべながら心の内で叫ぶ。
すると突然目の前に半透明なステータスが現れた。
「なっ、なあぁ!?」
予想外の状態に叫ぶ。
周りの人はそんな俺を避けて行くが、そんなことは気にしていられない。
俺は新しく出てきたステータスをガン見するのに忙しかった。
―――――
名前 朝比奈 優
年齢 15
種族 人間
性別 男
体力 2(街の子ども4)
魔力 ∞
攻撃力 1(生まれたての赤ん坊1)
防御力 ∞
知能 0,1 (生まれたての赤ん坊1)
称号 ただの旅行者、おバカ
スキル なし
ギフト ピー(自主規制)精霊限定魅了
―――――
ぎ、ギフト来たー!!
しかも精霊魅了だと!
これは俺が戦わなくてもみんなが戦ってくれるやつじゃないか!
それも清楚な精霊の女の子たちのハーレム……。
夢にまで見た状況に俺は温かいものが鼻の下を伝うのを感じて右手で押さえる。
しかし興奮は収まらない。
神様ー!
ごめんなさい!!
あなたのこと信じてました!!
こんな良いギフトありがとうございます!!
俺はこの世界でハーレムを築いて生きていきます!!
勝利のガッツポーズを決めながら神様に感謝をする。
するとなぜだか神様が苦笑いをしているような気がした。
が、気のせいだと思い直して俺は城に向かって中指を立る。
見てろよ!
ここから這い上がってやるからな!
後で泣き叫ぶが良い!!
ふはははは!!
ステータスがしょぼいからと言って雑魚なわけじゃないんだからな!!
ついでにあっかんべーまでして俺は王都に背を向けた。