1.さらば地球!
本日、俺はテンションが高い。
いつもテンションが高いが今日は気合が違う。
普段がフィーハー!だとしたら今日はフィィィィィ!!!ハアアアァァァァ!!!って感じだ。
キチガイって呼んでくれていいんだぜ!
いや、待て!
実際にキチガイって呼ばれたら流石に傷つく!!
やっぱりダメだ。
というか誰に話してんだ、これ?
口からも零れ出てるぞ。
まあ、良いか。
虫とでもお友達になれそうなくらい今気分がいいしな!
なあ、カラス!
カラスにきらめく笑顔を向けると、カラスが白い目で俺を見てきた。
カラスの癖に生意気な!
やはり鳥類の脳は人間には敵わないか!
え?
カラスは虫じゃない?
細かいことは気にすんな!!
なんて言っても今日は!
「ドラ○ンボール1巻の初版が手に入ったんじゃー!!」
探し回り、お金をため、ねえちゃ……お姉様に頭を下げ……。
いやー、長い道のりだった。
そうそうない。
ちょーレア!
プレミアだぜ!
ニマニマしながら抱えた包を見つめる。
だがなんだか、周りを通る人の目が生暖かい気がする。
不審者を見るような視線もある。
おい、そこのおばちゃん!
小さい子に見ちゃいけませんとか教えるんじゃねーよ!
そんな変なもん持ってないぞ!!
見ろ!!
ドラゴン○ール1巻の初版だぞ!!
いや、まてよ……。
やっぱり見るな!
これは俺が家に帰ってひとりで眺めるんだ!!
お前らが見たら減る!
おばちゃんを睨みつけた後、包に視線を落とす。
あー、ニヤニヤが止まらない。
フハハハー!
あ、今ちょっと笑いが漏れた。
まあ、そんな程度どうでもいいか。
クフ、クフフと笑いながら大事なマンガの入った袋を抱きなおす。
そのときサラリーマンらしきおっさんが横を通り過ぎた。
「少年、エロ本が手に入って嬉しいのは分かるが少し自重した方がいいぞ。年齢的にも」
親切よろしく耳元におっさんのささやくような声が落ちる。
「…………え?」
一瞬おっさんが何を言ったのか分からなかった。
少年、エロ本が手に入って嬉しいのは分かるが少し自重した方が……年齢的にも……。
少年、エロ本が…………。
少年、エロ本………………。
エロ本!?
待て待て待て待て!!
はあ!?
慌てて俺は周りを見回す。
するとおっさんやおばさんは生暖かく、若い女性は白い目で俺を見ているのが分かった。
「いやいやいやいや!! エロ本じゃねーし!!!」
今日一番の声で叫ぶと、周りにいた人たちがおや?という顔をした。
迷惑そうに顔を歪めた人もいる。
が、ほとんどはマジで?という顔だ。
ど、どんだけエロ本だと思われてんだよ!
サイズちげーだろーが!
よく見ろ!!
声を大にして言いたかったが、それより前に顔が真っ赤になる。
それを見て周りの人はやっぱりエロ本かと頷いている。
くっそー!!
覚えてろよぉぉぉ!!
心の内で負け惜しみを言いつつ俺は走り出した。
そろそろ家につく、というところで俺は勝利の笑みを浮かべた。
家に帰ってしまえばこっちのものだ!
ひとりでニヤニヤできる!!
そう考えた次の瞬間、俺は落下を始めた。
は?
空が円形に見え、遠ざかっていく。
円形?
なぜに?
あっ、ま、まさか……。
ま、マンホールに落ちたー!!
「ぎゃああぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げるも虚しく、カラスがバカーと鳴くのが聞こえただけだった。
誤字脱字、日本語の間違いなどありましたら教えていただけると嬉しいです。