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来襲クエスト【ニューディライト】5


「ちょっとどいてくれ……!!急ぎなんだ!!」


会議を終え、多くのギルマスたちが出口へと向かう中、

カイセンたちはその人波をかき分け、多目的ホール出口へと走っていた。


なんとか出口付近、受付のある場所までたどり着く。

そこにはカイセンの生徒の少女サチと、

受付にいたクラインノクスメンバー、マカロンの姿があった。


「あ!先生!!こっちこっち!早く!!」


サチがカイセンを急かすように手を上げその場でジャンプする。


カイセンに続き、赤髪の戦士ソグもいる。


「おーい!ちょっと待て!!おーーい!」


後方からマスターの声がするものの、人込みにのまれ、その姿は見えない。

カイセンが少女に問い掛けた。


「どうしたんだサチ!!怪しい奴らって!?

 カツヤたちどこ行ったんだ!?」


「なんか変なバンダナ付けた人たちに、急に囲まれて!!

 それで、カツヤたちが、路地裏に連れて行かれちゃって!」


「連れていかれた!?なんでさっさと逃げない!?

ログアウトだってできるだろう!」


「カツヤが取り出した剣を相手に取られちゃって、

 それを、取り返そうとしてて……!」


「剣だって!?……いや、とにかく言っててもしょうがない。

 サチ、場所わかるな?」


「うん!」


「よし、案内してくれ!」


後ろから赤髪の戦士、ソグが話しかける。


「なんかよくわかねえが、トラブルなのはわかった。

 念のためだ、俺も付いて行ってやる」


受付にいる女性も立ち上がる。


「わ、私も行きますぅ!

 あの子たちを追い返しちゃったのは、私ですしぃ………」


「………すまない、助かるよ」


カイセン、ソグ、マカロンの三人は多目的ホールの入り口から

外へと向かって走り出した。

それから少しして、そこにマスターがやってくる。


「ゼェ…ゼェ…ゼェ…、待ってくれ………

 俺は……走るの………苦手なんだよ……ゼェ…ゼェ…ゼェ…」


膝に手を当て屈むマスターは息も絶え絶え。

周囲を見回すが、すでにカイセン達の姿は見えなくなっていた。


「ゼェ…ゼェ…ゼェ…。

 クソ、どこ行ったんだ………ゼェ…ゼェ…ゼェ…」







ドカッッ………!!!


「うううっ……!!!」


カツヤと呼ばれた少年が激しく弾き飛ばされ、地面に尻餅をついた。



「ケッケッケ。生意気なガキだぜ。オラオラどうしたあ?

 一丁前にいきがりやがって、たいした力もないくせによお~」


「あなたがた!何をするんですか!やめて下さいっ!!」


近くにいる少年、ノリオが声を上げる。


「お前ら一体何なんだよ!俺たちが何をしたっていうんだ!?」


別の少年、タケも叫ぶ。


そこはひとけのない路地裏の空き地。

カイセンの生徒、4人の少年を取り囲むように10人ほどの戦士の姿があった。

戦士たちは皆、紫色のバンダナをつけており、カーロッソ一家のメンバーだった。


「うるせえガキどもだ!おめえらエサなんだよ!

 あの赤メガネをおびき出すためのなあ!お前ら、ヤツの知り合いなんだろう?」


「赤メガネって、カイセンの事かよ!?」


「そうかそうか。あのバカ、カイセンて名か。

 べつにガキをいたぶる趣味はねえが、

 あの馬鹿に、俺らに逆らった事の重大さを知らしめるためだ。

 まず、てめえらに痛い目あってもらうするも悪くねぇなあ、ケッケッケ……」


子供たちを取り囲んだ戦士たちが、徐々に輪を狭めていく。


「それ………返せ!!」


そう言いながら、倒されたカツヤはゆっくりと立ち上がった。


「あー?これのことかよ?」


カーロッソ一家メンバーは片手に持った剣に目をやる。


「さっさと返せよおっさん………!!!」


「………おっとお!」


戦士に突進するカツヤだったが、

いともたやすく避けられ、カツヤはバランスを崩し前のめりに倒れた。


「こんな剣、どこにでも売ってるようなちゃっちい剣じゃねえか。

 何をさっきからこんなにムキになってんだ、このガキは?

 それになあクソガキ………口の利き方に気を付けろやっ……!!」


戦士はおもむろに、倒れたカツヤに向け剣を振りかざした。


「カツヤ、あぶねえっ!!!」



「待て………!!!」


そこに声が響き渡る。

路地裏の入り口付近に一人、プレイヤーの姿があった。


「………カイセン!!」


少年タケが声を上げる。


カイセンの声に、カーロッソ一家の戦士は振りかざした剣を静かに下げた。


「カイセン………。

 お前、間違いねえ。昨日酒場であった赤メガネヤロウだ」


カーロッソ一家のメンバーは皆、不敵な笑みを浮かべカイセンを見ている。


「……やっぱり、お前らだったか」


「いや嬉しいぜ。まさか昨日の今日で、もう会えるなんてなあ

 俺たちのこと、忘れてねえよなあ?」


「ああ、覚えているさ。

 だが、文句があるなら直接俺に言えないいだろう。

 関係のない、しかもこんな小さな子供たちを巻き込んで

 恥ずかしくないのか……」


カイセンは今までになく強い表情と口調だ。


「恥ずかしいだって?ぎゃはははははははは……!!!」


それをきっかけにして、周囲の戦士たちからも笑い声があがる。


「甘い事言ってんじゃねえ!ここじゃ力がすべてよ!法律もルールもねえ!

 恥ずかしい事は弱ェ事だけだ!!

 良識やなんや、ナンセンスだぜ!!」


カイセンはさらに進み、戦士たちに近づいていく。


「アンタら、いくら言っても無駄なタイプだな。

 確かにそうだ。

 理解のできない奴らにマナーやルールを解くのは

 ナンセンスかもしれない」


「へえ、ずいぶんな啖呵切ってくれるじゃねーか。

 俺らにボコボコにされる覚悟が出来たってことでいいんだな?」


さらに男たちの輪に近づいて行くカイセン。


「ノリオ、タケ、フトシ、お前たち後ろに下がってるんだ」


「う、うん、わかった」


三人の少年はカイセンの後方へ走った。


「おっとぉ!お前は逃がさないぜ?」


カーロッソ一家の戦士の一人が、カツヤの腕を引き取り押さえる。


「カツヤ……!!!」


「ガキに用はないが、

 テメェにログアウトでもしてトンズラこかれても困るんでな。

 おっと、どうせなら人質も兼ねとくか。


 オイ赤メガネ、一回でも反撃してみろ、このガキどうなるかわからねぇぞ?」


戦士はカツヤの後ろ手を持ち、締め上げた。


「ぐあああ………!!!」


痛みに、カツヤが声をあげる。


「さあガキ、これでログアウトもできねえなあ」


「お、お前ら、悪い評判は聞いてたが……噂以上だな……」


カイセンが声を漏らす。

男たちは、今度はカイセンの周囲を取り囲んだ。

カツヤは路地の奥で一人の戦士に捕らえられている。


「そりゃあ、ありがとよっ……!!!」


ドガッ……!!!


「ぐうっ!!!」


戦士の一人が強烈なパンチでカイセンへ一撃。


「おらおら、まだまだこれからだぜ!!


ゲシィッ………!!!」


「ぐっ………!!!」


さらにもう一人が蹴りを入れる。

避けることも反撃することもできずに攻撃を受けるカイセン。


「オラどうした!!」

「俺らに逆らった事を悔やむんだなあ!!」

「もう一発だ!!」


数人がカイセンを取り囲み襲いかかる。袋叩き状態だ。


「カ、カイセンがやべえ……!」


「誰か人を呼んで来ないと!!」


その様子にうろたえる子供たち。


「ぐあああッ………!!!」


その時、周囲に悲鳴が響き渡った。


「………??なんだ?」


カイセンを取り囲んでいたメンバーも一斉に声の方を見る。


それは路地裏の一番奥。


カツヤを拘束していた戦士が地面に倒れていた。

カツヤは開放され、その横にはこん棒を持った赤髪の戦士、ソグの姿。


「誰だお前!?いやそれよりも、ここは袋小路だぞ!

 どっから湧いて出やがった!?」


カーロッソの戦士が声をあげる。

別の戦士が言った。


「上だ!!コイツ屋根の上から降ってきやがった!!!」


「クソッ!!協力者がいやがったか!」


「この赤メガネヤロウ!!!」


ガキィイイイン………!!!


メンバーの一人がカイセンに剣で切りかかるも、

カイセンはそれを剣で受け止めた。


「………カツヤ走れ!!こっちだ!」


カイセンが声を上げると、カツヤはカイセン達の後方へと素早く走った。


「どうやら、もう反撃してもいいらしい。

 さんざん好きにやってくれたな!!!」


「人質を開放しただけで、いい気になるんじゃねえぞコラ…!」


戦士とカイセンは剣を合わせたまま、鍔迫り合いだ。


「俺は逃げも隠れもしない、それに

 子供たちに手を出されたとあっちゃ、こっちも黙ってはいられない!」


「なめるなよ赤メガネ!!!テメェみてえなヒョロいヤロウ

 まともにやっても負けねえっつうんだよ!!たたっ切ってやる!」


ガキィイイイン………!!


互いの剣がはじかれ、カイセンと戦士は少しの距離を取った。


「一対一の決闘なら受けてやるって言ってるんだ」


「はあ?バカ言ってんじゃねえ、アマちゃんが!!

 こっちは十人いること、忘れたかよ!!」


「………十人だって?よく数えてみたらどうだ?」


戦士の後方からソグの声。


「あ?何を言って…………………………!?!?」


戦士が振り返ると、カーロッソ一家メンバー9人は全員、地面に突っ伏していた。

そこには棍棒で自分の肩をたたくソグだけが立っている。


「あああ!?な、なんだこりゃあ!?」


「棍棒でこれじゃあな。まだまだ修行が足りねえぞ、てめえら」


「バカな!?この一瞬で!?あいつがやったってのか!?」


「さあどうした?まだやるか?」


「ぐっ………!!ぐうう………」


カイセンとソグに挟まれ、前後を見回すカーロッソ一家の戦士。


「………………………。

 わ、分かった。悪かった。俺たちが悪かったよ。許してくれ」


「子供たちにもう手は出さないと、誓うか?」


カイセンが問いかける。


「わ、わかった。誓う。もう手は出さねえよ」


「………………本当だろうな」


「へ、へへへ………本当だ。じゃ、じゃあ俺はこれで………」


裏路地の出口へとカニ歩きでゆっくり進む戦士。

カイセンの横を過ぎた時、ふと戦士の表情が変わった。


「ハッ………!!バカが!!

 またこいつら人質にとりゃあこっちの勝ちよ!!」


近くにいる少女、サチに襲い掛かろうとする戦士。


「………!!!!」


「エアリアル・ウォール!!!」


「なっ!?」


どこからか魔法が発動。

戦士はサチにたどり着く前に魔法の障壁に阻まれた。

逆に後方へと弾き飛ばされ、尻もちをつく。


「いててて………今度は何だってんだ!?

 ………………ハッ!?」


戦士は後方の殺気に気が付いた。

カイセンとソグだ。


「い、いやこれは………。冗談だ冗談。

 カーロッソジョーク………………なんてな………」




「ぎゃああああああああ……!!!」


裏路地に戦士の悲鳴がこだました。




裏路地を少し離れた場所。

カイセンと子供たち、さらにソグとマカロンの姿があった。


「マカロンさんといったか。すまない、最後、おかげで助かったよ。

 あと、ソグさんも手間をかけた。アンタ強いんだな」


「いえいえ~、もとはと言えばぁ~、

 こちらがぁ受付で追い返してしまったのも~原因ですしぃ~」


「俺はソグでいいぜ。

 ま、これも縁ってやつだな。気にするな」


「ホラ、お前たちもお礼を言って」


子供たちに促すカイセン。


「ありがとうございます!」

「ありがとうございました!」

「助かった、ありがとう~」

「あ、ありがとな………」


「………………………………」


「ホラ、どうしたカツヤ。お前も礼を言うんだ」


「………世話になった」


「おいコラ、なんだその態度は!」


「あー、べついいいって事よ」


ソグが言った。

カイセンは呆れた表情で子供たちに問い掛ける。


「それよりお前ら、

 変なプレイヤーには付いていくなって言っただろう。

 途中逃げられなかったのか?」


「俺は逃げようとしたんだぜ!!でもよ、カツヤが………」


「カツヤの剣が奪われたんです、それをカツヤが取り返そうとしてて……」


「そうなのか?カツヤ?」


「………………………………」


カツヤは立ったままうつむき、黙っている。


「あんな剣なあ~、どこにでも売ってる安いやつじゃないか。

 そんなムキになってどうするんだよお前」


その言葉に、カツヤの表情は更に暗くなった。


「………何も……わかってない………カイセンは………」


「ああ?わかってないのはお前だろカツヤ。

 お前が変な意地はるから、みんなが危ない目にあったんだぞ」


「………………………。

 それにカイセン、カッコ悪いぜ………。

 あっちの兄ちゃんは強いのに、カイセンはやられてばっかり……」


その言葉に、ソグがカツヤに近づく。


「おいおいガキ、そういう作戦だったんだよ。見ててわかったろ?

 このヒョロメガネが時間を稼いで注意を引いたから

 俺が奇襲をかけられたんだ。

 だいたい、攻撃しなかったのだってお前がなあ……」


「う、うるさい!!!」


カツヤは叫んでソグの言葉を止めた。


「嫌いだ!!カイセンなんて大嫌いだ……!!!」


カツヤは一人、街の方へと走って行った。


「おい、カツヤ!!待て!!」


カツヤの後をを追うカイセンだったか、

人通りの多い通りに出てしまい、姿を見失ってしまった。


その後を追うように残りの子供達四人もやってくる。


「くそ………なんなんだあいつ………

 何が気にくわないっていうんだ………」


カイセンにタケが話しかけた。


「あのオッサンらに絡まれて、最初は全員で逃げようとしてたんだけどさ

 途中で、あいつらがカイセンの事をバカにしだしたんだよ………。

 そのとたんにカツヤがキレちゃってさ………。

 武器取り出してあいつらに向かっていったんだ。

 あっさり返り討ちにされちまったけど」


「………………。そんな事があったのか………」


その後ろからサチがやってきて、カイセンに一本の剣を差し出した。


「それでこの剣、取られちゃって……。

 私も諦めて逃げようって言ったんだけど、聞かなくて………」


カイセンはその剣を受け取り、まじまじと見つめた。


「この剣…もしかして………………」






それから数時間の後、あたりはすっかり夕暮れが深くなっている。

行きつけのバーのカウンターにカイセンの姿があった。

カウンターの中からマスターが話しかける。


「あの後………そんな事があったのか」


「口は災いの元ってこういうことだな。マスター。

 別に俺にだけ災いが降りかかるんならいいが

 子供達にまで火の粉がかかっちまうとは。………とんだ失敗だよ」


「なんか悪かったな。

 俺も駆けつけたかったんだが、どうも走るとすぐ息が切れてな……」


「ああ、気にしないでくれマスター。

 あのクラインノクスメンバーも手伝ってくれたし、

 結果的に被害はなかったんだ」


「それで、カツヤはその後どうしたんだ?」


「ログアウトしたみたいだ。

 まあ、たいしたことでもないだろうが、一応他の子供らがログアウトして

 様子を見るって言ってた」


「そうか………。

 しかしカッコ悪いとはな、単刀直入に言われたもんだなあカイセン。

 反抗したくなる年頃ってヤツか?」


「そういう年頃ねえ………。

 でも確かに、あの時俺も無我夢中で。

 わかってないって言ったあいつの言葉、間違ってないかもしれない」


「………どういうことだ?」


「あれは俺が、ギルドを作った時だったな………」


カイセンは静かに話し出した。





「さあ、これで今日からお前たち、俺のギルドのメンバーだ!

 よろしくなみんな!!」


「ええ~~」


「ええ~ってなんだよ、ええ~って」


「なんで学校だけじゃなくゲームの中まで

 カイセンのクラスになんなきゃいけねぇんだよ~」


「文句言うなって。それにクラスじゃなくてギルドだぞ、タケ」


「そうよ。それに私達だけじゃ難しくて何もできないんだし

 先生がギルド作ってくれたおかげで、できることも増えて楽しそうじゃない」


「でもよぉ~まだ拠点すらねえじゃねえか」


「それはおいおい、

 みんなで力を合わせてお金を貯めていけばいいじゃないか。


 で、とりあえずだ。今日はギルド、グリーンヒル結成記念として、

 皆に俺からプレゼントだ!」


「おっマジかよ!!」


「ああ、感謝しろよ。

 俺だってまだそんなお金持ってるわけじゃないんだからな。

 サチには、この髪飾りだ。」


「わあ可愛い!!ありがとう先生!」


「よしおにはモンスター図鑑!」


「ありがとうございます!」


「タケはしょっちゅう手に怪我してるから、このグローブな」


「おっ!カッケーじゃん!」


「フトシはいつも戦いに出遅れるから、このブーツ」


「食いものじゃないのか~、でも嬉しいよ」


「それでカツヤ、お前にはこの剣な」


「なんだよ、やすっちい剣だなあ」


「贅沢言ってんじゃない。お前にはまだこれで十分だ。

 俺ももっと強くなる。お前もその剣で、もっともっと強くなるんだ」


「わかった。もっと強くなってやるぜ!カイセンも強くなれよ!約束だぞ」


「ああ、約束だ」







「………ほう、そんな事があったのか」


手元のグラスをふきながら話すマスター。


「あの時渡した剣を、あいつはずっと持ってたんだな。

 俺の見ている前では、あまり使わなかったが」


「それをカーロッソの連中に取られてムキになってたってのか」


「そうみたいだ。俺も今の今までこの剣の事を忘れちまってた。

 ………………………。

 勉強だなんだという前に、もっと基本的な事を

 俺はおろそかにしていたのかもしれない………」



「おい………マジか………」

「やべえ、やべえよ!!」

「どうする………」


その時、店の客たちが所々でざわつき始めた。

店内は騒然とした雰囲気だ。


「ん?なんだ?急に店の客らが騒がしくなったな?」


店内を見回すマスター。

カイセンも同様に見回す。

マスターが少し離れた席にいる客に声を投げた。


「おーい、なんだ?何騒いでんだよ?」


「いやマスター!ウィンドウ見てみろ!メッセージ!メッセージだ!!」


「あん?メッセージだあ?メッセージがどうしたって………」


マスターは自らのウィンドウを開き、メッセージを確認する。

するととたんにマスターの顔色が変わった。

驚きのあまり声を失い、目を見開いている。


「おいおい~、どうしたんだマスターまで?」


カイセンが尋ねる。


「いいから!!お前もメッセージ見てみろ!!」


その言葉に

カイセンも自分のウィンドウを開き、メッセージ欄を確認した。


「………………!!!!

 おいおいおいおい、冗談だろ!!」


カイセンの顔もマスター同様、驚きの色に染まった。







ニューディライトの正面大門近く。

一輛の馬車が走っていた。


中にいるのは数人のクラインノクスメンバーと、サブマスターのキサラギだ。

ニューディライトの正面大門へ向け、走らせている。


「サブマスター、一応、我々の仕事も一段落ですね」


「あくまでも注意喚起をしたに過ぎん。気休めと言えばそれまでだ」


「ですが、我々がずっとこの街にいるわけにも行きませんし………。

 来襲クエストも、いつどこで起こるかわからないのが難しいですね」


他のギルドメンバーが話し出す。


「とりあえず当面は、ソーマ君と第7師団のみんながうまくやってくれますよ」


「………ああ。とりあえず一か月程度の滞在を目途に、その後は………

 ………………………ん?」


話しながら、ふと馬車の窓の外に視線をやったキサラギだったが、

少しの異変に気付く。

正面大門付近人々が皆、しきりにウインドウを確認している。

その表情も通常のものではない。異様な雰囲気が広がっていた。


「なんだ?………外の様子がおかしい」


「あれ?本当ですね。みんな立ち止まってウィンドウを見てる………」


「まさか………」


キサラギが自分のウィンドウも開いてみる。

そしてメッセージを確認すると、平素から固い表情がより一層険しくなった。


「………………………………。

 どうやら………その先の事は考えずとも良くなったらしい」


「え?それはどういう意味ですか?サブマス?」


「馬車を戻せ!!急ぐんだ!!即刻、多目的ホールに戻る……!!」


キサラギは声をあげた。







ドガアアアアアアァァァン………!!!


5メートルはあろうかという巨大なモンスターが

土煙を上げその場に倒れる。

トリケラトプスを思わせる、恐竜型モンスターだ。もはや動く様子はない。


そこはニューディライトから西へ少し行った付近の狩場。

開けた平野、辺りは日がそろそろ沈もうかというところだった。


周囲にはそのモンスターと戦闘していたと思しき屈強な戦士たちが十数人。

そんななか、

倒れたモンスターの上に一人の戦士が上がり、その上に腰を掛けた。

ジークハイルだ。


「あー、ちきしょうが。ヘンな会議に引っ張り出されちまったせいでよお、

 今日のノルマまだ半分しか達成できてねえじゃねえか。

 そろそろ日も暮れてきやがったし、こりゃあ今日は無理だなあ。


 どっかにモンスターの大群でもいやがらねえもんかあ?」


そうしているうち、

周囲を取り囲んだ屈強な戦士たちが、しきりにウィンドウを出し、確認しだす。


「あ?何やってんだお前ら?いいエロ動画でも見つけたか?」


「違う。お前もメッセージ確認してみろ」


一人のギルメンが言った。


「ああん?何だってんだ………」


そう言ってメッセージを確認したジークハイルの表情が変わる。


「ほほーう………………」


不敵な笑みを浮かべ、立ち上がった。


「やっぱりか。やっぱ持ってんだよなあ俺。そういう運ってやつをよお!

 しかもなんだこりゃ?

 運営バカなんじゃねえのか!ガハハハ……!!!


 俄然面白くなってきやがった。

 しゃあ!行くぜテメエら!今日のノルマはいつもの五倍だ!!!

 ハデにおっぱじめるぜェ……!!」


モンスターから降り、

大剣を担いだジークハイルは、ニューディライトの方角へ歩きはじめる。

屈強な戦士たちもその後に続き、歩き出した。







さらに別の場所。ニューディライト内の

とあるギルド拠点の一室。


二人のプレイヤーの姿があった。

二人ともウィンドウを出し、メッセージを確認している。


「あらら~、こりゃあなんと言おうか、面倒くさい事この上ないねえ~」


先に口を開いたのは、クマの着ぐるみを着ている長身の人物。

声と体格から、男性だという事は確認できる。


もう一人は、顔半分を仮面で隠した、ピエロのような格好の人物だった。


「おや、何を言っているのですか。

 ちょうど我々のフルメンバーが揃っているのですよ?

 このような時に出くわせるなど、これ以上ない幸運。

 まさに我々の日々の行いの賜物だ。………そうは思いませんか?」


「その恰好で言われてもなあ、迫力ないんだけどねえ~」


「それはお互い様ですよ。

 さて、面白い夜になりそうだ。クククククク………!!」


「………やれやれ。

 一人の時に見付けられれば、なんだ理由を付けて

 フケることもできたのにねえ~、

 わざわざギルマスといる時にみつけるもんかねえ。


 このまえのギルド戦といい、

 最近ツイてないんだよなぁ~ホント」






一方、ニューディライトから北、とある沼地。

そこにも一人のプレイヤーの姿があった。

沼に胸の上あたりまで埋もれ、必死でもがき苦しんでいる。


「ぎゃああああああああああ!!!!沼に沼に沈むううう!!!

 底なし沼だから!!底なし沼!!

 ぎゃあああああああああああああ!!!!しぬううううううう!!!!!


 あ、初見さん、いらっしゃーい。


 ぎゃあああああああああああああ………!!

 沈む!しぬ!沈む!しぬ!しずぬむうううううううぅぅぅぅぅぅ!!!!!


 ……………………………………。

 って、ちょっとちょっと!!コメント!!

 このリリンちゃんが今まさに沼に沈もうとしているのに、

 反応薄くない!?」


そう言うと、プレイヤーは沼からあっさりと這い上がった。

それは少女だった。髪はピンクで服は魔法少女を思わせる派手な格好。

だが全身泥まみれだ。

近くの地面に腰を掛ける。


その様子はカメラを通して生配信されており、

そこにリアルタイムでコメントが寄せられている。


ウィンドウのコメントを確認する少女。

コメント内容とやり取りをする。


「ちょっとなに?何みんなだけで盛り上がってるの?

 意味わかんない!教えてよ!

 ちょっとちょっと!リリンちゃんを蚊帳の外にしないでって!!


 え?ここ?ニューディライトの北あたりだけど?

 え?ニューディライトまでなら、三時間くらいかなあ………。


 間に合うって、何に?


 ………………………うっそ!?マジ!?マジで!?

 マジであれ始まるの!!

 超怖いんだけど!!

 ログアウトが!?………うっわ!えげつな!!


 ………え?行けって、ちょ!冗談でしょ!!

 なんで超銀河アイドルがそんなとこ行かされるわけ!?

 いやいや、行けコールやめい!!


 わかった!落ち着け!

 じゃあ行くか行かないか、アンケ取るから!アンケ!


 みんな分かってるよね?

 か弱いリリンちゃんをそんな地獄の戦地へ送り込むような

 鬼のようなリスナーは、絶対いないって信じてるからっ!!」







さらに別の場所。

ここは10時間ほど前に会議が行われていた、ニューディライトの多目的ホール。


そこでは今、椅子や机、その他機材の撤収作業が行われていた。

折りたたまれた大量のパイプ椅子を両脇に抱え、運ぶソグ。


「ああー、疲れた…………。

 なんでゲームの中までこんなバイトみてえな事………」


「あーソグ君ー。次、こっちもお願いしますねー」


声に振り返ると、師団長のトーマがパイプ椅子の山を指さしていた。


「マ、マジかよ………。

 あ、そういえば今日、アーヤの姿が見えねえなあ。昨日までいたのに。

 なんだ?サボりかよ?」


「何を言ってるんですかソグ君。

 キミじゃないんだから。

 アーヤさんはリアルでの用事があってインできないって、

 昨日言ってましたよ」


トーマが応える。


「あー?本当かよ~?

 んな事言って、ただサボりたいだけなんじゃねえの~?」


ダンッッ……!!!


そう言っていたソグの足を、少女が思い切り踏んづけた。


「いぃぃいいっ………!?

 テメェ!なにしやがんだキリエコラ!!!」


「アンタが仕事もしないでうだうだ言ってるからでしょ!

 アンタじゃないんだから、アーヤはサボったりなんかしないから!」


「いつ俺がサボった!?それにてめえ、俺は先輩だって何度言やわかんだ!?」


「はいはーい、ソグせんぱーい。

 つっ立てると邪魔だからとっとと仕事してくださーい」


「ケンカ売ってるな?完全にケンカ売ってるよな?」


「ちょっとちょっと二人とも。

 そんなことしてる暇があったら、ちゃっちゃと動いて」


「ちっ………へいへーい………」


その時、トーマのにコールの着信。


「あれ、誰だろ?」


ウィンドウ開きコールを取ると、画面に映ったのはキサラギだ。


「あれキサラギさん、お疲れ様です。

 どうしたんですか?そろそろ町を出られたところですよね?」


「お前、まだ気づいてないのか?」


「へ?気づいてない?何にですか?」


「撤収作業は中止だ。

 そのホールはしばらくクラインノクスで借り受ける。手続きはもう済んだ」


「借り受けるって………。会議はもう終わったし、どうしてです?」


「いいいかよく聞け。そこにクエスト指揮本部を設置する。至急、その準備だ。

 私も今は各所指示で、説明している時間がない。

 とにかくコールが切れたらウィンドウのメッセージを確認。いいな?」


「え?あ!ちょっと待っ………!!」


キサラギのコールが切れた。


「なんか、珍しく慌ててたなあキサラギさん………。

 メッセージを確認って………。


 ………………………………………………!?

 え!?ま、まさか!そんな!?」


ウィンドウを確認し、思わず声をあげるトーマ。

その様子にソグとキリエも近付いてくる。


「どうしたんだよトーマ。でけえ声あげて」


「またキサラギさんから、無理難題吹っかけられたとか?」


「ふ、二人とも………これ………見て………」


「なんだあ?

 ………………………っ!?」


二人の表情も一変した。


「ログアウト………これ、ちょっとヤバくない?」


キリエは思わず声を漏らした。








ニューディライトの最南端。

「希望の門」と呼ばれる。巨大な門があった。その高さは50メートル以上。

しかし門の先には崖と海が広がっているため、それは門としての用途はなく、

巨大なオブジェクトとして街の象徴的な建造物だった。


その門の真下、海の方角を向き立っているのは

カイセンと酒場で話をしていたフードの人物。

ウィンドウを出し、そこに記載されているメッセージを見ている。


「………………………」


辺りに他の人影はない。波の音だけがかすかに聞こえていた。


少し間を置き、ウィンドウから視線を上げるフードの人物。


「…………………あの時を思い出すな。

 ………………………今回もヤツは現れるだろうか………。


 いや、ヤツが来る前にカタをつける……!」


そう言って、空を見上げた。


フードの人物のウィンドウには、このようなメッセージが表示されていた。




”警告。ニューディライト付近にモンスター敵影を確認。

 大群をなし、侵攻中との報告あり。

 対象都市への来襲予想時刻は3時間後。

 対象都市近隣のプレイヤーは各自、最大限の注意をされたし



 なお、モンスターの大群より、強力な魔法の波動が発生している模様。

 これにより、3時間後から翌日の出まで、対象都市又は対象都市周辺における

 ログアウト操作が無効となる”




希望の門の先、水平線に太陽が沈み、夕暮れは終わりを告げた。

そして

ニューディライトの長い一夜が幕を開けたのだった。



そろそろ全キャラの一覧表でも作ろうかと思ってます。

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