#4 図書館
実家に帰って両親と少し話した後、私はすぐに図書館へと出掛けた。
春先の街路樹は暖かい輝きに満ちていて私の不安な心を安心させてくれる。
図書館へは歩いて約15分の距離になる。通りの見慣れた町並みはどこか私を安心させてくれた。手にもったハードカバー版の小説はカバンの中に入れてある。図書館に何が彼に関する手がかりがあればいいのだけれど……。淡い期待を胸に秘めて私はまた歩きだした。
図書館内にはほどんど人はいなかった。司書の方に軽くお辞儀をする。
「あの……。ちょっと聞きたいことがありまして」
そんな私の問いに初老の司書は笑顔で答えてくれた。
「東藤光一君かぁ。知ってるよ。彼はよくこの図書館に来ていてね。小さい頃の彼をよく知ってるよ」
まさかの貴重な手がかりに私はごくっと息を飲んだ。
「それじゃあ――。彼の住所知ってるんですか?」
「あぁ、知ってるよ。ここからそんなに遠くはない。でも、今でも実家で暮らしてるかは知らないけどね」
気さくな司書の方に助けられて私は彼への手がかりを得ることができた。
図書館からの帰り道、私はふと腕時計を見る。
今の時間は午後3時15分。今から彼の家を訪問してもべつに大丈夫だろう。
ふと空を見上げると薄い雲がチョークを細かくしたような感じで大きく広がり、手を伸ばせば届きそうな、そんな気がした。




