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#2 BT-2とハンヴィー

「ん…?ここはどこだ…?」


体中が痛い。…ああそうか、俺って戦車に撃たれたんだっけ。なら、俺は死んでるよな。

いくら旧式の戦車とはいえ、そんなモノの大砲なんか食らったらバラバラになっちまうし。


「痛いです…沢辺さん…痛いです、助けて下さい。」

「おい、半泣きになるな。しっかりしろ。」


隣で痛みに耐えきれずに、めそめそと泣いてた霧野を起こして、辺りを確認する。

見渡す限りの平原だ。…おかしい。さっき俺らは森の入り口にいた筈。こんな場所には居ない。


「…沢辺さん。携帯が通じないです。」

「何?」


嘘だ、と思いつつポケットに仕舞ってあったiPhoneを取り出す…ってダメだ。画面がバリバリになってやがる。さっきの衝撃で割れやがったか。

自分の携帯を仕舞い、霧野の折り畳み式の携帯の画面を見ると、圏外となっていた。


「おい、この携帯が普及しまくってる時代に、圏外なんてなんの冗談だ?」

「ぼ、僕に聞かれても困りますよ?それに、こんな場所は身に覚えがないです!」


霧野が泣きそうな顔で俺を見る。…よくまあ20歳超えてんのに、そんなガキみたいな顔できるな…。


「情報を整理しよう。まず、俺らは戦車を見つけた。そうだな?」

「はい。」

「んで、戦車の攻撃でパトカーを粉砕されて、俺らも撃たれて死んだ筈…だよな?」

「はい…。」

「それで、気づいたらこの場所に居たと。そうだな?」

「はい。」

「訳分かんねえぞ、おい。」


ダメだ、全く持って分からん。情報を整理したつもりが、逆に訳が分かんなくなっちまった。


「あれ?沢辺さん、あれって戦車じゃ…?」

「何!?」


霧野が指さす方向を見た俺は愕然とした。

ここから50メートル程離れた先に何本かの木が生えた場所があるのだが、そこに戦車が居たのだ。俺らから見て反対側を向いているので恐らく気づかれていない。


「ど、どうしましょう?」

「俺らには対抗手段が無い。隠れながら様子を見よう。」


と、二人は近くの大きい岩に身を隠した。背丈ほどある岩なので、恐らくは大丈夫だろう。


「おい、霧野。ちょっと携帯貸せ。」

「いいですよ。はい。」


よし、携帯のカメラ機能を…っと、そしてズームで…よし、見れた。


「あれは、旧ソビエトのBT-2だな。」

「ベテー…?何ですかそれ?」

「第二次世界大戦時の戦車だ。1939-40年頃の戦車だな。」


BT-2は、旧ソビエトでポーランド戦等に導入された戦車だ。

37mmクラスの主砲を装備し、優れた機動力を持ってたと言われてるな。


「まて、動くぞ。」


カメラに映ったBT-2は、砲塔を素早く動かして俺らから見て右方向を見ると、右側へ旋回してそのまま走り去っていった。スピード早いな。戦車の癖して、その辺の車と変わんなかったぞ。


「は、早い…あれ、本当に戦車ですか?」

「戦車は意外と速度出るぞ。自衛隊の主力戦車の90式戦車は、確か時速70kmまで加速するからな。今のBT-2だって、ソビエトでは快速戦車って言われてたカテゴリの戦車だ。70kmくらいは出るだろうよ。」

「うっ…パトカーでも逃げ切れないんじゃ…」


逃げようとしても、追いつかれる前に機銃掃射で死ぬだろ。


「おい、BT-2が居た付近に、何か居るぞ。」

「え?何がですか?」


カメラのズーム機能を使っても、うっすらとしか見えないが、あれは戦車じゃなさそうだ。

…そういえば、装甲車も逃げ出したっつってたな。戦車よりは脅威度は低いが、拳銃しか持ってねえ俺らからすればまあ無理な相手だな。


「とりあえず、行ってみるぞ。」


遮蔽物のない草原を走り抜け、素早く木陰に隠れる。何というか、ゲームの中のスパイとか潜入ミッション中の特殊部隊みたいだな、俺。

俺の後を追ってた霧野がコケた気がするが、まあ置いといて問題はないだろう。


「あれは…ハンヴィーか?」


そこに鎮座してあったのは、現代で幅広く使われているハンヴィーだった。銃座にはM2重機関銃が据え付けてある。

ハンヴィーというのは、正式には高機動多用途…何とかっていう奴の英語の略称なんだが…忘れちまった。

アメリカの映画とかでよく見る、機銃付きの車だ。


「ひ、酷いですよ沢辺さん…、転んだまま放置しないで下さいよー!」

「転んだのはお前のせいだろうが…。それより霧野、これをどう思う?」

「え?…って、これ装甲車ですか!?は、早く逃げないと…」

「大丈夫だ、こいつは襲ってくる気配がない。」


運転席には誰も座ってないし、銃座にも誰も居ない。さらに近寄ってみたが、何も起きない。

近寄って、ドアを開ける。…何も起きない。

試しに座ってみる。…何も起きない。

差しっぱなしのキーを回して、エンジンを掛けた。…特に何も起きない。


「おい、霧野。いい車が手に入ったぞ。乗れ。」

「ちょっと、これいいんですか?絶対外国の軍の物ですよこれ!」

「んなもん、戦車に襲われて逃走用に使いました、でいい。第一、キーが差しっぱなしっておかしいだろうが。」

「…はぁ。僕は知らないって言い張りますからね…。」


と霧野が後ろに乗る。よし、どこの国の物かは知らないが、このハンヴィーを借りていこう。







BT-2

旧ソビエト連邦で開発された快速戦車。(BTというのは快速戦車の意味)

37mm対戦車砲をベースとした主砲を搭載し、7.62mmDT機銃を副武装とした。

最高速度は72km/h。


ハンヴィー

M998四輪駆動軽汎用車とその派生型の事をいい、沢辺が言ってたのは(HMMWV, Humvee:High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle=高機動多用途装輪車両)の略称の事。

様々な派生型が存在するが、ここで登場するのは、M1025機銃搭載型。


M212.7mm重機関銃

1933年採用の重機関銃だが、抜群の信頼性から現在に至るまで使用されている。

採用から80年たった今でも、第一線で活躍しており、これを超える重機関銃はいまだに開発されていない。

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