第8話【不審者】
「えっと...」
ちょっとまって!?
話が違うじゃねぇか!
どうすればいいの?
どうすればいいの!
「ねぇ、名前聞いてるんだから答えてよ?それとも、答えられないような悪い人なの?」
「...」
...とりあえず、前の名前でいいのか?
でも、あんまり名前が変だとか言われたくないし、変えたほうが良いのかな?
...ってか、この世界の名前ってどんなのが普通なの!?
名前...名前...
名前で困る日が来るなんて...
「あのー...」
質問の答えが返ってこないせいで、女の子の顔が訝しげになっていく。
「ここには誰も住んでいないと思ってたけど、あなたが出てきたとき、私が知らないだけで誰か住んでたんだなって、仲良くなれるかなって考えて名前を聞きました。
しかし、その反応を見る限り...不審者ですよね。村長呼んできます。」
後ろを向いて走りだそうとする。
「あ、まって!」
女の子の腕を掴んで制止しようとする。
「!?」
が、それは叶わない。
女の子は腕を掴み返すと、そのまま俺を放り投げた。
打ち所が悪い。意識が遠退いていく。
有段者とか反則だろ...
そこで意識が途切れた─
〈000年 zero space〉
【原田涼介視点】
...この感じ、これは完璧に奴の家だわ。
勝手にお邪魔します。なんて...
「おい、居るんだろ?」
何も無い空間に問い掛ける。
すると、奴が出て...........来ない。
え?なんか、居ると思って言ったのに恥ずかしいじゃん。
誰も居ないから誰にも知られないけど。
...どこに居るんだよ。
10分ほど待っただろうか。
もう、諦めてくつろぎはじめた瞬間に、奴は現れた。
ビックリして何故か正座になる。
そのまま、睨む。
「どうなってるんだよ」
「迫力無いよ?」
「知ってる」
ヤバい事態なのに呑気な奴だ。
「そんなに怒らないでよー」
「怒るに決まってるだろ!!」
「僕だってプライベートタイムぐらいあるさ。ご飯休憩くらいいいだろ?」
「...なんの話だよ。」
「え!?待たせたことに怒ってるんじゃないの?」
あぁ、そういうことね。待たせたからだと思い込んでるんだな。
「...違うし。てか、考え読めば分かることだろう。」
「僕だっていつも読んでる訳じゃないよ?結構疲れるんだ。」
へぇ、そうなんだ。どうでもいいけど。
「能力が使えない。不審者扱いで今にも捕まりそうだ。」
「え...僕がちょっと留守にしてる間にそんなことが?」
「どうしてくれる?あぁ、お前にとっては都合がいいのか。勝手に死にそうになってて。」
「そんなつれないこと言うなよー。」
「どうだかな...」
このテキトーなかんじ、もしかして作戦なのかな。
「あっ、もしかして...」
「なんかわかったのか...?」
「発動条件をクリアしてないんじゃない?」
「...そんなもんがあるのか?」
「うん。条件をクリアしないとなんも起きない。どんな能力でもそうだ。
例えば血を流すこととか、叫ぶこととか。」
「...他の能力ってどうやったら手に入るんだ?」
「いろいろだよね。魔術だったり、石碑だったり、誰かに貰ったり。」
「ふーん...俺でも手に入るかな。たくさんあれば便利だろうし。」
「そういうわけにはいかないんだな。能力は、その人の魔力量に応じて持てる量が決まる。越えたら何かを捨てないといけない。
今、一番多いのは、北の海の王である海獣族、"トリトン"だ。多分...5個かな。
歴史上では32個持っていた英雄も居るけどね。
石碑は特殊なスクロールがあって、一度に1個しか発動しない。でも無くならない。」
「めんどくさ...」
「一番魔力を使う魔術でもあるからね。普通の人なら1つでも難しい。
それに、普通に暮らしてて出会うものではないよ。」
「もっと簡単にならないのか?」
「複雑だったり、原理がわかってなかったりするからね...」
案外不便だな。ってか話ずれたな。
「で、この能力の発動条件は?」
「あぁ、それはね─」
バシャ!─
〈海暦5130年 レンス村〉
【原田涼介視点】
─あれ?
戻ってきた?なんでいきなり?
てか、条件聞けなかったじゃん!
なんか、さむ─
「おい...」
「!?」
目の前に居たのは、めっちゃムキムキでやたら胸がデカイ女性。
剣士のような格好をしている。
「えっとー...ここは何処ですか?」
「見ればわかるだろう?」
「あー...」
うん。見れば分かるね。
女性と俺の間には鉄格子があった。
もちろん彼女が捕まっている訳じゃない。
「俺、捕まっちゃってます?」
「ご名答。」
まじかー、どうしよ。
拷問とかされちゃうのかなー?
「ついでに、なんで捕まったんでしょう?」
「不審者だろ?アルフェから報告があった。」
アルフェって、さっきの有段者の子か...。
って、そんな呑気なこと言ってる場合じゃないよ。
とりま、時間稼ぎに徹するか。
「えっと...あなたの名前は?」
「私は、ネルフィス。村に雇われた騎士だ。」
あー、仕事なのね。
「お給料いくら貰ってます?」
「言うわけないだろ。...この無駄な時間稼ぎ終わらせていいか?」
「あちゃー...バレてましたか」
「...村長呼んでくるから、大人しくしてろよ?」
...失敗したな。
時間かかったね




