第5話【とりま、死んでこい】
俺が目覚めると困るって...え?なんで?俺こいつに迷惑かけたっけ?
あれ?
「君は..な....ね.....」
俺もしかして殺されるの?
今、がんばるって決めたとこなのに?
「おい!」
「えぇ!?はい!!」
「君は人の話が聞こえないのか?」
どうやら俺が狼狽えてる間になんか話したらしい。
テンパってるんだからしょうがないじゃん。
「えーっとー、すいません。聞いてなかったんで、もう一回言ってもらえます?」
「はぁ...ふざけないでよ...。しょうがないから大事な事だけ話すよ」
「すいません...」
俺よりちっちゃいくせに、いちいちウザいやつだな。
「次は無いからね?」
「...はい。」
ここは下手に出ておこう。
俺は命が惜しい。
「じゃあ話すよ。...君はね。10年後に僕の故郷を壊すんだ。」
...は?俺が?
10年後って言ったら37歳か。
なんでだよ。
「動機はね。更正に失敗した君にとって幸せそうな奴らがウザかったんだって。」
マジかー、俺ならやりかねんけど。てか更正失敗するんだ...。
でも強くないのにどうやってそんなことするんだよ。
「君は8年後に、伝説の魔導師になるための"魔導書"を見つける。それを使って不死身で最強の魔術を持った魔導師になる。」
俺すごいな。てか魔導師とかこいつ厨二病?
「僕は厨二病じゃないよ...。見た目は中二だけど。」
へぇ、どうでもいい...ってか思考読まれてる?
「あのー、もしかして俺が何考えてるか分かるんですか?」
「うん。」
まじかー、下手なこと考えられないじゃん。
「話を戻すよ。最強になった君はなにも初めから世界を壊そうとしたわけじゃない。違う世界で生きることを選んだんだ。」
違う世界?それって...もしかして...
「異世界だよ。」
キター!!異世界だよ。
ドラゴンが飛び回って、ケモミミが駆け回る。
エルフ族が弓を持って狩りに出掛けてるような!!
「はしゃがないでよ。そこを壊したのは君なんだから。」
「すいません...」
「異世界に来ることが出来た君はここでやり直そうと決意した。
...でもこの世界は違いすぎた。
言葉だって違うし、文化も違った。
戸惑った君は横暴な態度で助けをこう。誰も助けるやつは居なかったよ。そしてまた一人になった君は、人々を恨んだ。」
「...」
「何故、俺は幸せになれなかったのに、こいつらは幸せそうなんだって。...理不尽だよな。」
「...」
だんだん怒気を帯びていく声の前に、俺は何も言うことが出来なくなった。
今、殺されても文句は言えない。
「...」
「...はぁ、今の君に言っても仕方ないよな。」
「...」
「ちょっと誤解してるかも知れないけど、世界を滅ぼしたのは君じゃないよ。」
「...え?」
「破壊の限りを尽くそうとする君を、人々は必死に止めた。
君は最強だったが、人が多かったこともあり、追い詰めることに成功したよ。」
「...」
「気を失った君を拘束していると、"誰か"が現れた。
目の前に居たのに、そいつが喋るまで誰も気付けなかったよ。
そいつは、突然手を上に掲げた。
その瞬間、君が光をまとった。そしてその光はあっという間に全てを包んだんだ。」
「...」
「次に光が消えたとき
.......そこには何もなくなっていた。建物や山、川すらもなくなってひび割れた地面が広がってた。
人々は呆然と立ち尽くしていた。
突然の出来事だから当然だよね。
でも、それは違った。
人々はね、記憶を失っていたんだ。
自分の名前から家族に関することまで。それどころか、言語すら忘れた。
何にも言わないわけだ。」
「...なんで、お前は記憶を持っている?」
「僕は特別だよ。人じゃない。
奴がかけたのは最強魔術の忘却魔法と消滅魔法だったけど、僕に魔術は利かないから。」
「...俺は、そいつに利用されてたのか?」
「そうだろうね。そいつは君が魔導書を見つける所から知っていたんだろう。そう仕掛けたのかもしれない。」
「でも、俺が悪いにはかわりないじゃないか...。」
「確かにそうだよ。でも、それが"運命"だったなら、君は防ぎようがないだろ?」
そうだけど...
「とりあえず今、君を目覚めさせる訳にはいかない。」
「俺を殺すのか?」
「そうしたいのはやまやまだけど、僕は"人の死"に干渉できない。だから─」
「君を、君が壊すはずの異世界に送る。」
「...ん?なんでそうなる?」
「僕は君を殺せない。だが、君を元の世界に戻すと"運命"に忠実に世界を壊そうとするだろう。
大きな出来事は強い運命に遮られて変えることは困難だ。
...でも、小さな運命は、僕の力があれば変えられる。
この後、ネトゲばかりする運命を異世界で暮らす運命に変える。
変えられた運命の中に決まったENDは無い。
どうなるかは君次第なんだ。
僕はそこに君を放り込む。
今のままの、最強の力を持たない君が行ったらどうなるんだろうね。」
「耐えられないね。すぐに死ぬだろうよ。」
「うん。よくわかってるね。」
「俺ヤバいじゃん。」
「うん。」
「なんか他に方法ないの?」
「無いね。だからさ。」
「とりま、死んでこい」
「え、ちょっ...まって」
「じゃあね」
そこで俺の意識は途切れた─
やっと、「とりま、死んでこい」書けた!




