第二章
第2章
1
「それより、森安って人が殺されたなんてびっくりですね」
平は本当に驚いたのか、さっきからそればっか言ってる。
「どうします?成田さんになんていいます?」
ほんとうるさいやつだなこいつは、
「ねぇ、聞いているんですか?」
「・・・・・ああ、聞こえてる」
「聞こえてるって・・・聞こうとしてください。
やっぱ、あれですよね?解くんですよね?」
「トク?」
「事件ですよ、事件」
「ああ、そうだな、だったら、今俺は推理してるから、黙れ」
平は、すみません気づきませんでしたと頷いた。
坂本はまず頭の中を整理しようと思った。
が、うまくまとまらない。
どういうことだ?
探している人が殺された?
誰に?
あの警察の騒ぎようから、まだ事件は解決してないのだろう・・・・。
でも、何でだ?
なぜ、過疎地域で起こった殺人事件をあんな大々的に捜査しているのだろう・・・。
何か大きな理由があるのかもしれない。
「よし、この事件、俺たちでも捜査するぞ」
「え?」
「聞こえなかったか、捜査するぞ」
「はい、そう来なくっちゃ」
「じぁ、まず森安さんの近辺を探すぞ」
平は手帳を出し、
「森安さんの、家の近くにラーメン屋がありました。もしかしたら、そこで何かつかめるかも・・・。」
「ほう、なぜそう思うんだ?」
「森安さんは、独身です。しかもエンジニアみたいです。そしたらやはり、帰宅時間は遅いほうでしょう。
今では男性でも料理は作りますが、くたくたなときに、さぁ、料理を作ろうと思う人はまず少ないでしょう。
だから、近くの店で、贔屓にしてる店があると考えてもいいんじゃないですか?」
「よし、そういうことか、でもどこか、ファミレスっで食べた線もあるが、まずはお前のアイデアを優先しよう」
「有難うございます、でわ早速行きましょう」
おう、
と坂本は力強く言った。
っでも、警察より先に調べるのはまずいかな・・・・・
まぁ、俺たちが調べてることが分からなかったら大丈夫だろう。
例えば探偵です、と言わず
記者ですと嘘でもつけば・・・・・・・
2
ある刑事は、ずっと考えていた。
どういうことだ?
なぜもう記者が動いてる?
それになぜ動いてる?
こんなちっぽけな事件なのになぜ・・・・・・
もしかして、今回の事件が密室事件ということを向こうはもう知っているのか?
いやそんなことはない。
それだったら、もう報道しているはずだ。
だったらなぜ・・・・・
もしかしたら、記者ではない人物が捜査しているということか?
その人物はどこまで知っているのだろう?
もしかしたら、真相を知っているのかも・・・
っということは犯人?
いや、そうじゃないだろう
だいたい、そんなことをしてなんになる。
じゃぁ、誰なんだ・・・・?
刑事はラーメン屋で食べながら、考えていた。
ガラガラと音を鳴らし、ドアが開いた。
若者が入ってきたと思ったら、有田だ。
向こうはまだ気づいてない。
あいつまだ警察やっていたんだ。
声をかけようか、いややめておこう。
ただのお節介なだけだ。
田中は、また同じことを話すのか、という顔でしぶしぶ話していた。
ありがとうございます、またくるかもしれませんと有田は、言いこちらに体を向けた。
「よう、元西」
「なんだ、気づいてたのか」
「いや、さっき、あの田中って人が教えてくれた」
「ああ、そうか。やっぱりな」
有田は急に真面目な顔をして言った
「っで、東京の御偉い方が何でまたここにいるんだ?」
「お前、知らないのか?今回殺されたのは、元刑事なんだ」
「おお、そういうことか、じゃぁお前らはその敵を討つためにここに来たのか」
「いいや、それが違うんだ。この事件お前も知っての通り密室だ。
しかも、丁寧にダイイングメッセージまで、置かれてた。どういう意味か分かるか?」
「いや、分からない」
「だから、俺たちみたいな長年捜査しあったやつに分かるかもしれないから、きてもらったんだ」
「っで、どうっだんだ」
「それが、誰もわからない。上はもう手詰まりだから引き上げろっだって」
「何だそれ。それじゃただの邪魔しに来ただけじゃないか」
「まぁ、そんなもんだな」
元山はニッと笑った。
「だから、今掴んでいる事をお前に託そうと思う」
おお、有田は有難いという目をした。
「ここの親子から聞いたんだが、ここに記者が来たらしい」
「記者?」
「そう、これを意味することが分かるか?」
「記者って、こんな小さな町に?」
「俺もおかしいと思う。だいたい、動くのが早すぎだ。ここは東京ではあるが、小さなへんぴな村だ」
有田は、なぜか怖い顔になった。
「話の腰を折って悪いが、村というな、町って言ってくれ。俺が悲しくなってくる」
「ああ、すまん、まぁ俺が思うに、誰か記者と偽って情報を集めているのは確かだ」
「何のために、偽る必要があるんだよ」
「分からない、俺が分かったのは、ここまでだ」
有田は、メモ帳を取り出し、何か書き込んだようだ。
「ありがとう、お前のおかげで、ちょっと進展したよ」
元西は少し照れて、
「役に立てたならうれしいよ」
そして、元西はお勘定をした。
ガラガラ、ドアを開け帰ろうとすると、有田が、
「おれ、この事件、絶対解決してみせる」
そのときの有田の言葉はやけに力強かった。
「おう、頼むぜ」
そして、元西は心の中で言った。
いつでもおれを頼ってくれよな・・・・・・。
3
殺人事件から3日目、警察は結構動いてる。
けど、そこまで、大掛かりな捜査になっていない・・・・
どういうことだ?
坂本はカフェで自分の推理を整えていた。
平は、一人で情報を集めている。
今、分かっているのは、密室であったことと、琵琶別荘で起こったこと、それと成田が書いていった
森安についての書類だけだ。
しかも、森安は元刑事らしい、実家がこっちにあるので、帰省してきたみたいだ。
けど、なぜだ?
成田は、森安の職業欄にエンジニアと書いている。
どういう意図でだ?
もしかして、知らなかったのか、あるいは・・・・・嘘をついたのか・・だ。
前者は、問題ではあるが差ほどでもない、
問題は、後者のほうだ。
が、しかしなぜ成田が嘘をつく必要がある。
ピロリロリン、ピロリロリン、
これまで、自分の世界に入っていたせいか、携帯の着信音にひどく驚かされた。
「はい、坂本だ」
「もしもし、平です」
「ああ、なんか掴めたか?」
「それが、今やばい状況になっていて・・・・」
「はぁ?どういうことだ。それは?」
「まぁ、会って話しましょう。ってか早く来てください。
私、死んじゃいます」
「おお、分かった。すぐ行く。お前、今どこにいる?」
「怖い会社です。この前の・・・・・」
「怖い会社?この前のって・・・氷室のとこか?」
「はい・・・・。いいから早く来てください。・・・・プチィっ、ツーツーツー」
おい、マジかよ、今の切れ方やばくないか?
しかも、氷室のとこって、氷室の会社のこと言ってんのか?
氷室って、あの警察でもなかなか踏み込めなかった会社だろ、
あれ、変な薬とか、臓器の売買、人殺しとかやってるところだろ。
所謂、道徳に無関心・・どころか取り分け道徳に無関心なやつらがたくさんいるところだろ。
しかも、なんでそんなところに平がいるんだよ。
4
今日、元西に聞いた情報以外ぜんぜん役にたたねぇ・・・・
有田は、路頭に迷っていた。
というよりも、道に迷っている。
有田には、少し贔屓にしている情報屋がいるが、できれば聞きにいきたくない、
その情報屋と言うのは俗に言う殺し屋だ。
東京は狭い、そいつにかかれば何でも教えてくれる。
でも、殺し屋だ。
俺は警察官だ。
とてもじゃないけど、仲の良い関係には見えない。
しかも、これがまた驚きなんだが、その殺し屋は、俺の同級生である。
ほんと、びっくりだ。
世界は狭いな、と感じた。
ある事件のときに、そいつを追った。
まぁ、結果からいえば、そいつは犯人じゃなかったけど、同級生と知った。
ホンとびっくりした。
今も、昔のころを思い出しても嫌なやつだ。
でも、俺はいまその嫌なやつのところに向かっている。
「確か、この通路を左に行けば・・・・・・」
あった。
とても胡散臭い事務所だ。
少し、図書館のような感じを放っている。
その事務所に、入ろうとすると、看板に『お盆なので休暇をとらせていただきます』と丁寧な字で書いてあった。
「お盆?」
思わず口に出してしまった。
お盆って事は、お盆からずっとやってないってこと?
今日は12月14日。
どう考えてもおかしいだろ。
「もう、どうすりゃ、いいんだよ」
その看板を蹴飛ばしてやった。
「おい、おまえ何してる、って大ちゃんじゃね?、おい、大ちゃん、元気だったか?」
「なんだタクか、ってお前、どういうことだよこれ」
と有田は、看板を指で指そうとしたが、そこには看板がない。
「今、自分で蹴ってたじゃん」
ああ、と曖昧な返事をした。
「もう、氷室んところかと思った」
「氷室ってあの氷室?」
「どの氷室か知らないけど、あのめちゃくちゃやってる社長だよ」
それなら有田も知っていると頷いた。
でも、確かもう捕まってるはず・・・
そうだ、森安先輩が逮捕したんだ。
・・・・・・って、そうだ森安さんが逮捕したんだ。
あれ、なんか関係あるのかな?
でも、どうせ今は刑務所にいるはず・・・・
「おい、急に静かになるなよ。ってかマジ腹立つ」
「おい、いきなりキレんなよ。どうかしたかってそういえば、なんでおまえんとこ、潰れてんだよ」
警察官がこんなこと聞くのはどうかと思ったが、少し気になった。
「あれだよ、このご時世だから、殺し屋もぎりぎりで商売やってるわけ、
しかも、氷室のやつが出所したわけで、依頼は向こうにどんどん集まるわけ。分かる?
っで、ばったんきゅ~ってなったわけ。俺はお前みたいに、公務員じゃないんだ」
おい、有田は、何かの間違いかと思って聞きなおした。
「氷室は出所したのか?」
「ああ、確か、昨月ぐらいにかな?しかも、この前、村で氷室をパクったやつ殺されてたじゃん?
あれ、氷室がやったんじゃないかって噂があるんだよ」
「それ、本当か?」
「ああ、あとさっき、その事件を調べている女が氷室に捕まったみたいだぜ」
有田の中で、いろいろなことが渦巻いていた。
氷室と森安さん、なんか関係があるんじゃないか?
それと、元西が言ってた記者と氷室が捕まえた女も関係が・・・・
「タク・・・・お前、昔ヒーローに憧れなかったか?俺は、めっちゃ、憧れたんだ」
「どうした、そりゃ今は悪役っぽいことしてるけど、昔はヒーローに憧れたぜ。
仮面ライダーとかめっちゃ好きだったし・・・・」
「お前は、もう悪役をやっていない。俺と一緒にヒーローになろうぜ」
「大ちゃん?どうしちゃったんだ?何をしようとしてる?」
「その女救いに行こうぜ」
有田は自信満々にかっこつけて言った。
タクは目を丸くさせ、
「それって、もしや・・・」
有田は一呼吸入れて
「そうだ、氷室の会社に潜入するんだ」