2 奇跡なのか、魔法なのか
桜は友達たちと同じクラスに慣れて一安心。
……じゃなくて、好きな人と同じクラスになっちゃってドキドキ新生活スタート!
え、嘘だよね?もう一度、その名前を確かめる。柊 誠。確かにそう書いてある。
もう一度、自分の名前を探す。片山 桜。ほんとにそう書いてある。同じクラスの欄に。
イェーイ、やった!と、うわー、マジ?そんな感情が、同時にやって来た。どうしよう?
「桜ー、早く行こう?もう半分くらいは教室に入っちゃってるよ」
今回も同じクラスになった大親友、かりんちゃんの声に引っ張られるようにして、クラスへ向かう。
本当に誠君が同じクラスなのか、半信半疑で黒板に貼ってある席順表を見た。誠君の声は、まだ騒がしい廊下からうっすら聞こえている。
座席表は、出席番号で決めてあるようだった。
これまたびっくりして二度見する。
一番左端の列の前から二番目に柊 誠、その隣に片山 桜。そうはっきりと印刷されてしまっている。
私の恋愛事情を把握している友達が、肩をつついてきた。
「頑張れ~!」
耳元でささやいてきた言葉に反論したくなる。ちなみに、友達のかりんちゃんは苗字が渡辺だから、席は必然的に遠くなる。
……助けて、リア!
(呼んだ?)
早速やってくる小さな妖精にホッとする。
(見てたよっ。良かったじゃん、すきピと一緒のクラスで、しかも隣の席!頑張れ~!)
リアにもかりんちゃんと同じことを言われてしまった。
リアは、(本人が言うところによると)妖精の国からきているくせして、こっちの世界の現代語を使う。好きな人のことをすきピって言ってみたりだとか。
っていうか!今は思考に浸っている余裕なんてない。でも、どうしよう?誠君がそばにいる状態で私はまともに学校生活を送れるのか。授業は特に上の空にならないようにしないと。
とりあえず、席に着こう。ようやく席順を見るのに飽きたんですよって感じで席に向かう。
いや、この隣のまだ空白の席、ここにすきピが来るとか想像しただけで……
挙動不審になっちゃうのは避けたいし、とりあえず本を読んでおこう。
席について、本の文字を意識的に目で追いかける。
あ~、全然内容が頭に入ってこない。もう少し読み続ければ、本の世界に逃げ込めるかもしれない。
ようやく脳みその陣取り競争にて本が優勢になってきたころ、誰かが席の前を通り過ぎた。
目を本から離さないように気を付けていたけど、わかってしまう。
やっぱりあれは誠君。それに、そのあと隣の席に座ったし……って、え?やっば、どうしよう、意識したらちょっと顔に熱が集まってきた気がする。とにかく。今は。本に、集中!
(慌ててますな~♪)
あ、この楽しそうな声はリア!じゃなくて、
(冷やかさないでよ、こっちは真剣なんだから)
(知ってる知ってる。でもさ、脳内パニック中の桜、可愛いなって思って。それにしても、顔真っ赤だよ~。めっちゃいい場所なんだしさ、いっそ、いつか告っちゃえば?)
(無理、無理、無理、無理!リアだって知ってるくせに!)
(告白できない理由4選だっけ?1.スマホがない。2.振られるのが怖い。3.話しかけられない。4.多分いざとなっても口が開かない な~に、大したことないって。まあ、告らないとしてもさ、思う存分楽しみな。あ~、懐かしき妖精学校時代!人間学科時代の友達が担当してる人間が桜と同じクラスなんだよ。ほら、あの子)
リアが見ている方向には、高い位置のポニテがよく似合う女の子。
(あ、トゥーファ!久しぶり!ねぇ、元気にしてた?まさか同年代の子を受け持つとは思ってなかったわ!)
あ、もうほかの妖精と話し始めてしまった。私が見えるのはリアだけ。トゥーファちゃんの姿は見えないし、声も聞こえない。それにしても、一人の人間につき一人の妖精が守護としてついているらしいって、ほんとかな。リアの言いようから察するに、事実なんだろうけれど。
(へぇ~、そうなんだ?うちの子は恋に夢中でして。ほら、桜の隣の席のイケメンいるじゃん、あの人のこと好きなんだって)
(そうだね、ちょっと応援してみるか)
あれ、なんか嫌な予感がしてきた。リアが隣の席に飛んでいき、誠君の方に飛び乗った。別に、柊君の方は見ていないんだけど、視覚じゃない何かでリアが伝えてきているのだ。
(うちの、桜がですね、君のことを好きらしいんで、ちょっと意識してあげてください)
あぁ~!と思っているうちに、リアが素早く説明してきた。
(大丈夫!私の声が聞こえる人間はリアだけだから。でも、若干魔力を溶かして喋ってみたから、ちょっとは意識してくれるかもよ。話しかけてくれるかも)
え?余計なお世話……
「桜さん、だっけ?小学校一緒だったよね?」
やっば、完全に魔法使って来やがったあのリア!
え、どうしよう?どう反応すればいいの?
「……久しぶ、り?」
迷いに迷って出てきた言葉がこれ。若干語尾が上がって疑問形みたいになっちゃった。
あれ、誠君ちょっと笑ってない?いや、気のせいか。多分、自意識過剰だよ。
「さっきからずっと読んでる本、面白いの?長い本読める人ってすごいよな」
「すごくはないと思うよっ。面白いから読んでるだけだし、これ、読みやすいライトノベルだし」
「それにしてもそれ分厚くね?」
何が面白いのか知らないけれど、笑ってる誠君を直視できない。
それにしても、思ってたより話しやすい人だった。びっくり。もっと好きになっちゃった。
私からのリアクションがもうこれ以上来なさそうだと察したのか、ほかの人と話し始めた誠君を横目に、また本を開く。
それをすごいって思ってくれるなら、長めの本を多めに読むようにしようかな、と思いながら。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
「桜、ほっぺたがリンゴみたいに赤かったよ。耳も、ストリベリークッキーみたいにピンクだった。」byリア
「リア、もう余計なことしないでね!(まあ、誠君と喋れたのは嬉しかったんだけど)」
誤字・脱字等ありましたら、教えてくださるとうれしいです。
次回でも、リアが(桜いわく余計な)魔法を使います。お楽しみに。




