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追放された天才魔導具師、辺境から星の海へ〜魔法と科学で港町を世界一の宇宙港へ成り上がらせる〜  作者: 黒崎隼人


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エピローグ「星辰のインフラと、次なる好機」

 ストライダー3号機の歴史的な成功から、数ヶ月が経過した。


 王国の首都にある王立魔導院の会議室では、かつてレオンを追放した老魔導師たちが、血の気を失った顔で巨大な水晶板を見つめていた。

 そこに映し出されているのは、アストラル・ワンが軌道へ投入した観測魔導具「タタラ1型」から送られてくる、リアルタイムの極秘映像だった。


「……信じられん。南の海上で発生した巨大な魔物の群れを、発生からわずか数分で、これほど鮮明に捉えるとは」


 院長が、震える声でつぶやいた。

 これまでの王国の防衛網では、魔物が海岸線に接近して初めて迎撃態勢を整えていた。しかし、レオンたちが構築した星の眼は、はるか上空から海の彼方を監視し、脅威の兆候を瞬時に察知して王都へ警告を発することができるようになっていた。


「しかも、あの男は……この観測網を、民間企業からの依頼で、たったの数日で軌道へ追加投入できると言っている。我々が何年もかけて魔力炉を建造していたのが、馬鹿らしくなるほどの即応性と低コストだ」


 別の老魔導師が、屈辱に顔を歪めながらも、その圧倒的な技術力と経済合理性を認めざるを得なかった。

 王国のパラダイムは、完全にシフトした。国家主導の巨大で鈍重な計画から、民間主導の柔軟で強靭な星空開拓の時代へ。その中心にいるのは、紛れもなく、かつて彼らが嘲笑して追放した天才魔導具師、レオンだった。


***


 一方、キイの町の星港では、潮風に吹かれながら、レオンとアリアが新たな発射塔の建設予定地を視察していた。

 3号機の成功により、世界中から「うちの魔導具も打ち上げてほしい」という依頼が殺到しており、ドルトンは休む間もなく第2、第3の発射塔の設計に取り掛かっていた。


「来月には、4号機と5号機の連続打ち上げが控えている。ガルドさんの結晶調合も量産体制に入ったし、シルヴィアの資金調達も盤石だ。これでようやく、俺たちが目指していた『高頻度の宇宙輸送』が本格的にスタートする」


 レオンは、青く澄んだ空を指差して力強く言った。


「町の人たちも、すっかり宇宙事業に慣れてきたわね。漁師さんたちは打ち上げのたびに安全海域の警備に協力してくれているし、魔導学校の生徒たちは、将来レオンさんのギルドで働くことを目標に必死に勉強しているわ」


 アリアは、穏やかな笑顔で彼に寄り添った。

 彼女の治めるキイの町は、今や王国中から若者や商人が集まる、最も活気にあふれた最先端の都市へと変貌を遂げていた。


「レオンさん。あなたは本当に、あの時酒場で語った夢を、すべて現実にしてしまったのね」


「俺1人じゃないさ。アリア、君たちという最高の仲間がいたからだ。それに……」


 彼は、かつて初号機と2号機が空の彼方へ散っていった、南の海の方角を見つめた。


「俺たちは、あの2回の失敗で、空の神様にきついお灸を据えられた。予測の甘さや、未知の環境に対する慢心。それを徹底的に叩き潰されたからこそ、今の強靭なストライダーがある」


 青年は深く息を吸い込み、潮風の匂いを肺の奥まで満たした。


「俺たちの目標は、2020年代の終わりまでに年間20機、2030年代には30機を飛ばすことだ。世界中の誰もが、必要な時に必要な場所へ、星のインフラを自在に構築できる時代。それを、このキイの町から発信する」


 その時、管制室の方から、ドルトンの大きな声が響いてきた。


「おい、レオン! アリア様! 4号機の最終部品が王都から届いたぜ! 組み込みの準備はできてるか!」


「ああ、今行く!」


 レオンは力強く手を振り返し、アリアに向き直った。


「行こう、アリア。次の『好機』が、俺たちを待っている」


「ええ、どこまでも!」


 2人は弾むような足取りで、鋼の塔がそびえる星港へと向かって走り出した。

 彼らの頭上には、澄み切った青空がどこまでも高く広がっている。

 数多の困難と挫折を乗り越え、不屈の精神で切り拓かれた王国の民間飛翔体の歩みは、まだ始まったばかりだった。

 空の神は、何度でも彼らに試練を与えるだろう。しかし彼らは、決して諦めることなく、未来という名の星の海へ向かって、力強く羽ばたき続けるのだ。

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