第3.5話-寄り道編-
帰宅した私は、ソファに座り何気なくテレビをつけた。
そこに映し出されたのは、ピンク色の衣装をまとった大勢のダンサーたちだった。
ダンサーたちは、一糸乱れぬ動きで見事なダンスを披露していた。
私はしばらくテレビを見ていた。
だが、ダンサーの足元が映ったとき「あっ…?」私は思わず二度見した。
画面の中のダンサーたちの足が、
右足、左足、右足、左足、時々クロス!
そのダンスはフラミンゴたちが踊っていたのと、同じだった。
それに、ピンク色の衣装がまるでフラミンゴみたいだった。
あの夜のフラミンゴたちが、していたのと同じ動きをするダンサーたち。
あの夜のフラミンゴたちも一糸乱れぬ見事なダンスだった。
しばらくすると、大勢のダンサーによるパフォーマンスは終了し、今度は社交ダンスのペアが十組ほど登場した。
中でも一組のペアがインタビューを受けたとき、ダンス教室でのエピソードを語り始めた。
「ダンスの途中で、生徒さんに足を踏まれることがあるのですが、私は全然平気なんですがね、生徒さんの方がすごく気にしてくれるんですよ」
その言葉を聞いて、ネズミとのダンスを思い出した。
私はダンスを教えてもらいながら、何度も足を踏んでしまった。
「ごめんなさい」と言っても、
大丈夫だよ、と言うかのように、優しく私の手を取ってくれた。
そのときの話…?
優しい笑顔で語るテレビの中の男性の目。
私は息をのんだ。
あのときのネズミと同じ優しい目。
このペアの人…あのときのネズミ?まさか…。
私は子供の頃から、他の人には見えないものが見えていたが、今テレビに映っているのは、誰もが見られる人間。
私のところに来るのは、いつも動物たちばかりだ。
そんなことを考えながらテレビを見ていると、テレビの中で「昭和三十年代の懐かしいダンス」という番組タイトルで、紹介されていた。
確かに、少し古い時代を感じる映像だった。だとすると、このダンサーの人たち…今はもういない人も…。
もしかして、この前のフラミンゴたちや、ペアのネズミは転生…?
でも、なぜ私の元に現れるの?
もし、転生だったとしても、私はテレビに映るダンサーを誰も知らない。
私の知らないところで何か繋がりがあるの?
フラミンゴ、ネズミ、シマウマ。
シマウマは、オセロ盤という形で、痕跡を残した。
そのオセロ盤は、私たちきょうだいが、子供の頃に遊んだもので、十年ほど前に従兄弟たちに譲ったものだった。
それが、今シマウマを通じて、また私の元に戻ってきた。
フラミンゴ、ネズミ、シマウマ、彼らは、いつも私が落ち込んだり、悩んだりしたときに現れる。
まるで、元気のない私を元気づけに来てくれているようだった。
そして、優しさと温もりを残して消えていく。
最近よく見る黒猫は何…?
黒猫もフラミンゴやネズミ、シマウマと関係があるの?
でも、黒猫はいつも外で会うから他の人からも見えているはず…。
わからない、どんなに考えてもわからない。
私は明日に備えて休むことにした。
最近、肩こりなのか、肩が痛くて会社でその話していたら、同僚が整形外科を紹介してくれた。明日はその整形外科を予約している。
明日、その整形外科の診察室で、動物のナマケモノに会うとは、思ってもいなかった。




