天使を満喫 (2)
■あらすじ
無職のおじさんAは、ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身した。
彼は別人を装い、家賃の取り立てを免れるばかりか、大家の金取家に居候することに成功した。
■登場人物
A
・30歳、無職、男性
・ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身
・その容姿をフル活用して生きていくことを決意
・金取家の人々からは”テンちゃん”と呼ばれる
・ゲームやSNSでは”エイちゃん”と名乗る
・主人公
金取リツ(カンドリリツ)
・17歳、女子高生、大家の孫娘、アルバイトで大家の仕事を手伝う
・可愛い物好き
男2人
・男子大学生
・オンライン対戦ゲームでAと知り合う
1
彼は布団をかぶっている。
布団の中に隠したスマホを、彼はいじっている。
彼は時々スマホから目を離して、ため息をつく。
金取家での居候生活において、彼は暇を持て余していた。
彼は日中、やることがない。
老夫婦の買い物に付き合うか、テレビを見るか、それくらいだ。
暇を持て余して、彼はよくtwitterアプリを開く。
twitterを開く彼は、ほとんどの場合、他の人の投稿を見るだけだが、たまに、ツイートしたり、自撮り写真を上げたりする。
またtwitterで彼はしばしば、ゲーム仲間と会話する。
ゲーム仲間は大学生の男2人組、ネットでの呼び名はそれぞれ”ベーヤン”と”シイタケ”だ。
2人と彼は、先日、オンラインゲームを通じて知り合った。
「それじゃ、あさって、よろしくね」
「オッケー」
「よろしくお願いします」
2人と彼は遊びの約束をした。
”ベーヤン”が話題を変えた。
「てかさ、エイちゃんってたぶんめっちゃ可愛いよね?」
「わかる。自撮りはいつも顔半分くらいしか出てないけど、にじみ出てる」
”ベーヤン”は続けた。
「顔全部映ったの見てみたいなー、なんて」
「おい、お前、やめとけ」
彼は答えた。
「いいですよ」
「え、うそ、いいの?」
「まじか…大丈夫?気を付けてね」
彼は布団から起き上がって、部屋の扉を少し開け、外の様子を確認した。
静かだ。居間からテレビの音がかすかに聞こえる。リツは部屋にいるらしい。
彼は壁際に立ち、スマホを高く掲げ、ポーズを決める。
カメラはフラッシュを焚き、「パシャ」と鳴る。
彼は急いで何枚か自撮りをした。
彼はまた布団に戻り、写真の一つを加工して天使の輪と羽を隠した。
そしてそれをtwitterに投稿した。
2人の反応は良かった。
「うおおおおおお!助かる」
「うわすご…本当に可愛い」
ふと、ふすまを叩く音がした。
「テンちゃん、お風呂入ろー?」
リツだ。
彼はビクッとして急いでスマホを隠した。
「はーい。今行きまーす」
2
リツと彼はしばしば風呂を共にする。
彼の背中には羽がついている。
しかし、彼が自分でその羽を洗うのは、物理的に難しかった。
そこで、リツは都合のつくときに彼が羽を洗うのを手伝ってくれるようになった。
そのお礼に彼もまた、リツの背中を流すようになった。
彼はこの機会を利用して、リツに復讐することを思いついた。
「ていうかやっぱ無職だったんだ。そうだと思った。あいついつ会っても不潔で、ちょっとイヤだったんだよね。」
リツのこの発言を、彼は根に持っていた。
復讐のため、彼はセクハラをすることにした。
風呂場にはリツと彼がいた。
リツは風呂椅子に座っている。
彼はリツの後ろに立って、リツの背中を石鹸のついた手ぬぐいでこすっている。
泡が時折リツの背中を滴り落ちる。
風呂場にはうっすらと湯気が立っている。
リツがお礼を言った。
「テンちゃん、いつもありがとうね」
「いやこちらこそ、自分じゃ洗いにくいから、いつも本当に助かってます。」
2人がしばらく無言でいた後、彼は言った。
「リツさんってその…胸大きいですよね」
「え、何、急にどうしたの?」
彼は続けた。
「私、小さいので、リツさんがうらやましくて」
「そうなの?あんまり心配しなくても、テンちゃんくらいの年だったら、きっとまだ大きくなるよ。」
「そうなんですか…」
またしばらく無言が続いた後、彼はついに切り出した。
「おっぱい触ってもいいですか?」
リツは驚いた様子で振り向いた。
「ん?今なんて?」
彼は繰り返して言った。
「リツさんのおっぱい、触ってみたいんです。ダメですか?」
リツは胸を抱えて言った。
「え、まあ、うん、ダメではないんだけど…」
「いいんですか?やった」
彼が両手を伸ばすと、リツはしぶしぶ胸を解放した。
ハリのある胸を回り込むように、一滴のしずくが肌を伝う。
彼の両手がリツの胸に触れた。
(ウホ、これが現役JKのおっぱい...!)
彼はリツの胸に夢中になった。
彼が胸を2,3回揉むと、リツは立ち上がって彼の手を振り払った
「ちょ、手つきがやらしい!もうおしまい!」
3
2日後、彼はまたしてもアパートの部屋にいた。
部屋のPCを使って、彼は”ベーヤン”、”シイタケ”とオンラインゲームをしていた。
部屋はやはりカーテンを閉め切って薄暗い。
ディスプレイは煌々と光り、起動したままのゲーム画面を映している。
PCはファンを回し続けている。
PCにつながったイヤホンを耳に挿し、彼は椅子に座っている。
彼は椅子の手すりに頬杖を突き、床に届かない足をぶらつかせている。
”ベーヤン”、”シイタケ”はゲームを終わろうとしていた。
「さて、もうそろそろ終わりますか」
「せやな。お前、今日バイト?」
「そう」
彼は残念そうに言った。
「えー、もう終わっちゃうんですかあ」
”シイタケ”は弁明した。
「ゴメンな、また今度やろう」
”ベーヤン”は彼に訊いた。
「てかエイちゃん、家族に見つかるとまずいって言ってたけど、時間大丈夫なの?」
彼は時間を見た。16時を過ぎていた。
「やば、大丈夫じゃない!」
(そろそろリツが帰ってきちゃうかも)
”ベーヤン”、”シイタケ”は笑った。
彼は切り上げた。
「ごめんなさい、それじゃまた!」
「じゃーねー」
「またね」
彼は急いで部屋を片付け、そそくさとアパートを出た。
4
「おーい、テンちゃん」
彼が振り返ると、リツが笑顔でこちらに向かって手を振る。
リツは学校から帰ってきたところのようだ。
リツはリュックをしょって腕を捲り、腕にブレザーをひっかけている。
日は少し傾いているが、夕焼けにはまだ早い。
昼間は少し暑かったが、今はちょうど良い。
彼はリツと合流した。
リツは彼に訊いた。
「テンちゃん、何してたの?」
彼は両手の人差し指を突き合わせて、答えをひねり出そうとした。
「えーっと…その…」
彼の答えを待たず、リツは続けた。
「もしかして、アパートを見に行ってた?」
彼は答えをひらめいた。
「あ、そう、そうなんです。実は、何か思い出せないかと思って、アパートを散策してみたんです。」
「そうなんだ。」
リツは彼に成果を訊いた。
「何か思い出した?」
「いえ、何にも…」
リツは彼を励ました。
「大丈夫、きっとすぐ思い出せるよ」
「はい…」
リツは彼に訊いた。
「そうだ、コンビニ寄ってかない?アイス買ってあげる」
「ほんとですか?やった」
彼が何をしていたのか、リツによる追及はそのあともなかった。
彼は事なきを得た。