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天使に変身  作者: だあ
5/10

天使を満喫 (1)

■あらすじ

無職のおじさんAは、ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身した。

彼は別人を装い、家賃の取り立てを免れるばかりか、大家の金取家に居候することに成功した。


■登場人物

A

・30歳、無職、男性

・ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身

・その容姿をフル活用して生きていくことを決意

・主人公


金取リツ(カンドリリツ)

・17歳、女子高生、大家の孫娘、アルバイトで大家の仕事を手伝う

・可愛い物好き


金取セツコ(カンドリセツコ)

・おばあちゃん、主婦、リツの祖母

・背中の羽のせいで普通の服が着れないAのために、服を仕立ててくれる


金取ノボル(カンドリノボル)

・おじいちゃん、老後に大家業、リツの祖父

1


彼の金取家での居候生活が始まって数日が経過した。

彼は衣食住を与えられ、何不自由ない生活を送っていた。

服は、すでにもう十分与えられ、彼からすると少し多いくらいだ。

食事はセツコ婆が作ってくれる。独身生活のコンビニ弁当に比べて美味しい上に健康的だ。

彼が自室として使っている客間にはちゃんと家具がそろっている。


彼は居間にいた。

居間には畳が敷いてある。

中央にちゃぶ台、そのそばに座布団がいくつか散らばっている。

時刻は夕方、隅にあるテレビはバラエティ番組の再放送を映している。

彼は寝そべってちゃぶ台の脇からテレビを眺めている。

居間にはノボル爺もいた。

ノボル爺は湯呑をすすりながら、やはりテレビを眺めている。

ちゃぶ台の上には、彼のために仕立てられた服がある。


番組の司会者が冗談を言い、出演者を笑わせた。

すると、彼は笑った。ノボル爺はお茶を吹きこぼしてしまった。

彼は笑いながら声をかけた。

「大丈夫、おじいちゃん?」

「ありがとう。テンちゃんはいい子だなあ。」

ノボル爺は、立ち上がって台所に顔を出した。

「セッちゃん、台拭きちょうだい。お茶こぼしちゃった。」

するとセツコ婆が台拭きを持って居間にやってきた。

彼の様子を見てセツコ婆が叱った。

「こらテンちゃん、ちゃんと座りなさい。服もしまわないと汚れちゃうよ。」

彼はセツコ婆に抱きついて言った。

「ごめんなさい、おばあちゃん。お洋服の仕立て、いつもありがとう。」

するとセツコ婆は満面の笑顔で彼の頭を撫でた。

「いいのよ、こんなに可愛いんだもの。仕立て甲斐があるってもんさ。」


彼は「テンちゃん」と呼ばれるようになった。

「天使ちゃん」を呼びやすく、短くしたあだ名だ。


2


その少しあと。

彼は今度はあぐらをかいてテレビを見ていた。

ノボル爺は何やら長電話をしていた。

時々、相槌が聴こえる。

また、リツが帰ってきた。

玄関の鈴が鳴り、リツの「ただいま」という声が聞こえた。

彼がテレビから目を離して振り返ると、リツがこちらを見下ろして立っていた。

リツは制服を着ている。

シャツの裾はスカートにちゃんとしまわれ、長袖はまくられている。

少し汗ばんでいる。

一瞬、怪訝そうな表情だったが、すぐに笑顔に変わった。


「はい、はい、わかりました。それじゃまたよろしくお願いします。」

ノボル爺が電話を切った。

セツコ婆がノボル爺に声をかけた。

「Aさんの親御さん、なんだって?」

ノボル爺は答えた。

「Aさんと連絡が取れたんだと。」

「あら、よかったねえ。」

ノボル爺は報告した。

「Aさんの代わりに、親御さんが荷物引き払うって。家賃の不足分も払ってくれるそうだよ。」

「親御さん、ずいぶん優しいんだねえ。」

ノボル爺はAの事情について説明した。

「どうやらAさん、無職らしくて。親御さんから仕送りしてたんだと。

でもいつまでも続けるわけにはいかんだろう。

自立のきっかけになればと思って、仕送りを止めたらしい。

そしたら家賃は滞納、Aさんは行方不明。

親御さん、しきりに謝ってたよ。迷惑をかけたって。」

彼はうつむいていた。

リツが口をはさんで怒った。

「親御さん、かわいそう。何も悪くないのに。あいつが全部悪いんじゃん。」

「まあ、そうだなあ…」

リツはつづけて不満を言った。

「ていうかやっぱ無職だったんだ。そうだと思った。あいついつ会っても不潔で、ちょっとイヤだったんだよね。」

「まあ、まあ、そんな風に言いなさんな」


実のところ、彼は両親と連絡を取り始めていた。

両親は金取家から連絡を受け、彼が家賃を滞納し行方をくらませたことを知った。

両親は彼に連絡を入れ、仕送りを切ったことを詫び、息災かどうかを確認し、実家に帰ることを提案しようとしていた。

そして、その痕跡を彼が発見したのはつい昨日、部屋からスマホを持ち帰ったときのことだ。

しかし彼は実家に帰りたくない。

わざわざ正体を明かし、証明してまで、無職の中年男性としての扱いを受けたくない。

そこで彼は両親に、息災だが実家には帰れないと伝え、家賃の補填と退去手続きの代行を依頼した。

彼はまた、金が底をつくためしばらく連絡もできなくなる、と両親に伝えた。

すると、両親は通信料に色を付けた分の仕送りを再開した。


リツの発言に、彼はショックを受けた。

思えば、彼に対するリツの態度はいつも冷ややかで粗暴だった。

リツにはいつか復讐をしてやろうと、彼は心に決めた。


3


別の日。

アパートの部屋を引き払うことになったので、

彼は改めて、貴重品を確保することにした。

彼が「ちょっと遊んできます」といって出かけようとすると、

老夫婦は怪しむそぶりもなく、「はい、行ってらっしゃい」と彼を送り出した。

部屋は施錠されていたが、前回持ち帰った鍵を使って開けた。

部屋に着いた彼は財布の中身の選別を始めた。


選別をひとしきり終えると、彼はPCに目をやった。

ディスプレイにはうっすら埃がかぶっている。

電源ボタンを押してみると、ファンがうなりだす。

カーテンを閉め切った暗い部屋で、ディスプレイが煌々と光る。


(PCを手放すのは惜しいな。しばらくゲームもできなくなるのか。)

彼は時刻を確認した。午前11時ごろだ。

(一回だけやろう。)

彼はお気に入りのオンライン対戦ゲームを起動した。

1回目の対戦の後、

(久々にやってみると、やっぱり面白いな。もう1回だけ…)

2回目の対戦の後、

(昼時に帰ればいいだろう)

3回目の対戦の後、彼は無意識に4回目の対戦を始めた。


気が付くと時刻は正午を回っていた。

長時間の外出によって金取家の人々に疑いを持たれるのはまずい。

アパートのAの部屋で遊んでいるのがばれたら、正体まで見破られるかもしれない。

しかし、ゲームはまたしても対戦待ちの状態になっていた。

(これで最後にしよう。)


4


対戦は3人1組のチーム戦だ。

チームは、ゲーム内のフレンドと組んで作ることができる。

フレンドがいない、もしくは足りない場合は、ゲームが接続中のプレイヤーの中からランダムに補充してくれる。

そしてプレイヤーが意思の疎通を図れるようにするため、ゲームにはボイスチャットの機能が備わっている。

しかし、彼がボイスチャットを通じて話しかけることはほとんどなかった。

プレイヤーから厳しい口調で話しかけられることがしばしばあったためだ。

ゲームがマッチングした見ず知らずの人と会話することを彼は恐れていた。


何やらボイスチャットが騒がしい。

声の主は男2人組だ。

大学生だろうか、「講義」とか「単位」といった言葉がきこえた。

2人は仲が良さそうだ。冗談を言って笑い合っている。


対戦が始まる直前、2人が彼に話しかけてきた。

「”エイちゃん”さん、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしまーす。」

”エイちゃん”は彼がゲーム内で使うアカウント名(eichan6409)だ。

当初、彼は返事をしないつもりだった。

対戦中はボイスチャットを聞くだけ聞いて、彼自身は何も言わないつもりだった。

しかし彼はふと思いついた。

(ボイスチャットに入ってきたのが女の子だったら、ちやほやするのでは?)

彼は勇気を出して、ボイスチャットのミュートを解除した。

「あっ、あの、えーっと」

彼はどもりながらあいさつした。

「エイちゃんって言います…よろしくお願いします…」

男2人は反応した。

「返事してくれてありがと-」

「え、てか声めっちゃ可愛いっすね。」

彼はどもりながら続けた。

「あ、はい、ありがとうございます…あの、VCボイスチャットあんまり慣れていないので、お手柔らかにお願いします…」

「オッケー」

「それじゃあどこ行く?」

マップのどのあたりに行きたいか、2人は彼にも尋ねた。

「”エイちゃん”さんは行きたいところありますか?」

「すみません、あの、えーっと」

「焦んなくて大丈夫だよ、ゆっくりでいいからね。」


結局、彼は2人とチームを組んで、ゲームを続けた。

1回目の対戦が終わるとき、2人が彼を誘ってくれた。

2人は彼にとても優しく接してくれた。

2人とチームを組んでゲームするのは楽しかった。

ゲームを終えて解散したのは、午後3時頃だった。

2025/08/07 【祝】だいたい折り返し地点!

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