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天使に変身  作者: だあ
4/8

天使に施し(3)

■あらすじ

無職のおじさんAは、ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身した。

変身した彼は家賃の取り立てを免れるばかりか、金取家に居候することになった。


■登場人物

A

・30歳、無職、男性

・ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身

・その容姿をフル活用して生きていくことを決意

・主人公


金取リツ(カンドリリツ)

・17歳、女子高生、大家の孫娘、アルバイトで大家の仕事を手伝う

・可愛い物好き


金取セツコ(カンドリセツコ)

・おばあちゃん、主婦、リツの祖母

・背中の羽のせいで普通の服が着れないAのために、服を仕立ててくれる


金取ノボル(カンドリノボル)

・おじいちゃん、老後に大家業、リツの祖父

1


翌朝、彼はまぶしさに目を覚ました。

見慣れないふすまと白い壁が見える。

朝の日差しが窓枠に切り取られ、畳の一部を照らしている。

またしても背中のあたりに痛みを感じる。

背中のあたりをまさぐってみると、やはりふさふさしている。

部屋には彼1人しかいない。

時折、部屋の外から扉の開け閉め、足音、人の声など、生活音が聞こえる。


彼は掛け布団を押しのけて上半身を起こした。

(背中いってえ。仰向けに寝る癖、治さないとな…)

寝ぼけたまま、しばらく布団の上でじっとしていると、ノックとともにふすまが開いた。

学生服姿のリツが立っていた。

リツは部屋に入ってきて、彼の頭をなでた。

「おはよう天使ちゃん。朝ごはん食べておいで。私もう学校行くから。ばあちゃんに面倒を見てもらってね」


彼の金取家での居候生活が始まった。

彼が今いる部屋は客間だ。

当分の間、自室として使わせてもらえることになった。


今日は服を買いに行くことになっていた。

昨日、リツの古着を何着かもらった。

しかし、物によってサイズが合わなかったりほつれていたりと、心もとない。

そこで、買い足すことになった。


2


彼と老夫婦は服を買いに出かけた。

彼らは道すがら商店街の古着屋に寄った。

店がやっているかどうか確かめるために、セツコ婆は一人で中に入って行った。

彼とノボル爺は店の前でセツコ婆を待った。


平日昼間の商店街は閑散としている。

多く立ち並ぶ飲み屋は皆閉まっている。

時々、スーパーや百均に出入りする人を見かける。

メインの通りから脇にそれたところに古着屋はあった。

店内は狭く、ハンガーでつるした古着に埋め尽くされている。

人一人分の通路はかろうじて確保されている。

時々後ろでしゃべる者がいる。

通行人が彼のことを話しているらしい。


「見た?あの子」

「見た、見た、可愛いー」

「コスプレかな?」

ノボル爺が彼に話しかけた。

「天使ちゃんは古着でもいいのかい?」

「全然大丈夫です。むしろ新品なんて申し訳ないです。ただ仕立てやすい服だったらいいなあと思います」

「そうかい」

彼は思った。

(普通のズボンとかがほしいなあ。見た目で飯にありつくつもりなら、気を使わないといけないんだろうけど。今はそんなに頑張らなくていいかなあ。)

セツコ婆が店主を連れて店の奥から出てきた。

「ほら来て。もう本当にベッピンさんなんだから。」

「ハイ、ハイ。もうわかったから」

店主は彼の方を見た。

「あなたが天使ちゃん?まあなんて可愛らしい。」

彼は会釈した。

セツコ婆が言った。

「今日はこの子の服を見に来たのよ。」

「あらそうなの、いいわね。おまけしちゃおうかしら。」


彼が選ぶまでもなく、店主がおすすめの服を集めてくれた。

彼の意に反して、おすすめの服は女の子らしいものばかりだった。

店主はそれらを半額ほどにまけてくれた。

老夫婦が断ろうとすると、店主はつっぱねた。

「いいの、いいの。こんなかわらしい子に着てもらえるなら、古着たちも幸せでしょう。」


3


その日の夜、彼はリツと一緒に風呂に入ることになっていた。

昨晩、彼は一人で風呂に入った。

風呂上がりの彼の羽と髪から水が滴るのが、リツの目に留まった。

「天使ちゃん、背中の羽、ちゃんと洗えてる?髪の乾かし方も教えてあげようか。」

この提案は彼にうれしさと困惑をもたらした。

彼の精神はまったくもって30歳男のままだった。

おじさんとしては、女子高生と一緒のお風呂なんて最高のイベントだ。

しかし当の女子高生がそれを知らないことに、おじさんは引け目を感じた。


脱衣所に彼とリツが入ってきた。

脱衣所には洗面台、洗濯機があり、少々広めだが、2人でいると少々手狭だ。

彼は昨日もらったワンピースを着ていた。

リツは制服から部屋着に着替えていた。


彼は念を押した。

「あの、一緒に入っちゃって本当にいいんですか?」

「あはは、どういうこと?もしかして天使ちゃん、女同士でもイヤ?」

彼は首を横に振った。

「そんなことないです。」

リツは彼に指示した。

「それじゃあっち向いて」

彼が従うと、リツは背中のファスナーを下し、肩を脱がせた。

彼は振り向こうとした。

「え、ちょ、自分で」

「はい、手あげてー」

彼が従うと、リツは袖を足元までおろして、ワンピースを脱がせてしまった。


彼はワンピースをまたぎ、急いで下着を脱いだ。

するとリツも服を脱ぎ始めた。

それを見て、彼は風呂場の扉を開けた。

風呂椅子に座ってどぎまぎしながら、彼はリツが来るのを待った。


4


「ガチャ」

リツが風呂場に入ってきた。


髪はまとめ上げられている。

リツは腕に手ぬぐいをひっかけ、前を隠している。

胸は程よく大きい。

やや細身だが、腰回りは女性らしく、また肉体は健康的でハリがある。


縮こまる彼の後ろから身を乗り出して、リツはシャワーを出した。

「かけるよー」

彼はシャワーをかぶった。

リツは彼に指示した。

「後ろはアタシが洗うから、前は自分で洗ってね」

彼は髪を、リツは背中を洗い始めた。

リツの洗い方は丁寧だった。

彼は訊いた。

「リツさん、彼氏はいるんですか?」

「いないよ、どうしたの、急に?」

「いいお嫁さんになると思って」

リツは笑った。

「あはは、彼氏にこんなことしないよ」


リツに背中を洗ってもらうのは気持ちよかった。

特に、羽の付け根のあたりをこすってもらうのを、彼は気に入った。

洗体を終え、彼は湯船につかった。

彼はリツの洗体をぼーっと眺めた。


5


別の日。

その日はリツも老夫婦も出払い、日中、彼は一人で過ごすことになった。

しばらくテレビを見ていたが退屈だった。

そこで、彼はアパートの部屋を覗いてみることにした。

彼は冷蔵庫の中身やゴミを処理したかった。

また暇つぶしのためにスマホを持ち帰りたかった。


部屋の玄関扉にはカギがかかっていない。

開けると、中の状態はおととい彼が出てきたままだ。

布団は敷きっぱなし。

服が散らかっている。

カップ麺のゴミが机に放置されている。

カーテンを開けてみると、日光が舞う埃を照らす。


スマホは机にあった。

ロックを解除してみると、LINEの通知がたまっていた。

LINEを開いてみると、通知は両親からのものだとわかった。

最後のメッセージがトーク一覧画面に表示されていた。

「ごめんね。」

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