表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使に変身  作者: だあ
3/7

天使に施し (2)

■あらすじ

無職のおじさんAは、ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身した。

変身した彼は別人を装い、大家の孫娘リツの取り立てを免れた。


■登場人物

A

・30歳、無職、男性

・ある日突然、天使の姿をしたかわいらしい少女に変身

・その容姿をフル活用して生きていくことを決意

・主人公


金取リツ(カンドリリツ)

・17歳、女子高生、大家の孫娘、アルバイトで大家の仕事を手伝う

・可愛い物好き

1


彼にまともな服をあてがうため、リツは彼を連れて金取邸に向かった。

金取邸はアパートに隣接する一軒家だ。

金取邸にはリツとリツの祖父母夫婦が暮らしている。

祖父は金取ノボル(かんどりのぼる)、祖母は金取セツコ(かんどりせつこ)という。

2人はアパートの大家だ。


金取邸は木造で、屋根は瓦。

引き戸を引くと、木の床の廊下と、その奥に畳の部屋が見える。

リツが帰着を知らせた。

「ただいま」

すると奥からノボル爺とセツコ婆が出てきて、リツを出迎えた。

2人は、まだまだ元気な老夫婦、という感じだ。

ともにきれいな白髪で、肌は少し焼け、顔にはしわがある。

歩き方は機敏で、老いを感じさせない。

祖母の髪はくるくるしてボリューミーだ。

祖父はおおかた禿げ、側頭部に少しだけ髪が残っている。


セツコ婆が心配を口にした。

「おかえりなさい。リッちゃん、あんた大丈夫かい?怪我してないかい?」

「ばあちゃん。大丈夫だよ。あいつビビりだし。」

「そうはいってもねえ。あんたは女の子なんだし、相手は大人の男でしょ。何かあったらと思うとあたしゃ怖くて、怖くて。」

続いて、取り立ての成果について訊いた。

「それで、あの人は家賃払ってくれそうかい?」

「いやあいつ、いなかったよ。逃げたみたい。その代わり、」

リツは彼のことを紹介した。

「この子がいたんだ。ほらこっちおいで。」

彼はリツの後ろに立っていた。

リツは彼の背中を押して、自分の横に立たせた。

ノボル爺が訊いた。

「リッちゃん、この子どうしたんだい。この子は一体…」

リツは知っていることを伝えた。

「わかんない。Aさんの部屋に居たんだ。記憶喪失なんだって。とりあえず服をどうにかしようと思って。」


彼はリツに連れられて、リツの部屋に向かった。


2


リツは自分の古着を彼にあてがうつもりだった。

部屋を探しても見つからなかったので、リツは服を探しに部屋を出て行った。

「ばあちゃーん、〇〇どこやったか知らなーい?」

彼はリツの部屋に取り残された。

彼はそわそわした。

彼が女子の部屋にお邪魔するのは、これが初めてだった。


彼の予想に反して、リツの部屋はかわいらしい。

数か所にぬいぐるみが飾ってある。

多くの家具にピンクや白が使われている。

カーペットが敷かれ、その脇から茶色く枯れた畳が顔を出している。

物は多いが、整理整頓され、部屋は小奇麗に保たれている。


白いワンピースを持って、リツが帰ってきた。

「おまたせ。これどう?」

それを着ることを想像して、彼は恥ずかしくなった。

「、、、」

「なんで?ダメ?」

彼はもじもじしていた。

「あの…それを着るのはちょっと恥ずかしいというか、似合わなそうというか」

リツは笑い出した。

「アッハッハ。そうなの?大丈夫、大丈夫。恥ずかしくないって。絶対似合うから。」

リツは彼に近づいてシャツの裾に触れた。

「シャツ脱がしてもいい?背中どうなってるか見せて。」

彼は断った。

「あ、いや、自分でぬぎます!」

シャツを不器用に脱いで、彼はリツに背中を向けた。

リツは彼の背中を観察した。

リツが触れると、羽は小さくびくっと揺れた。

「本物…あなたってやっぱり天使様なの?」


彼はやはり、何も覚えてない、わからない、と答えた。

リツは彼の背中を確認して、特別な仕立てが必要だと判断した。

仕立てはセツコ婆がやってくれた。

彼がそのワンピースを着てみると、ぴったりだった。

久々にまともな服を着て、彼は安堵した。


3


お昼時が迫っていた。

金取家の人々に昼食に誘われ、彼も共にすることにした。


食卓はやや雑然としていた。

壁沿いには背の高い棚やラックが置かれ、食器や調理器具、家電が所せましと並んでいる。お菓子の入ったレジ袋がいくつか、S字ハンガーを使って吊り下げられている。

中央にはテーブルと椅子が配置されている。

通路がやや狭い。

テーブルの上には調味料がたくさん置かれている。

配膳が始まると、テーブルの上はさらに手狭になっていく。


「いただきます。」

リツは彼に祖父母を紹介した。

「こっちがセツコばあちゃん、こっちがノボルじいちゃん。」

彼は立ち上がって、あいさつした。

「あの、さっきは服、ありがとうございました。ごはんまでいただいちゃって」

セツコ婆は言った。

「いいのよ。年寄りのあたしにゃ、あれくらいのことしかできないんだから。ちゃんと着れてよかった。しかしまあ、天使様ってのは本当にベッピンさんだねえ。」

リツは彼に訊いた。

「ところで天使ちゃん、どこか行くアテはあるの?」

(お、これはもしかして…?)


4


彼に生活のアテはない。

実家からの仕送りは途絶え、貯金も底を尽きている。

本来であれば働いて生活費を稼ぐ必要がある。

しかし彼は金取家に期待していた。

今日、彼は非常に愛らしい姿を手に入れた。

その容姿によって、彼は今着ている服を手に入れた。

生活のアテさえも獲得できるかもしれない。


彼は唾を飲み込んだ。

「あ、ありません。」

リツは続けた。

「何も覚えてないんでしょ?もしよかったら、思い出すまでこの家にいるのはどうかな?」

リツはノボル爺とセツコ婆の方を見た。

彼は念じた。

(頼む…!)

ノボル爺が反応した。

「そりゃ居候って事かい?どうだろうね、セッちゃん?」

セツコ婆が答えた。

「あたしゃいいと思うよ。行くアテがないなら、ほっとけないよ。」

「やった」

リツは隣に座っている彼に抱き着いた。

「よろしくね!天使ちゃん」


かくして彼は生活のアテを手に入れた。

それは彼が期待した以上に簡単だった。

彼は確信した。新しい人生は順風満帆だ。

彼は思わず笑みをこぼした。

2025/07/04

祝!書き直し元のストーリーにやっと追いつきました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ