【Night 4】おなか、すいた……。
「ああー……腹減った!」
周囲に誰もいないことをいいことに、ナギは大声で叫んだ。先程暗い話をしていた時と、やけに雰囲気が違っていた。
「オレたちどれくらい歩いてんだろうな……」
ヒカリは反応しない。疲労と空腹が重なって、おそらく気力が無くなっているのだろう。今こうして歩けるのでさえ、奇跡と言えた。
(くっそ……ヒカリも限界……オレもそろそろ……)
ナギが懸念したその時。
向こうに、明るい光が見えた。星じゃない。人工的な光だし、何より地平線付近にあったからだ。
そして、その光の隣にある、大きな看板。
「おい、あれって……」
ナギは息をのむ。
「コンビニじゃねぇか! おい、ヒカリ、メシ食えるぞ!」
ナギはヒカリに言ってみた。なるべく嬉しそうに。
するとやはり、ヒカリは食いついてきた。
「……ごはん、たべれるの」
「ああ」
すると、ヒカリは急に走り出した。獲物を見つけた獣のように鋭く、素早かった。
「はは、まだ元気じゃねぇか……」
ナギは呟いた。その後、あることに気がついた。
「あ、でも、そのメシの金って、オレが払うのか……」
店内は電車と同じように、物が散乱し、人がいると言えるような状況ではなかった。蛍光灯は割れ、ガラスが床に飛び散っていた。
「気をつけろよ」
ナギは珍しく、ヒカリに気を配った。ヒカリは小さく頷いた後、奥のおにぎりの棚に走っていった。
「やっぱ店員はいねぇ……あの影の仕業なのか?」
残されたナギは、店内に生存者がいないかどうか調べた。
……どうやらいないみたいだ。ナギはしばらく周りの様子を覗き込んだ後、自分の食料を取る(盗る)べく、商品棚へ歩いた。
(こんな状況だ。バレないだろ)
すると、足に何かにぶつかったような感覚がした。見ると、そこにはヒカリがいた。
「どうしたんだ?」
「おにぎり……」
「言わねぇとわからねぇよ。どうしたんだ?」
「ない……」
「は?」
ナギはヒカリに連れられ、そのままおにぎりの棚に移動した。
「マジで何が……」
ナギがそう言いかけた時、足下で、くしゃっ、と音がした。
「……え?」
見ると、コンビニのおにぎりの包装───さらによく見るとあの「3」と書かれた部分───が落ちていた。それも、足下にいくつも。
「……ぜんぶ、ない」
ヒカリは嘆くように言った。確かにおにぎりの商品棚には、同じようなゴミしかなかった。
「じゃあ他のモン食え」
ナギはそう言うと、おにぎりの向かい側にあったヨーグルトを手にとった。機械的な冷気が手に染みる。
「おにぎりじゃなくてもいいだろ? わがまま言うなよ……」
するとナギは、とあることに気がついた。
「……って、もしかして、ここ……だれか来た? あの影とは思えないし……」
少なくとも、こんな「いつ死ぬかわからない状況」じゃないと、店内、それも陳列棚の前で袋を開けて食べるなんてことはしないだろう。あの影たちが人間と同じ食べ物を食べるとは思えなかった。
つまり、誰かがここに来て、おにぎりを食べたということだ。しかも、量的に、複数人。
「くそ……あともう少し早く来ていれば……」
「ナギさん! あそこ!」
すると、ナギはヒカリに呼ばれた。
ヒカリが指さしていたのは、レジのカウンターの奥の扉だった。
「……あそこがどうかしたのか?」
「なかに、いるかも……!」
「いや……まあ確かにここに籠城、なんて考える奴もいると思うけどよ……第一、ここは密室とも言えるんだぜ? いるわけ───」
そこまで言ったところで、ナギの目にとあるものが入った。
ドアの下にある、おにぎりの袋──。
ナギは迷わずドアを開けた。
それと同時に、奥の方から、ガタッ、という音が聞こえた。
「誰かいるのか!?」
すると。
金属質の何かが土砂崩れのように崩れる音が聞こえた。
「!?」
見ると、バックヤードの奥の方で、商品が山のように積まれていた。
いや、崩れていた。
「何だよ……」
すると、その山から手が伸びた。
「!?」
「うーん、いたた……」
そこには……。




