AI×UFOキャッチャー×書き始め『運命の一手』
私:UFOキャッチャーを題材に短編を書こうと思います。最初の一文を考えてください。
AI:それは素敵なアイデアですね!こんな一文はいかがでしょうか?
「煌びやかなネオンの光に包まれたゲームセンターの片隅で、彼はユーフォーキャッチャーの前に立ち、運命の瞬間を待っていた。」
煌びやかなネオンの光に包まれたゲームセンターの片隅で、彼はユーフォーキャッチャーの前に立ち、運命の瞬間を待っていた。
残された所持金は数百円。最小限の金額でゲットするためには一度のミスも許されない。
狙うはジャガイモのスナック菓子が入っているコンテナ。菓子自体はどこでも買えるし、むしろスーパーやドラックストアで買った方が断然安いのだが、コンテナは俗に言う「プライズ品」というやつで市販されていない。
「ユーフォーキャッチャーでそんなものを獲るために1,000円もかけたの?1,000円あればそのお菓子もっとたくさん買えるよ?」なんて言う輩がいるが、とんでもない。
菓子のパッケージに限らず、フィギュアやぬいぐるみなど、ユーフォーキャッチャーに置かれている景品のほとんどが非売品だ。
しかも近年のユーフォーキャッチャーは新商品が出るのがとにかく早い。1週間後に同じ場所に行ったら景品が変わっていたなんてことはザラにあるし、人気のアニメグッズやSNSでバズった景品は瞬く間にゲットされていく。
景品が値下がりすることはないし、待っていてもくれない。欲しいと感じたら迷わずお金をかけるのが英断だと言えるだろう。
しかし、少しでも安く獲りたいと思うのもまた事実である。たかが1回100円とはいえ、塵も積もれば山となる。景品が出口から離れてしまっては獲得する可能性は低くなるし、どう頑張っても獲れない泥沼状態もまま存在するのだ。ゲームセンターで景品を乱獲するネット配信者はさも簡単そうに攻略する動画を挙げているが、誰しもが1日や2日練習すればできることではない。
平凡は平凡なりに、確実に獲得できるよう一手一手に集中するしかないのだ。
おっと、気が逸れてしまってはいけない。今は目の前にあるユーフォーキャッチャーに集中しなくては。
菓子のコンテナは長方形で厚みがあり、2本の突っ張り棒を橋渡しするように中央に置かれている。突っ張り棒によってコンテナは宙に浮いた状態になっているが、棒と棒の間にはコンテナの厚みと同じくらい、またはそれよりもやや広めの隙間が空いている。
なお、この景品の背後には同じものがディスプレイされているが、こちらを獲ってもゲットにはならない。ユーフォーキャッチャーのアームは2本爪タイプ。景品の動きを見た限りアームの強度はそこまで弱くない。
攻略方法としてはシンプルに、2本の突っ張り棒の間からコンテナを下に落とすのがいいだろう。
だがしかし、問題がある。
コンテナの本体部分と蓋の部分で大きさが違うのだ。ガラス越しのため正確なサイズ感は分かりづらいが、菓子が入れられている本体部分は縦15センチ、横30センチ。対して蓋の部分は縦も横も本体より2センチほど大きめに作られている。
そのためアームでバランスよくコンテナを左右に動かしていかないと、片方は突っ張り棒に乗った状態、もう片方は本体部分が落ちているものの蓋が棒に引っかかっている状態となり、獲るのがほぼ不可能になるのだ。アームの力だけではどうにもならない。先ほどプレイした時もこのような状態になり、初期位置に戻してもらった。
さて、どうするか。
今までかけた金額から見積もって天井、すなわち無条件にアームの強度が最強となる金額まではいっていないだろう。じわりじわりと動かすしかない。
100円目。
景品の中央よりもやや左よりにアームを動かし、アームを真っ直ぐ奥に移動させる。
これで景品がやや斜めの状態になる。ここまでは誰でもできる。
200円目。
先程と同じ動きを繰り返し、景品に角度をつける。爪の部分が突っ張り棒に当たらないよう、距離感に注意してアームを動かす。
一見何も変わっていないように見えるが、着実に動いている。
300円目。
角度がついてきたここからが問題だ。景品の奥ばかりを動かしていると手前側のバランスが悪くなり、先ほどの二の舞になってしまう。
今度は景品の手前側でアームを止め、やや右側に動かす。
400円目。
もう一度景品手前を右に動かす。
「縦」置きにされていた景品が「斜め」になり「横」置きに近くなってきた。
500円目。
もう一度アームを奥に動かし、景品を左側に移動させる。
これであとは手前に動かしたアームを景品中央に移動させ、上に持ち上げて勢いをつければ反動で落ちてくれるはずだ!
よし、今だ!
男は、財布を開いて2枚しかなかった100円玉を勢いよく投入した。
「パパぁ、ここに置いてあった景品無くなってるよぉ」
「え⁈」
崩した10枚の100円玉を握りつつ愛娘が指差す先を見てみると、確かにそこにあったはずのお菓子のコンテナが跡形もなく消え去っていた。
「あー、ハイエナされましたね。」
呆然とユーフォーキャッチャーの前で立ちすくむ私たちの後ろから、金髪の店員が話しかけてくる。
「ハイエナ?」
「たまにあるんですよ。もうちょっとで景品が獲れそうっていう状態になると割り込んできて獲っていってしまうんです。こういう行為をハイエナって呼んでて、僕たち店員も店内を巡回して取り締まろうとはしてるんですけど…。」
そう言われてみれば、ここに来てからずっと、少し離れたところで私たちを見ている男がいた気がする。子どもがいるならもっと周りを気にするべきかもしれないが、ここはゲームセンターだ。目立って行動しないだけで、ユーフォーキャッチャーで遊ぶ人を遠巻きに見ている人なんてそこかしこにいる。立って見ているだけの人を誰が怪しむだろうか。
それに、お金を崩しにユーフォーキャッチャーの前を離れた時間なんて3分にも満たない。まさかあの男は初めから、遊び慣れていない私たちに狙いを定めてこちらを見ていたのか…。
だが、今となっては確かめる方法がない。仮にその人が僕たちが獲りたかった景品を横取りしていったとしても、僕たちはどうすることもできない。その人が獲っていったという事実は変わりないし、第一、景品はみんなのものだ。
「パパ、私これ欲しい」
娘がユーフォーキャッチャーに手を当て、新たに置かれたお菓子のコンテナを物欲しそうに見つめている。
このゲームセンターに来てもう20分、かけた金額は1,700円。妻から貰った小遣いはもう底を尽きそうだった。
引くか、引かないか。運命の時が訪れていた。