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カイドの両親に紹介される。

それから四日くらい経った。


元倉庫の作業部屋は、とても快適だった。

ドリーも、元の部屋では遊ばせられないが、作業部屋では好きに遊ばせていた。

使用人の人たちともよく出会う場所なので、修理を頼まれたりして仲良くもなった。


罠の成果はとても良好。今日は、道に撒いたら足に刺さって抜けなくなる道具が完成した。

鋭い矢尻を四本集めて、どう転がしても棘が上を向くようにした。

矢尻は、返しがついているものを使って、刺さったら肉が簡単には抜けないようにしてある。


(サイズを小さくしたいし、粘土で固めたけど、きちんと金属で作りたい。もっと簡単な奴でもいいかもね)


これでガリレイ夫妻の馬車を追ってくる獣がいたら、足止めができる。

できれば全部鉄で作りたいけど。この領地に鉄の炉はあるんだろうか。

それに上、前からの攻撃にも備えなければならない。


夫妻が亡くなるとされているのは、森に通る一本道だ

横は森があるから、大型獣がすぐに出てこれないだろうが、いろんな場面が想定される。


(動くものを守るのは、罠じゃ無理かも)


大型獣って種類はなんだろう。村の時はギギ虫と特定されていたのに。

予言だけど分からないこともあるってことだろうか。


(そもそも、この地方は凶暴な大型獣はいないはず)


屋敷や本屋で調べても、出てきたとしても大型獣は、大体2mくらいの肉食獣だ。

しかもそれらは、基本的に馬車を狙ったりはしない。


(どういうことだろうか)


考えていると、バンと扉が開かれた。

カイドだった。


「リアナ! 両親が!! 帰ってくる!!!!」

「……え?」


肩で息をするカイドを見ながら止まってしまう。

カイドが持ってきた両親の手紙には、確かに今日の日程が書かれていた。

まだ帰ってきてはいないが、手紙が先で良かった。






素早く着替えて、玄関で出迎える。

流石に最初の印象がボロボロはまずいと仲良くなった使用人の子が手伝ってくれた。

なんでする必要があるのか分からないが、化粧もされる。

全ての準備が終わった頃、両親の帰宅を告げる門のベルが鳴った。

二人の前で紹介されて、自己紹介をする。


「初めまして。シャーリーよ。知らせを受けて、延期だと予定に支障が出るから、早めに帰ってきたの」


帰ってきた母親は、そういうと晴れやかな顔で穏やかに笑う。肌も白く白髪に近い金髪なので妖精のような雰囲気だ。

隣にいる人は父親で、現領主だろう。茶色の髪で、がっしりしていて恰幅がよかった。

父親はこちらに近づいてきて、手を差し出す。


「ドミニクです。あなたが予言者さんですか? ずいぶんと可愛らしい」


挨拶だと思って手を握ったが、小声で挨拶をされて、固まってしまった。

予言者じゃない。微塵もそんな能力はない。


「こんなところで、その話をしないでください」


カイドが両親から私を引きはがすと怒る。


「カイド様、怒る必要はないかと」


怒るんじゃなくて予言者を否定してほしい。

小声だったので、まわりの使用人には聞かれなかっただろうし、問題はない。


「はっは。厳しいな。では、あとでお茶でも飲んで話そう」


そう言いながら、二人は屋敷に入っていく。

あとで預言者ではないと訂正できるチャンスがありそうで、正直、ホッとしてしまった。




両親に呼ばれるのを待つ間、カイドの部屋で、カイドのシャツを補修する。

薄い布なので、できるだけ細い糸で縫ったら、裂け目が分からなくなった。


「すごい! なんでも直せるんだ」

「糸と調理はちょっと苦手ですけど、これは上手くいきました」


二人に見えないようにスカートを上げて、足に巻きつけてある革製のベルトポーチに、針と糸をしまう。


「リアナ、今、なにしたの?」


あ、やばい。見られていた。


「……この服だと物を入れる場所がないので」


私の言葉に、カイドは眉をひそめる。


「リアナは危機感がなさすぎる!」


頭を抱えはじめた。


「ど、どういうことです?」

「倉庫にいる時に、いろんな使用人が君に興味を持って訪ねてきているというのに、なぜ」

「え? 気のせいだと思いますよ」


修理をしたり、差し入れはもらったけど、色目を使われたことはなかったと思う。

なさすぎて、記憶もないくらいだ。

ただ、カイドが時々私を監視目的か見に来てはサボりの使用人を追い出していたのは覚えている。


「フランクリン。リアナが使いやすい服を用意して」

「かしこまりました」


ええ。勿体ない。変に使いにくい服が増えてもお金の無駄だ。


「改造を許してもらえたらポケットを自分でつけますが」

「坊ちゃん。好意だとしても、あまり強要すると嫌われますよ」


執事が後ろから小声で話す。

カイドが少し頭を抱えた。


「別に嫌うことはないけど、用意されても困るだけですよ」

「……ごめん。わかった。好きに改造していいよ」


カイドは遠慮がちに話す私に脱力していた。

とんでもない改造をすると思われている。


「ありがとうございます。人には分からないように改造するので、心配しないでください」


心配させないようににっこりと笑って見せる。

そんな私に、カイドと執事は全く信じられないという顔をした。

失礼な人達だ。


(でも、足にポーチをつけるのは、やっぱりダメみたい)


しぶしぶ立ち上がり、二人から見えない場所でポーチを足から外す。

夫妻にお茶に呼ばれたのは、そんな時だった。

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