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新たな予言と新しい仕事

夜。

寝巻に着替えた私は、ドリーを鳥かごから出してベッドに寝ころぶ。

ドリーは賢いので、教えた場所でしかフンはしない。だから多少は外に出しておけた。


改めて予言が載っている手帳を眺めた。

予言はたくさん載っていて、時系列はバラバラ。

私がうちの村の予言を見つけられたのは、単に運が良かっただけだ。

一度書きなおしたほうがいいとは思うが、他人の持ち物に対してそれはモラルがないとも思う。


(持ってること自体、モラルが欠けているけど)


もう一度、自分の村の予言を見る。


(……ん?)


予言の横に、小さな×がついていた。


(なんで×?)


印を見ながら考える。

これはもしかして、予言があっても助けないって判断した印?

じゃあ、印がついている予言の場所は、みんな人が亡くなるの?

血の気が引いた。


(他に、×がついているものは)


跳ねるように飛び起きて机に向かうと、紙を取り出して書き出す。

失礼だと思うけど、書き出さないと忘れてしまう。

ガリガリと紙に書く。

バツがついているものは、そんなに多くはない。


(……!)


ある一行に目がとまり、ピタと手が止まる。

手が少し震えていたが、立ち上がって手帳を持つ。

急いで部屋を後にした。







夜の廊下を走る。


(用事がある時は来てもいいと言われていたから大丈夫だよね?)


もう夜も遅いから、いるか分からないけど。

目的の部屋について、コンコンとドアを叩く。

執事がドアを開けた。


「リアナさん……」


執事は驚いた顔をしながら、上から下に視線を動かす。


「すみません。急用が!」

「あの、ですが、その恰好では」


困ったような顔の執事は、少し取り乱しているようだった。


(……恰好?)


「リアナ?」


部屋の奥から声が聞こえて、足音が近づいてくる。


「ぼ、坊ちゃん。いけません」


執事が慌ててドアを閉めた。

カイド様と言わなかったあたり、とても慌てているらしい。


(……恰好? でも家の中だし)


別に、外出着も寝巻も布は布だと思うけど、高貴な人の家では失礼だったのかもしれない。


(なるべく早くと思ったけど、出直すしかない)


踵をかえして歩き出す。

背後でガチャリと扉が開いた。

上着を持ったカイドが走ってくる。


「リアナ。若い女性がそんな恰好で屋敷内を歩いちゃダメだよ!」


寒くもないのに、肩に上着をかけられた。


「えっ、下着じゃないですよ」


この寝巻、薄くもないし長袖だし足首までスカートで隠れてますが。


「それにそんな服で男を訪ねたらいけない。誤解される」


ええ? 枕でも持って寝室に行ったらダメな気もするけど、ここは執務室なのに?


「もしかして……そんなものです?」

「そんなものです」

「それは……失礼しました」


平民すぎて気付かなかったけど、たぶん男を誘惑する女になっていた。


「出直してきます」

「いや、いいよ。手帳を持ってるってことは人払いも必要?」

「はい。でも、じゃあ二人きりってまずいですよね?」

「別にいいよ! リアナだしね!」


どういう意味。

色気がないって意味かも知れない。

ぼんやり考えながら、お言葉に甘えて部屋に入る。

執事が心配そうな顔をしてドアの向こうに消えていった。

大丈夫ですよ。心配するようなことはないですよとその姿を見送った。


「で、なにかあった?」


ソファに座りながら話される。

私は、手帳を開き、ページを開いたままカイド側に見せるように置いた。


「カイド様のご両親が殺害される予言が書いてありました」


指した位置には、カイドの両親が殺害される予言が書いてあった。

その予言の横には、×印がついている。

カイドは目を見開いた後に、手帳を手に取り、ジッと見つめる。


「この×印は、村の予言にもついてました。もしかしたら、また放置されるかもしれません」

「予言の日付は、二週間後か。ちょうど両親が休養から戻ってくる頃だ」

「大型の獣に食い殺されると書いてありますから、獣用の罠を仕込みましょう」


そういいながら、手帳に挟んであった地図を開く。

地図にはたくさんの印がついていた。


「挟んでいる地図に場所も示されています。何とかなるかと」


夫妻が殺されると予言されているのは、日中、領地内の森を通る一本道だ。

通らなければ予言が外れるとは思うが、実際はどう転ぶか分からない。


「休養を伸ばすよう連絡してみるよ」

「そうですね。でも、私の時も間に合う機関車が故障しました。上手くいかない可能性があります」

「色々考えたほうが良さそうだな」

「はい。お手伝いします」


この件を知っているのは二人だけなので、見過ごすことはできない。

できるかぎり恩人には手を貸そうと思った。


「リアナをどういう役職で雇おうと思っていたけど、罠師でいいか」


突然、カイドが決断するように口を開いた。


「罠師? 罠をかければいいんですよね。得意ですよ」

「指示するだけでいいからね! 山とか林とか危ないから」

「気にしなくていいのに」

「最低でも護衛はつけて……女の子なんだから」

「わかりました」

「必要な予算は申請してくれたら出すから」

「わかりました!!」


嬉しくなってソファから立ち上がる。

好きなことで予算が出るなんて最高!


「じゃあ、今日はこのへんで失礼します」

「もう帰るの?」

「お仕事を貰いましたからね! やることがたくさんあります!」

「あ、じゃあ部屋まで送るよ」

「大丈夫です! 元気なので」


ニコッと笑って、部屋から出ていく。

今度は絶対助けられると思うと、気が晴れやかになった。

昼間、本当にモヤモヤしたのだ。

知り合いの死体がゴロゴロしていることにも、助けられなかったことにも。


あまり親しい人が死んでなかったから傷はそれほどでもなかったけど、本当に嫌な気持ちだった。

国に見捨てられたことにも、憤りを覚えた。


(そうだ。×印の予言が本当に見捨てられる印だとしたら)


他の見捨てられる人たちも助けてしまおう。

大規模じゃなければ、防ぐことは案外簡単なのだから。

落とした人が誰かは知らないが、私たちを見捨てたのだから、不義理を悩む必要はない。

私が助けたら取りこぼしがなくなって、亡くなって泣く人がいなくなり世界が平和になる気がする。


(罠師のお仕事でお金が入ったら資金もできる。やっぱり夢って余裕があるから決まるのかも)


このままでは手帳がボロボロになってしまうから、もう一つ、×印を集めたノートでも作ったほうがいい。

死ぬと知っていて見捨てたとしたら、私は私を許せなくなるけど、助けたら一生自分のことを胸を張って生きられる。


うん。いいんじゃない?

人生の方針決まっちゃったな。


みんなが生き残って、作ったノートが死にぞこないの予言書になるようにがんばろ~。

リアナ・バーンズ 17才

実家以外の初めてのお仕事は、罠師。

夢は世界平和に決定しました。









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