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厄介な青年モニラと、洞窟と水路。

しばらくして、古城の取り壊しが始まった。


数日もすれば解体工事自体は終わるらしい。

カイドは両親に怒られたのか、アゼアムでするはずだった仕事を進めていた。

セウルも、なにかの用事で忙しそうだった。



私はというと、ドリーとモニラについて頭を悩ませていた。

日中の私室。男性の身体になったモニラがベッドに座っている。

私は椅子に腰かけて真面目な顔をした。


「なんで男の身体なの? 女の身体でいいんだけど」

「ドリーがなりたがるのよ。今までだって男の身体になってたでしょ」


確かに、ドリーが自分で動いている時はカイドやセウルの顔をよくしている。

オスだからやっぱり男の身体がいいのだろうか。

ドリー自身もモニラの男性体が気に入ったのか、あれから顔を変えるということはしない。


「ドリーが籠に鍵をかけてもいつの間にか外に出ているの、どうにかならない?」

「あれは私の意思じゃないから無理よ」

「じゃあ、夜中に起きるんだけど、なんか変なことしてない?」

「口にキスとかはしてないわよ。ドリーがしそうでも中に入って止めるし」

「口以外は?」


モニラは目をそらした。

どこに何をしてるんだ。まぁでも抱きついたら気付くとは思うから、大したことはしてないと信じたい。

こんなの変質者と同室みたいなものだ。本当に困った。

でも、ガリレイ家の名前で部屋を借りてるのに、余分に部屋を借りるなんて難しそう。


しかも、鳥はけっこう繊細らしいから酷いところには置けないし。


(カイド様に頼めば何とかしてくれそうだけど……)


でも、なんか、事情を話してはいけない予感がする。


「好きとかよく分からないし、付き合う気はないから、他当たってほしいんだけど」

「私もそうしたいけど、これあの鳥のせいだから」

「モニラはどう思ってるの? この状態」

「私が成仏できないのは、運命の恋をしていないせいだから、これで良いと思ってる」

「運命は……違うんじゃないかな」


性別の対象がまず違う気がするけど。

まぁ、モニラが生前どっちの性別が好きかどうかなんて知らないからなぁ。

「だって、あなたが私を助けてくれて、鳥が私の血でできた宝石を食べたんだから、運命じゃない?」

「えっ、あの石って血なの?!」

「詳しくは違うみたいだけど、血を吸わせたか加工した石みたいよ」


じゃあ、モニラをこの状況にしてるのって、どう考えても私のせいか。

石を取り出したのも、石を持ってきたのも、石を適当に置いて食べられたのも私の過失だ。


「運命じゃないと思うし……好きなら、私が寝てる間に触るのやめてほしいんだけど。起きるし」

「起きてる間ならいいの? 成仏できないし」


ええ。そんなこと言われても困る。

でもカイドとセウルがいる時はなんかダメな気がする。


「こう……どこまでが成仏の範囲? 付き合ってからする範囲は困るし……」

「わかんない。だって、私一回結婚して戻ってきちゃったけど、やることはやった後だし」


ええ、じゃあそこまでやってもダメじゃ、私でもダメかもでは。

人助けだとしても、そういうのは関係ないと思うしなぁ。


「とりあえず、普通に人として仲良くしようよ。恋愛とは限らないわけだし」

「わかった。じゃあデートしよ」

「デート」


まぁ、友達とでも遊ぶくらいするからいいか……。


「じゃあ、街まで私は馬で行くけど、モニラは鳥になって飛んでく?」

「私もカイドみたいにする!」

「最近馬に乗った人の前に乗りたくないよ!」


っていうか見られてたのか。

幽霊ならどこでも付いて来られるもんね。


「馬は得意だったので問題ないです。あと行きたい場所があるから、街じゃなくてそっちに行こ」


押し切られて、しぶしぶ馬を借りて二人でモニラの行きたい場所に行く。

別に乗り心地がそんなに悪くなかったので、なんか負けた気持ちになった。


モニラに連れてこられた場所は、古城の近くだった。

古城があるあたりでは、解体が進んでいた。

崖とは反対側の、少し下の位置から、その様子を見る。


「モニラの像、とっておけば良かったね。よくできてたのに」

「誰も覚えてないのに残ってる方が嫌よ。私のことはあなたが覚えていてくれるでしょ」


こちらを見ているモニラの笑顔は男性のはずなのに、男装した女性のように綺麗だった。


「その体は、本当に男性なの?」

「あ、ついてるかって話? ついてるし、ちゃんと反応するわよ。見る?」

「見ないよ!」


なにを言ってるんだ。

でも、反応するってどういうことなんだろう。異性の身体の仕組みの話なんだろうけど。


「これからどこ行くの?」

「ちょっと待って、この辺なんだけど」


馬を木に繋いで周辺を見る。


「あ、ここだ」


森の中のツタが生い茂るあたりで、モニラはツタを横に寄せる。

1.5mくらいの洞窟があった。


「うわぁ、洞窟だ!」

「虫とか蝙蝠がいるからきれいじゃないけど、大丈夫?」

「こういうの好き!」

「なら良かった。入ろう。私のお金が残ってるの」


中に入ると、薄暗いがツタの間から光が入っていて中がよく見えた。


「蝙蝠が減ってるわね。この前も来たせいかしら」

「この前来たのに、なんでお金持ってこなかったの?」

「鳥の姿じゃ持って帰れなかったの」


そう言いながら少し奥に行くと、行き止まりの道と、横に繋がってる水路があった。

奥まっている場所は高くなっていて、2mくらい高さがあって、楽だった。


「この水路がお屋敷の仕掛けを使うのに利用されていたの」

「表からじゃ、水路があることすらわかんないね」

「そうね。分からないようにしてあるから、城を壊したとしても気付かないと思うわ」


そう言いながら、行き止まりの場所にある石をいくつか掘るように移動させる。

石が詰まっていた穴の奥に、金貨つまった袋が隠されていた。


その下から、石でできた箱が出てきた。

中には沢山の宝石が入っている。


「うん。無事みたいね。これはリアナのバッグに入れておいて。邪魔だから」


両手より多い量の宝石を預けられて、ビックリしながらしまう。


「盗まれたら怖いね」

「まぁ、死人に宝石があってもねって話だけど、あって良かったわね」


そう言いながら金貨を服の中にしまう。


「死ぬ前に隠しておいたけど、200年くらい残ってるもんね」

「えっ、亡くなって200年くらい経ってるの?」

「そうよ。もう少し経ってるんじゃないかしら。よく覚えてないけど」


200年前の幽霊と話せるなんて貴重だ。

それに、水路を見られたのも面白い。

水路が崖崩落に関係してるとかないのかな?


「水路見ていきたいけど、いい?」

「いいわよ。でも滑るから気をつけてね」


水路は洞窟のようになっているので、湿っている。


(これじゃあ、足首まであるスカートが濡れる)


スカートをパンツの裾にいれる。


「リアナ、あなたってば足を丸出しにして! 恥じらいってものがないの?!」

「別に、見てるのモニラだけだし。それにそんな短くないよ」

「身体が男なのに異性として意識されてない!」


騒ぐモニラを置いて、水路を歩く。

水路と言うか洞窟のようだった。硬い岩盤で覆われていて、自然にそうなった感じだった。

入り口は明かりが少し入っていてまわりが見えていたのに、今は何も見えない。


「あっ」


足元がつるりと滑る。


「危ない」


後ろからモニラに抱きかかえられる。


「リアナには見えないでしょ。もう帰りましょ」

「……うん」


なんか、この前から接触が多いせいか意識してきちゃうな~……。

少しだけ照れながら離れて、外に出る。

洞窟の中は涼しいはずなのに、暑くなっていた。


「モニラって、ここの地形とかって大体わかってる?」


馬に戻りながら話す。


「そうね。長い時間いたからわかるわよ」

「じゃあ、家に帰って水路の地図書きたいんだけど、教えてくれない?」

「ん、いいわよ」


ニコッと笑いながら馬に乗せてくれる。

口調が女言葉だから大丈夫なとこあるけど、気持ち的になんか危ないな……と思った。


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