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古城で誓う未来

朝起きると、誰かに抱きしめられていた。


(……?)


見上げると、眠っているカイドの顔があった。


「わぁ~~~~~~~!!!!!!!!!」


思わず叫ぶ。

ドアの外からドタドタと音がして、ドアが開いた。


「リアナ!!!!! 大丈夫?!」


カイドだった。

そして、こちらを見て固まる。


「わぁ~~~~~~~~!!!!」


真っ赤になってカイドが叫ぶ。

抱きついていた方のカイドの顔が、モニョモニョと変わった。

そして、セウルの顔に変わる。


「これもこれで気まずい!!!!!」

「なんだ。なにが起きた」


セウルまでやってくる。なぜタイミングよくやってくるの?!

そして、そのまま固まった。


「ドリー!!!! 鳥に戻って。いつのまに人間になってんの!!!!」


羞恥心にそのまま叫ぶ。

ドリーは鳥になろうとはしないまま、抱きついていた。


「どっかに棒がなかったか!!!」

「剣でいいなら切るが」


青くなって怒りだすカイドと、剣を抜くセウル。

こんなことで私の鳥が殺されるのは嫌だ!


「やめてください! 私の鳥なんです。不敬なのは申し訳ないですけど!」

「不敬って問題じゃないよ」

「とんだ変態の鳥だ。同室にすべきではなかった」


今にも殺しそうな勢いだった。


「あら、おはよ~~~~~お揃いでどうしたの?」


窓から、モニラが入ってくる。

そして、私の状況を見ると、あらあらまぁまぁという感じで笑った。


「そういえば、昨日戻ってから、鳥かごに入れるのを忘れてたわ」

「元に戻らないから助けて~」


情けなくも助けを求める。


モニラは「はいは~い」と言いながら、ドリーの中に入っていった。

ドリーの姿が、モニラの姿に変わっていく。

なんとなく、カイドとセウルの態度が軟化した。


「……い」


モニラが私が抱きしめたまま、一言なにかを言った。


「何?」

「いえ……ちょっと」


そういうと、抱きしめていた手をパッと開いた。


「なんか、危険な気分になったわ」


そういうと、モニラはベッドから降りていく。


(……ああ、惚れてるとかなんとか。なんか申し訳ないことしたな)


「さっきは鳥に戻らなかったけど、どうすればいいんだろう」

「抱きついてなきゃ大丈夫じゃない? たぶん興奮してるのよ」

「ドリー、鳥に戻ってくれない?」


お願いをすると、モニラの身体が溶けて、鳥になる。


「あ、私入りでも鳥になれるんだ。じゃあ私もなんにでもなれそう」

「そうね。そこの男達に似てるのは気に喰わないから、私似の美男子とか、タコの化物とかになる?」


ウキウキとしているモニラに反して、私は絶望的な気持ちだった。

カイドとセウルの機嫌が悪くなる。


もう、なんなんだ。まだご飯も食べてないのに。

毎朝タコとか美男子がいるのも嫌だし、お腹が減るのは一番つらい。


「鳥でいい~~~~~……あとお腹減った~~~~……」


早くこの騒動が収まってほしい~と思いながら、私は嘆いた。





朝食を食べた後、カイドの馬に乗せられて、セウルと共に外に出かける。

行先は古城だ。

誰にも聞かれない場所というのが、そこしかなかったからだ。


古城の中に入ると、相変わらず静かだった。

外から入れないように鍵をかける。

振りかえると、モニラの像が目に入った。


「あれ?」


もう台座が元に戻っていた。


「台座が元に戻ってます」

「花の像が回して止めるようになってたから、外すと元に戻るのかな」


台座を見ながら話すと、横からカイドが顔を出す。


「仕掛けが水のようだったから、その可能性はあるな」

「じゃあ、この下に水脈があるかもしれないってことですね」


カイドの反対側からセウルが顔を出したので、同意しながら仕掛けを調べた。

なかなか興味深いな……。


「まぁ。とりあえず予言の話をしようか」


セウルに声をかけられる。

そうだ。そのために来たんだった。


「そうですね。こちらを見ていただけますか?」


カバンから予言書を取り出し、セウルに渡す。


「私は予言者ではなく、この手帳を拾っただけです」

「どのような者がこれを?」

「上質な白いマントをかぶっていたので顔までは。マントのふちは金細工で処理されてました」

「……なるほど」


セウルがペラペラとページをめくる。

私はそれを覗きこむと、指で見せたいページをめくった。


「それで、このページを見ていただけますか」


カイドの両親の予言のページを開く。


「ここに×印が付いているでしょう。これはおそらく、予言があっても無視される予言です」

「ふむ……」

「これはカイド様のご両親の予言ですが。予言がご両親に伝えられることはありませんでした」


セウルがなるほどと言いながら、手帳をめくる。

そして手帳を閉じると、興味がなくなったかのように、こちらに返してきた。


「で、セウル。なんでお前は予言のことを知っているんだ?」

「皇族は知ろうと思えば、なんでも知ることはできるからな」


カイドの質問に、セウルはなんでもないことのように答えた。

だけど、それは本当だろうか。

手帳を拾った時に式典での事故を防いだという予言のニュースを知った。もし皇族が知っていたのなら、そもそも式典はしないと思う。


「皇族だから、予言を変えた私の命が危ないとおっしゃるんですか?」

「リアナの命が?」


カイドがこちらを見る。

セウルは言いにくそうに眼をそらした。


「昨日、そう言ってましたよね」

「ああ。この×印は、本来変えてはいけない予言だからな」


なぜ変えてはいけない予言をセウルが知っているのだろう。


「リアナ嬢は親切で助けただろうが、そんなことは関係がない」

「そうですよね。だからカイド様のご両親が亡くなることを知っていても言わなかった」


あの日、私の村の焼け跡で予言のことを口にしたのも、カマをかけたのではないだろうか。

そして、親切心かなにかで、昨日、私に助言をしてくれたのだ。


「……そうだな」


間をおいて答えるセウルの言葉に、カイドはなにも言わなかった。

二人は無表情でもなく、気まずそうに少し下を向いているので真意は測りかねた。


「私は、やめませんよ」


結論をきっぱりと伝える。


「それをして、リアナ嬢に何の得があるんだ!」


セウルが声を荒げる。

だけど、これは昨日考えて、考え抜いた末に出た結論だった。


「なにもありませんよ。損得じゃなくて、自分がやりたいと思ったからやりたいだけです」

「それで命を落とすのは、馬鹿らしいだろう」

「私がこの予言をすべて助けられたら、おそらく総合的に助かる人間は私の命の比ではないでしょう」


自分が助かるために見捨てる人生を選べば、私は自分の胸を張って生きられない。

たぶん、私は自分のことを誇りに思って生きていきたいのだ。


「変えてはいけない予言なんて、誰が決めたんですか? 必要ないなら予言は降りてきません」


予言を降ろすのが神だとして、平等に情報は与えられている。


「選別しているのが人間だとして、それはその人間の意思では?」


私が予言を変えて殺されるというのなら、相手の不利益だから殺されるのだ。

それは、人間の意思ではないのか。


「それにやめろといっても、もう手遅れです。だって村人もカイド様のご両親も助けてしまった」


物事は複雑に絡み合っている。完璧な形のものを削ったら、もう元には戻らない。

削った物を補おうとしても、歪になったものは、どこかで影響が起きる。

まるで、歯車のように。

元に戻そうと思うなら、すべてなかったことにすることが一番近い。


「それなら、全員助けてみて、天啓に任せた方がまだ人としては正しいと思いませんか」


ゆっくりとセウルとカイドを見る。

カイドのご両親も私達の家族も、助けてはいけない存在ならば、もう殺されているはずだ。

殺されていないのだから、なにかしらの理由がある。

時間差で殺されるというのなら、この活動を続けて相手を誘い出したほうがマシだ。


こちらを見つめるセウルの表情は、眉を寄せて辛そうだった。

だから、安心させようと思い近づく。


「私は、セウル様も助けますよ」


寄せていた眉が少しだけ戻り、目を見開いていた。


「僕は、リアナ嬢に助けてもらいたくない!」


セウルが叫ぶ。


「どう、いうこと……? リアナ」

「手帳の×印の所に、セウル様が死ぬ予言も載っていました」


状況を読みこめていないカイドに簡単に伝える。

今すぐというわけではない。近くもない未来のことだけど、セウルに関する予言があった。


「だから、×印の予言のことも知っていたんですね」


私の言葉に、セウルは何も言わなかった。

誰かが教えたのか、それとも偶然かわからないが、セウルは自身の予言を知ってしまった。

だからこそ、予言のことに敏感だったのだ。


「セウル様。あなたは、予言に従って死ぬつもりなんですか?」

「……それが運命だというのなら、従うしかないだろう」


諦めが早すぎる。

人に決められて、そうですかと受け入れるの?


「私は、運命なんて信じていませんし、セウル様は生きるべきだと思います」


握手をしようと手を差し出す。

人生に諦めるより、これからも人生があると思って生きた方がずっといい。


「私の手をとってください。一緒に足掻いてみませんか」


セウルは、私の手をジッと見ると、遠慮がちに下から私の手を自分の手に乗せた。


(あれ、握手のつもりだったんだけど)


セウルの顔が手に近づき、そのまま手の甲にキスをする。


「な、え?? 」


想定外すぎて止まってしまう。


「わかった。では、僕もリアナ嬢が止めないということであれば、手助けしよう」


セウルの言葉に、皇族が?と思う。

固まっていると、もう片方の手をカイドがとった。


「俺は、リアナがやりたいなら止めないし、守るよ」


そう言いながら、カイドも手の甲に口づける。


「あの、……ありがたいのですが、私はご迷惑をかけたくないので遠慮したいんですけど」


二人とも死んだら困る身分なのに。

正直、殺される恐れがあるのなら、誰かと一緒にいるのは危険だ。

カイドには神殺しみたいなのもさせちゃったし、どうなるか分からない。


「どう考えたってリアナが死ぬ方が嫌だから」


カイドの言葉に、言ったところで聞かないだろうなと思う。

私が止めないというのを尊重してもらったんだから、相手も尊重しないと。


「ありがとうございます」


ただ、それしか言えなかった。











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