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暗殺者  作者: 藍葉
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第8話 残りの二人

~9月26日午後19時、SACS事務所~


あれから私たち二人はすぐに事務所に向かい稲葉先輩に手紙を見せた。ネルもいることから全く冗談ではない空気を察したのか、稲葉先輩も真剣な目で手紙を読んでいた。

内容はこうだ。


~我々は、SACSと対をなす者。先日の薬の件について我々も少々手を加えたい。ついては、我々の反逆の光となろう天使が羽ばたきて星が消え去ろうという刻。双竜が忌み子を率いて、太陽の集まりし宮廷にて黒き光で照らして見せよう。これは脅しではない。我々IBRからの宣戦布告だ。暗き朝は、我々が獲得する~


ということらしい。何を言っているのかあまり私も理解ができていないのだが……SACSについての記述というだけで事の重大さは理解できる。私みたいな実力で解決へ向かう人間は基本的にこのような謎解き系には一切関与しない。基本そういうのは拓斗か稲葉先輩がやってくれるので、私や理恵は計画通りのことを実行することが求められていた。まあ、拓斗に関しては自分で考えて自分で解決するといったことを生業としているため、私たちの方に関与するといったことは少ないのだが…


「稲葉、まだ考えてるの?あんたにしては珍しいわね」


「まぁな……おおよそテロの類を引き起こすつもりなんだろうが、場所を特定することが難しいな。後は日程か…正直、どこをとっても難しい問題だな。まぁ、これだけでは特定するのは難しいだろうな。IBRという組織だ。能力犯罪を起こす集団なんだろうが……」


稲葉先輩は困った表情を浮かべながら


「分かることが少ない、前の薬の件もそうだが、少し考える時間が必要だな」


と言った。

ネルも困ったように微笑を浮かべると


「あんたで時間がかかるなら待つしかないわね」


と言った。

稲葉先輩が考え込むというのは珍しい、普段はもっとすぐに答えを出すというのに。それだけの事案であるという事はすぐに分かる。

異能犯罪を取り締まる私達としては、その根源であるかもしれない組織が相手からわざわざ名乗り出てくれたのだ。こちらとしても、慎重にならざるを得ない。


「とりあえず私も親父にこの事話してくるから、進展あったらよろしく」


「おうよ、迷惑かけるな」


「アンタと私の仲でしょうが」


と言い捨ててネルはその場を後にする。ネルと先輩がどんな関係か、それは私をに拾ってくれた時に一緒にいたのだから分かっているつもりだ。だが、言葉で信頼しているからこそ、少し引っ掛かりを覚えてしまう……


「稲葉のやつに、何もされてない?」


この発言をした時のネルはふざけている様子ではなかった。何か違和感でも覚えているのだろうか?まぁ……知る必要も無いため特に深堀をすることは無いのだが。

……まぁ、深堀しようとしたところで答えてくれないだろうし、ネルちゃんも稲葉先輩もそれなりに信頼している。あの二人には、あの二人の関係というものがあるのだろう。


「さて、キルも休日にわざわざ悪かったな。とりあえず、明日は今日のスーパーで理恵と見回りしててくれ」


「了解です、先輩は……?」


「この文書の解読に協力してくれそうな人物に話を通しに行く。早けりゃすぐに答えを出せるんじゃねーかって考えてるよ」


「じゃあここには拓斗が…?」


「いや、今晩あの二人が帰ってくる。あいつらに任せるつもりだ」


「あの二人……」


そう、このSACSに在籍する最後の二人……新谷麗華(アラヤ レイカ)成城真翔(ナリシロ マナト)である。二人は国外で様々な活動をしている。SACSに所属しながら国外との交流を仕事としており、私たちと似たようなことを海外でしていると聞いたことがある。私はあの二人と直接訓練で戦ったことはない。しかし稲葉先輩曰く実力は私と同レベルらしい。


……並の能力者なら負けることはない私と同レベル……それが二人なのだ。SACSは国内で活動している中だと理恵は私より劣るし、拓斗は関わる機会が救いないために実力が見えにくい。そのうえさらに実力が見えていない麗華と真翔……

なんか、私この組織のことを知らなさすぎるのではないかと考えてしまう。まぁ、別にそれで不便に感じたことなどないから別に構わないのだが……


「とりあえずだ、お前もかえって早く休め、明日からはいつ休みが取れるかなんてわかったもんじゃないぞ」


「あぁ、そうでしたね。稲葉先輩も無理しないでくださいね」


「お気遣いどうも、んじゃぁな」


そういってはすぐに稲葉先輩は事務所を去っていった。恐らくは明日会いに行く人物とやらに連絡を取りに行ったのだろう。

……忙しい人だ。素直にそう思った。そしてこの忙しさが明日からこの忙しさが私にも降り注ぐとなると思わずため息が出てしまう。

が、そうも言ってられない。私は私の正義のために、明日からに備えて今日は家に帰るのだった……


~9月27日午前7時半、SACS事務所~


「あっ……どうも、お久しぶりです」


「久しぶりねキル」


「あぁキルか、久しぶりだな」


事務所につくと早速昨日話していた二人がいた。私は昨晩、事務所で8時に理恵と集合したのち巡回を始めるということだったので早めに出勤したのだが……この二人もかなり早いらしい。


「早いですね、二人とも」


「……時差がなぁ……」


「いろんな国で活動してるとな……バグっちゃうのよね」


「……あぁ、そういう」


なるほど、確かに感覚としてはおかしくなりやすいのかもしれない。その辺なれるものではないのかと考えてしまうが……まぁ、慣れていたら深夜に起きることもないだろう。悲しき世界である。


「こうやって話すのは初めてか」


「え?あ、あぁ……そうですね」


「辛い思いをしたと聞いてるわ、災難だったわね」


「……ありがとうございます」


こんな人達だとは思ってなかった。私ぐらい強い2人組という事で、少々身構えていたのだが……意外と優しいのかもしれない。

と、入ったそこで私はふと気になったことを聞いてみた。


「あの……お二人はどんな能力を持っているんですか?」


二人の能力については聞いたことがない。そのため、気になってはいた。


「私はね〜、電気を扱う能力だね!真翔はね〜」


「勝手に言おうとするんじゃねぇ……ったく、透過だ。と言っても、対象は意志を持ってないものに限るがな」


説明下手すぎないですか真翔さん??

なんて言葉にできるはずもなく、うんうんと頷いておいた。


「要は、壁とかは透けるけど、生き物を透明にしたりすることはできないってことよ。範囲自体は広くできるけど維持が大変だからって真翔は最小限の範囲しかしてくれないケチな男よ。キルちゃんはこんな男と付き合っちゃだめよ?」


はぁ?という真翔と口喧嘩が始まりそうになるが、まぁいつものことなんだろうなぁと私は二人を見て笑っていた。


いや待って?やっぱり待って??


なんでSACSの人たち、私の恋愛についてこんなに言ってくるの……??

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