乾き②
右目どころか左側の目もおかしい。視覚を失い、神威は壁にぶつかる。
俺はその隙に窓から飛び降りた。
闇夜に紛れながらコンクリートを駆け抜ける。
神威「視覚を奪う能力か!ふざけやがって。完全な吸血鬼じゃないか。ヴァンパイアを狙う狩人が僕だけな訳はないだろう」
暗い街中を走りながら息がゼエゼエと切れた。
俺は周りに人がいないかびくつきながら歩いた。
満月が辺りを照らしていた。
神威は電話をかけた。
電話の相手は昴というコレクターだった。
昴「やあ、神威、噂の吸血鬼兄弟は始末できたかい」
神威「無理だったよ、妹はそうそうに逃げ出した。兄は、自覚は無いが凶悪な特殊能力を持ちあわせている。視覚を奪うえぐい力だね」
昴「君が失敗するなんて珍しい。よっぽど浅ましき吸血鬼だったんだね。僕には見えるよ、吸血鬼がバラバラに刻まれてホルマリン漬けにされる夢のような世界が。良いことを教えてあげるよ神威」
神威「なんだい?」
昴「今ね、拷問中なんだ。吸血鬼の女の子なんだよ。可愛くてとても素敵なのさ」
悪趣味だな。
叫び声が鳴り響く。
昴「うふふ、いい断末魔だろう!まるで小鳥みたいだ。爪をちょっとずつ剥がして行くのさ」
昴は電話を切り、拷問道具を握りしめた。
ギンカという吸血鬼はガムテープで口をぐるぐる巻きにされてロープで身動きできない。
さあ、楽しい時間の始まりだよ。
部屋には鍵を掛けてある。救いなんてあると思うなよ。
ギンカは泣きながら助けを乞う。
扉が吹き飛んだ。
なんだ?何が起きた。
リライトと呼ばれる黒髪の吸血鬼が立っていた。
リライトは般若の仮面をつけていた。肌は兎に角青白い。