はじまり
血の臭いがする。
俺は仕事を終えて帰宅したところだった。
仕事は力仕事で体の筋肉がくたくたに疲れていた。
マンションのエレベーターを使い、家のドアを開けた。鍵がかかってないということは妹が遊びに来てるということだろう。
血生臭い、異臭がした。
俺は嫌な予感がした。まさか強盗?駆け足になりながら俺は玄関を土足で突き進んだ。
死んでいた。
妹は目をぎらつかせて立ち尽くしていた。
妹の足下に見知らぬ死体。
「殺したのか?絵里香、本当におまえが殺したのか、違うよな」
俺は言葉を話ながらヨダレが垂れ流していた。
え?なんで
なんでこんな非常時に喉が乾くんだ。
絵里香「お兄ちゃん、無理だよ、抗えないよ」
何を言ってるんだ。
絵里香は死体の腕を引きちぎる。こんな惨いことが出来る子ではなかった。
引きちぎった腕から流れ落ちる赤い血液。
「やめろ」
喉ががらがらに乾き、体の細胞が沸騰するのを感じた。
絵里香は血を飲んだ。
俺は嗚咽しながら泣きじゃくった。
絵里香「私たち、吸血鬼になったんだよ」
合点がいった。異常に乾く喉、血に対するこの沸き上がる感覚。
絵里香「逃げよう、お兄ちゃん、逃げないと私たち殺される」
「殺される?誰に?」
絵里香は窓を開けた。ここはマンションの五階だ。飛び降りる気か?
絵里香「ヴァンパイアハンター、日本にたった5名、吸血鬼を殺害するプロがいる」
「ハンター、待て、頭がパニック状態だよ。絵里香、100歩譲っておまえが吸血鬼だとして、おまえが狙われるのはわかる。だけども俺は吸血鬼じゃない」
絵里香「ハンターは容赦ないよ。そんな戯れ言通用しない」
俺は台所に向かった。