1章 シュヴァン城 13
西の大国からもらった王妃をないがしろにしての乱行だから、教会からもバンバン叱られた。
西から大使も毎月来た。
「オストブルクで夜一番静かなのは? それは王のお渡りのない後宮」なんてなぞなぞが下々どころか西の国でまで流行ったとかで、エリーザベト王妃様は面目丸つぶれだって言うから。
もちろん国内の親戚連中からもガンガン責められた立ち場を無くした教育係のトアヴァッサーの老公はもう一気に老け込んで。
おれまでもうあにきの宮廷に顔出すなと厳しく締められた。それでも無視し倒して好き放題やって、今は寝台から起き上がれもしない。
ほんと早く死んで。
あにきが死んだら、おれは次の王だ。妃はまた西からもらって。親戚連中に頭を下げて手伝ってもらって、しょうもない代替わりで知らない顔ばかりの貴族共の顔色伺う情けない宮廷を回して行かなくちゃならなくなる。
……もう気安くできなくなるのかな。
父王がすぐに亡くなったのもまずかった。締め付けを失って、年若い身で国を預かる責任から逃げて、あにきは結婚後も取り巻き連中と遊び倒した。寵姫のドロテーアが諸悪の根源だったらしい。
それを繰り返さないために、おれは、学友たちとは引き離されるのかも知れない。
「なあノーレ、あにきがこんなことにならなけりゃ、みんなはおまえをおれの妃にする気だったんだぜ」
次男以下の王子は、適当な領地をもらって大公家を興す。
フランツの家のように。
妃はそこら辺の貴族からもらって。父王も辺境伯もそのつもりがあってのことだと思っていた。
だって、レオノーレはおれと1つ皿からものを食うことが許されているのだから。