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山紫水明  作者: 十ヶ原雪月
プロローグ
6/7

プロローグ 少女と雪斗と

雪斗のセリフが多いです

少女が宣言した日から数日後。



無事に少女の体力が回復し、雪斗から「そろそろこの世界について知る?」と問われ、それを了承したところ、「勉強会」と称した説明会が行われることになった。



どうやら少女以外にも数人参加するらしく、少しドキドキしながら、雪斗の案内のもと、机と椅子がきれいに並べられた部屋に入ると、そこには既に、2人、人がいた。



「雪斗、遅い!オレにだって用事があるんだから……って、それ誰?」

何故か鋭く睨みつけられて困惑するが、少女は、話しかけてきた人物をまじまじと見ることにした。

桃色の髪を持つ少年だ。目の色は、この前樹雪と露雪がこっそり食べさせてくれたパンケーキにのっていた蜂蜜の色と似ている。でも、少年の方が少し濃い気がする。琥珀、といっただろうか。そんな感じの色だ。



「恋雪兄さん、前に言ったでしょ。白夜さんと二人で保護してきた〜って。その子」

呆れ混じりの返答だ。



兄さん、ということは、雪斗の兄なのか。

なんだかかっこいい人だなぁ。

獅雪の大人の色気とは別のかっこよさを持つ少年は、ふぅん、と言ってから、再び少女を睨みつけた。



「雪斗はオレのだから」

「僕は恋雪兄さんのものになった記憶はないよ?……あ、この人は黒羽恋雪。君と大して年齢変わらないと思うから、呼び捨てでいいよ」



間を開けずに否定する雪斗に、少女は扱いが適当過ぎないか、と疑問に思ったが、この部屋にいるもう1人の人物に、不思議と目が行く、というより、気になってしょうがなくなって思わず視線を向ける。



全体的に黒い。肌は病的に白いが、髪の毛の色と服、そして、顔全体を覆い隠すように付けられた狐の面までもが、黒かった。



「ん?あぁ、気になる?」

勢いよく頷く。気になる所ではない。気になりすぎて、横でキーキー言ってる少年こと恋雪が何を言ってるのか聞こえない。



「霊亀。こっち来て」



れいき。不思議な名前だ。

じぃ、と見ていると、瞬きの間に、少女の目の前に来ていた霊亀。



「……?!」



真っ黒な存在が、目の前に居る。

目を見開いて驚くと、霊亀は恭しく頭を下げた。



「あはは、ごめんね。霊亀はこういう奴なんだ。霊亀、この子は……って、説明しなくても分けるか」



霊亀は頷く。

ところで、霊亀の性別はどっちなのだろうか。髪の毛は長いけれど、だからといって女の人ではないだろう。男か、と言われたら、違うかもしれないけれど。



ぱんぱん。乾いた音が響く。どうやら雪斗が手を叩いたようだ。



「さて、気を取り直して。勉強会を始めようか」



その言葉を聞いたと同時に、二人は好きな椅子に__否、定位置なのだろう。恋雪は部屋の左前に立つ雪斗の1番近くに。霊亀はその反対側に座った。

机は三列に並んでいるので、間の一列だけ誰も座らない構図になっている。ちなみに、椅子は机ひとつにつき三席並んでいる。



「全員座ったね?じゃあ、恋雪兄さんと霊亀は何回も聞いたかもしれないけど、この世界について説明するね」



にこり。雪斗が笑った。



「今から約80年前。世界各地で、異能力と呼ばれる人々が現れた」

「最初は疎まれた存在だったが、次第に、「もしかしたら自分も持てるかもしれない」、と思うようになった」

「なぜなら、元々異能力を持っていない人までも、それを発現させたから」

「期待していた。自分も、普通じゃない存在になれるんだとね」

「でも。10年経っても20年経っても30年経っても。異能力は、極小数の人間にしか宿らなかった」

「世界各国のお偉いさんたちは期待していた未来__全人類が異能力を持てる未来が訪れなさそうで、危惧したんだ」

「何を、というと色々あるけど、1番怖かったのは、異能力を持った人々の叛逆さ」

「軍事兵器を持ってしても、彼らに勝てる自身はなかったからね」

「異能力を持つ人っていうのは、どれだけ弱くても、戦闘向きな異能力ではなくとも、軍事的に意味があるのさ」

「何故なら、土壇場でも戦況をひっくり返せる可能性があるから」

「だから、叛逆させない為に、「保護」という名目のもと、異能力者達を監禁して、そして秘密裏に彼らをサンプルとして研究し始めたのさ」



衝撃的な言葉ばかりが雪斗のくちから放たれる。



「でもね、これも、しょうがないというか……。共感は出来ないけど、人のためだったんだよ」



人の為。その為なら犠牲が出てもいい、とでも言いたいのか、世界各国のお偉いさんたちというのは。



「これから先異能力者達に叛逆はされたくない。でも、それよりも、異能力者達を差別するような世界が続いて欲しくないと願っていたのさ」



……つまり、どういうことだろう。

世界各国のお偉いさんたちは、叛逆されたくなくて、異能力者達を研究し始めたのではないのだろうか?

混乱していると、雪斗は笑った。



「ふふ、少し難しいかな。つまりね、全人類が平等でいられる世界を目指したかったのさ」



その方が平和でいられるだろう?その問いかけに、少女は何も言えなくなった。



誰か数人が異能力を持ち、差別されるよりも、全人類等しく、能力の種類は別々でも、それを持っているという世界の方が、確かに合理的なような気もする。



(でも、別の問題が生まれる気がするのは気の所為?)



全人類等しく異能力を持つということは、それが普通になるということだ。

普通になった事象からは、差別が生まれる。その差別が原因で、争いが起きる。

結局行き着くのは戦争なのでは。少女は考える。



「君は今、別の問題が生まれるって思った?」

「え?あ、はいっ!」

「正直でよろしい。うん、別の問題は、間違いなく生まれるだろうね。世界的な戦争を2回も起こしても、戦争が終わらないのと同じさ」



世界的な戦争?疑問符を浮かべると、恋雪が馬鹿にしたような声を出した。



「お前何も知らないの?世界大戦だよ。今のところ2回も行われてる、大規模な戦争」



何も知らないというか、記憶にない。

記憶があったとしても、私は知っていただろうか。



恋雪は続けて話す。



「第二次世界大戦終了後、突如として異能力者が現れたんだよ」



ということは、その第二次世界大戦は約80年前に終わったのか。

妙に納得していると、雪斗は苦笑いをした。



「まあそうなんだけど、恋雪兄さん、少し黙ってて」



獅雪に対してはどこか尊敬の眼差しを向けていたはずの雪斗は、恋雪に対しては辛辣なのが微笑ましてくて、少女は笑みを浮かべた。

新キャラ:黒羽恋雪(くろばね こゆき)

霊亀(れいき)

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