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山紫水明  作者: 十ヶ原雪月
プロローグ
4/7

プロローグ 少女と双子と

「獅雪ぃ〜、雪斗ぉ〜、って、ありゃ?」

「2人とも居ないねぇ〜。って、ありゃ?」



部屋の奥の暗がりから、よく似た顔立ちをしている女性が2人現れ、少女は驚きのあまり固まった。

よく似ている__というよりは、瓜二つである。

ミルクティー色の髪をツインテールにしている女性と、下ろしていて、猫を連れている女性だ。薄い黄緑色の瞳を持っていて、全体的に色素が薄いように感じる。



「白夜が連れてきた女の子、起きたの?」

「起きたみたいだねぇ、おはよう〜」



なんだかゆるいなぁ。少女の身体にこもっていた力が抜けて、ふぅ、と息を吐く。



「おはようございます、ええと」

名前がわからないのでなんと呼べばいいのか分からず、悩んでいると、2人の女性は微笑んだ。



「おはよぉ、あたしは黒羽樹雪」

ツインテールの女性が名乗る。



「あたしは黒羽露雪。よろしくねぇ」

猫を連れている女性が名乗る。



「よろしくお願いします、樹雪さん、露雪さん」

黒羽、ということは、この2人は先程部屋を出て行った、獅雪と雪斗の姉か妹なのだろう。

少女がはにかみながら頭を下げると、露雪が連れていた猫が「にゃあ」と言って近付いてきた。

温かくてふわふわした生き物が膝の上で丸くなり、少女はどうすればいいのか分からず困惑して、行き場の無くなった手が右往左往する。



「ねこ、その子困らせないのぉ」

「ねこ、寝ちゃダメだよぉ」



ねこ、という名前なのだろうか。猫なのに?

更に困惑して、少女はただ、猫を見つめることにした。



三毛猫らしく、白地の毛と黒と茶色の毛が斑模様に生えている。

可愛いなぁ。現実逃避じみた感想を心の中で呟くと、横から手が伸びてきて、猫を抱き上げた。

驚いて見上げると、そこには、美しいひとがいた。



あの日、少女の中にある始まりの記憶にいる青年が、そこにいた。



「あ、白夜」

「白夜だぁ」



白夜と呼ばれた青年はにこりと微笑むことすらせず、樹雪と露雪に軽く会釈して、少女を見つめた。



深紅の瞳が少女を射抜く。真っ直ぐで熱が籠っていて、目を逸らしてしまったらいけないような瞳だ。



「…無事で、良かった」



目許と口許をほんの少しだけ緩め、呟くように言った白夜。



とくん、と、少女の胸が高鳴った。

少女は首を傾げる。胸が高鳴った理由がわからないから。心の中に生まれた、温かい感情の名前がわからないから。

その理由と、その感情の名前を少女が知るのは、少女に「巽八尋」という名前が付いた後の事である。



「白夜、名乗りなよ」

「そうだよ、白夜」

樹雪と露雪が、白夜を責めるように、けれど面白がるように言った。



何かを考えるような素振りをしてから、白夜はくちを開いた。



「明神白夜」

それだけを言って、白夜は露雪に猫を返し、部屋を出ていった。



(……名を名乗っただけ?)

口下手なのか、あの人?

その疑問は、樹雪と露雪の笑い声の中に消えていった。

今回は少し短めです。


新キャラ

黒羽樹雪(くろばねいつき)

黒羽露雪(くろばねろき)

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