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山紫水明  作者: 十ヶ原雪月
プロローグ
3/7

プロローグ 少女と兄弟

ふわふわ。ふわふわ。



意識が浮上しかけて、沈んで、また浮上する。



起きたいような、起きたくないような。このまま寝ていたいような、これ以上寝たくないような。そんな気分だ。



突然、眩しさが襲う。

なんだろう。少女はゆっくりと、瞼を開ける。



「あ、起きたかい?」

「オレが起こした……?」



落ち着いた、少しだけ低い声と、焦ったような低い声が、少女の耳に入ってきた。



顔を横に向けると、そこには、少女と同年代だとと思われる、切り揃えられていない黒髪と、赤と緑の瞳を持つ少年と、成人していると思われる、毒々しさを感じるラベンダー色の短髪と、緋色の瞳を持つ青年が居た。



声を出そうとするが、喉が涸れていて声が出ない。代わりに出たのは咳だった。



「っ、げほっげほ、」



少年が無言で優しく少女を起こし、青年は少女に水が入ったコップを渡した。

飲んでいいものなのか迷っていると、少年は微笑んで、口を開いた。



「毒なんて入ってないから、安心して飲んでいいよ」



毒。なんだか不穏な言葉だが、今は伝えることが出来ないが、別にそれが不安で躊躇っていた訳ではない。



ごくごく。少女が水を勢いよく飲むと、何故か少年は吹き出した。



「ぶふっ、あ、いや、ごめん、ふふ」

「雪斗、笑わない」

「ごめんなさい獅雪兄さん、ふふふっ」



雪斗と呼ばれた少年は笑い、獅雪兄さんと呼ばれた青年は笑う雪斗を宥める。

その光景が面白くて、少女は笑みをこぼした。



「ふふ、ごめんね。意地悪言ってしまって」



少女と同年代くらいの少年にも拘わらず、魅力的な笑みをしている雪斗に、少女は少しだけ顔を赤くした。



「初めまして。僕の名前は黒羽雪斗。こっちは黒羽獅雪。僕の兄さん。よろしくね」



右手を差し伸べられて、恐る恐る握ると、優しく握り返してくれた雪斗の瞳を見る。

どちらを見ればいいのか分からなくなるが、幻想的な色合いのせいで思わず見惚れる。



「ええと、君の名前は?」



困惑した雪斗の表情を見て、慌てて手を離してから、少女は名を名乗ろうとした。



「私は__あれ、名前、なんだっけ」



自分の名前が思い出せない。そのことに気付いて、記憶を掘り起こそうとするが、何もかもが抜け落ちていることに気付き、絶望感を覚える。



(なんで記憶が無いの?)



肝心なもの全てが抜け落ちている。その事実に、少女の瞳に涙が浮かんだ。



「え、ちょ、泣かないで……、?」



獅雪が泣き出した少女を宥めようとするが、それを雪斗が静止する。



「ねえ君。うちに所属しないかい?」



うち?その言葉が引っかかり首を傾げると、雪斗は頷き、獅雪は「信じられない」とでも言いたげな表情をしている。



「そう。〈政府反対組織〉の中でも、1番力のある組織_〈白夜のクロニクル〉に」

ああでも。雪斗は呟く。

「別に、今すぐ決めろなんて言わないよ。世界の現状やどうしてそうなったかとか、そういうの全部僕が君に教える。それを理解して、自分で考えてから、所属するかどうか決めて欲しい。……どうかな」



首を傾げる雪斗に、少女はなぜだか悪いことをしている気分になり、頷いてしまった。



「ありがとう!じゃあ、僕は色々とやることがあるから、ここで失礼するよ!」



にこにこ。

笑顔を浮かべて勢い良く立ち上がり部屋を出ていく雪斗を、少女はポカン、としながら見送る。

部屋の扉_どうやら引戸式らしいそれが閉じられたあと、獅雪の溜め息が耳に入り、少女は獅雪の方を向いた。



「ん……あぁ、すまない。キミに対してじゃなくて、雪斗に対してだから、安心しろ」



はにかむように笑う獅雪。よく顔を見ると、雪斗と似ていない顔立ちだな、と思う。



「雪斗と似てないだろ?」

「え?!あ、はい!」

「いっそのこと清々しい返事だな。まあ隠すことでもないし……。オレと雪斗は、血の繋がりがないからな」



驚きで固まる。



(血の繋がりがない?あんなにも仲良さそうな兄弟なのに)



自分の記憶にはないが、兄妹というのはああいうものだろうと感じた少女は、疑問符を浮かべる。

どこか虚空を見つめる獅雪に、少女は、かける言葉を見つけることは出来なかった。



「まあ、俺たちは兄弟だと思ってるからいいけどな。一番気にしてるのは、雪斗だから」



獅雪は立ち上がり、少女の頭を撫でる。



「色々難しいよな、お互い」



去っていく獅雪の背中を見つめる少女。

獅雪が扉を開けて出ていった後、少女は呟いた。



「あれが、大人……」

新キャラ

黒羽獅雪(くろばね しき)


黒羽兄妹は10人兄妹で、一部を除き血が繋がってません。この10人の話はまた別の機会に。

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