プロローグ
ある日、一部の人間に〈異能力〉が備わった。
炎を操る者、氷を操る者、空を駆る者、運命を視る者。それは様々だった。
人々は期待した。自分達にもそれが宿るものだと信じていたから。
_けれど、現実はそう甘くは無かった。
1年経っても2年経っても、10年経っても。一部の人間にしか、〈異能力〉が宿らなかった。
そして各国の首席は、この現状を打破するべく話し合った。話し合いを重ね、半年が過ぎようとしてた頃、一つの結論に至った。それは倫理観を捨て去った、残酷な結論だった。
「孤児達を実験対象にして、能力の"発現条件"を調べる」_所謂、人体実験。
孤児達は各国の首席達の身勝手な思惑により、次々と命を落としていった。
一般人には「当人たちに了承を取った、安心安全な実験」だと嘘をついてまで、〈異能力〉を身に付けるためだけに、孤児達の人権を無視して実験を行い続けていた。
人体実験に手を貸している国を〈政府〉と総称するようになってからしばらく経ったある日、〈異能力〉を持った人間_〈異能力者〉の中の、一部の人間達が、反旗を翻した。
〈政府反対組織〉が次々と生まれていく中、〈政府〉はその存在を隠し続けた。自分たちが悪逆非道な行いをしているということを、世間に気付かせないために。
だが、ある日、〈異能力者〉の中でも特に強い異能を持つ、〈αクラス異能力者〉の明神白夜が、とある〈政府反対組織〉の頂点に立った。
〈白夜のクロニクル〉と名乗るその組織は、人体実験施設を壊し、果てに、全人類に〈異能力〉を持たせることが出来るかもしれない、「人類の希望」となるはずだった少女を攫って行った。
その日、物語が始まった。
これは、自然の風景が心から綺麗だと思える日を迎えるまでの物語。