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青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜  作者: 四季
◆2月◆

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46/51

46.歓喜が喧嘩の引き金となってしまった!

「敢えてズルズル引き延ばすこともないから、先に言っておくヨゥ」


 そんなことを言いながら、タルタルが教室にやって来た。


 教室内の空気は一気に緊張の色に染まる。

 花組の教室がここまで緊迫感に包まれるというのは珍しいこと。というのも、花組は基本的にゆるりとした雰囲気なのだ。それゆえ、喧嘩で殺伐とした空気になることはあっても、生徒一人一人がこれほど緊張することはあまりないのである。


「花組、全員合格してたヨ!」


 タルタルの言葉を聞くや否や、教室内に歓喜の声が響き渡った。

 直前までは音一つないような状態だった——だから余計に音が大きく聞こえる。


 フレアとて、合格と分かって嬉しくなかったわけではない。当然とても嬉しかったし、叫びたいくらいの気分だった。でも、人前で大声を出すことには慣れず、そこまで大きな声を出すことはしなかったのだ。けれども、それはフレアとリカルドだけだった。


「ふ、ふぇええぇぇぇーっ! 合格、合格してたんですかーっ!? カステラも!? やった、やった……やりましたぁーっ!!」


 不安のあまり胃を痛めていたカステラは、合格していたと知るや否や別人のようになった。つい先ほどまで弱っていたなんて、嘘みたいだ。席から立ち上がり、その場で飛び跳ねて歓喜を豪快に表現している。


「良かったわねぇ、カステラちゃん」

「はい! はいぃ! 良かったですーっ! ミルフィさんも、もーっと喜んで下さい! ぜひぜひ!」


 ミルフィは普段に近いテンションを保っていた。が、カステラに喜びを露わにするよう促され、笑い出す。そのうちに楽しくなってきたみたいだ。ただし、ミルフィが喜んでいるのは、合格できていたことが理由ではない。カステラが元気になったことの方が、理由としては大きいだろう。


 教室がここまで大騒ぎになったことが、今まで一度でもあっただろうか。

 フレアが記憶している中では、なかったような気がする。


 そのくらいの大騒ぎが起こっていて、これにはさすがのタルタルも動揺を隠せていなかった。


「やりましたね! やりましたよぅー! これで卒業できますぅー!!」


 喜びが高まり過ぎてじっとしていられなくなったカステラは、その場で軽やかに回転し始める。赤みを帯びた長くはない髪を揺らしながら、一人舞う。


「おめでとう! カステラちゃーん!」


 ミルフィは段々調子に乗ってきて、そんな掛け声を飛ばす。これにはタルタルも「落ち着いてヨゥ」と注意していた。ただ、さらりと無視されていたけれど。


「嬉しいです! やりましたぁー! そしてミルフィさん、お祝いありがとうございますぅー!」


 カステラは意外にも一人での踊りが上手かった。つま先を伸ばし、軽やかな足取りでステップを踏む。普通に走るだけであれほど転倒していた者とは思えない、見事な足の動きだ。春風に揺られる花のように、青空へ飛んでゆく鳥のように、可憐で華麗な踊りを披露する。


「……カステラ、意外と踊りが上手いのね」


 フレアはその程度のことしか言えなかった。

 どう反応すれば良いのかが掴めなくて。


「やーりました! はい! やーりましたぁ! やーりました! はい! やーりましたぁ! わーい、わーい、合格ですぅー!」


 カステラがそんな妙な歌を歌い出した、ちょうどその時。

 イノアが口を開いた。


「ほんとうるさいし」


 彼が毒舌なのは今に始まったことではない。彼はいつだって、思ったことをそのまま口にする。今までだって、ずっとそうだった。そして、それは今日も変わらない。自身が感じたことを、そのまま口から出すのだ。


「ふぇ……?」

「カステラ、だっけ。静かにしてもらえるかな。歌って踊って、ここを何だと思ってるのか。遊びの場じゃないんだよ」


 イノアが言っていることは正論だ。間違ってはいないとフレアは思う。ただ、直球過ぎる言い方には、フレアとしては賛成できない部分もある。ストレートに思いを伝えるやり方は、時には人のためになるが、時には人を傷つけることにもなる。だから、そこを考えるようにはした方が良いと、フレアは思ったりした。


「は……ふ……ふ……ごめ、んなさい……」


 直接注意されたカステラは、みるみるうちに元気を失う。

 身を縮め、涙目になる。


「ちょっと! カステラちゃんにそんな言い方しないで!」


 直球過ぎるイノアに噛み付いたのはミルフィ。


「親しくないとしても、クラスメイトなのよ? 言い方ってものがあるでしょ! そこのところ、考えてもらえるかしら!」


 ミルフィはお気に入りの女子を護るためならどんな喧嘩をすることも厭わない。好戦的とも言えるのだが、それがミルフィなりの護り方なのだろう。


「うるさいなぁ。いつもいつも。本当のことを言っただけなのにさ」


 イノアはミルフィをさりげなく睨む。

 それも、非常に不愉快そうな顔つきをしながら。

 顔をしかめつつ睨むなんて、何の生産性もない行為だ——フレアはそう思うのだが、指摘する気にもなれず、ひとまず喧嘩の中心地から離れておく。


「言い方の問題なのよ! ……そこのところ分かってますー?」

「まったく。もういいよ。はぁ、面倒臭い」

「あらー? 逃げるつもりなのかしらー? あ、もしかして、勝てる気がなくなったとかですかー?」


 ミルフィはまだ喧嘩を終わらせない。喧嘩を売ってきた者を簡単に逃がす気はないようだ。挑発的なことを言って、地味な攻撃を仕掛ける。


 ——その時。


「やーめ! 止め止めテ!!」


 喧嘩しているイノアとミルフィの間に、タルタルが割って入った。


「どうして止めるんですかー? 先生」


 言い合いを止めようとしたタルタルに言葉を先に向けたのは、ミルフィ。

 攻撃的な表情ではないが、不満げだ。


「今日は結果発表の日ヨ! 喧嘩してる場合じゃないゼィ!」

「……でも先生? 駄目ですよ、あんな言い方をする生徒を放っておくなんて」


 ミルフィはそれらしいことを言う。

 何とも言えない、というような顔をするタルタル。


「成績はもちろん大事ですけど、生きていく上では人柄も重要ですよね? あたしはただ、そこを注意しているだけです」

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