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青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜  作者: 四季
◆1月◆

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40.剣術の授業!

 ついこの前まで年明け気分だったというのに、気づけば一月も最後の週に突入していた。


 二月の二週目には、卒業試験が行われる。それに合格できなければ、今年度内での卒業が厳しくなってきてしまう。一つや二つの不合格であれば、授業を受けた上で再度テストに挑み卒業できる可能性はある。が、そのテストも不合格になってしまったら、卒業は難しい。もう一年、あるいは半年、学院に残るということになってしまうかもしれないのだ。


 だからこそ、卒業試験に向けて、日々の授業を大切にせねばならない。


 一つ一つきちんと聞き、着実に能力を高めていくこと——結局それが、卒業試験合格への近道だ。


「今日は卒業試験の時間割りを発表するゼィ!」


 試験二週間前の今日、タルタルが試験の時間割りを発表する流れとなった。


「前回は実技は授業時間内のテストだったと思うけドゥ! 今回は違ウ! 実技も卒業試験期間中に行うから、間違えないよう二ィ!」


 それから、発表されていく。


 試験初日となる月曜日は、戦争史と術式。普段の時間割りと似た時間割りとなっていた。そして二日目、火曜日は魔術実技と体力作りだ。三日目となる水曜日は、古代文と数学2と歴史2。とにかく座学な印象。続く四日目、木曜日は、国語2と治療学習、魔術発展という組み合わせ。そして最終日、金曜日は格闘術と剣術だ。


 ちなみに、芸術のみは授業内で評価する仕組みになっているらしい。


「卒業できるように頑張っテェ! 頼むヨゥ!」


 学院長という身分のタルタルからそんなことを言われると、フレアは不思議な気分になった。その違和感は、多分、地位のイメージから生まれたものなのだろう。学院長という身近ではない地位の者から直接メッセージを貰ったということが、不思議さを生み出しているはずだ。


「あーあ、心配だわー」


 机に突っ伏しながら溜め息混じりに述べるのは、フレアの後ろの席のミルフィ。

 彼女は座学が得意でない。だからなのだろう、卒業試験への心配が大きいのは。


「大丈夫? ミルフィ」


 フレアはさりげなく振り返る。そして、タルタルに注意されない程度の声でミルフィに話しかけた。それまで弱っていたミルフィは、フレアに声をかけられたことで急激に元気を取り戻す。


「あら! フレアちゃん、心配してくれるのね!」

「……急に元気になったみたい」

「フレアちゃんが気にかけてくれたから、元気になってきたのよ! ふふ。ありがと」

「そ、そう。なら良かったわ……」


 正直なことを言うなら、フレアにはいまいち理解できなかった。


 つい先ほどまで不安にやられ弱っていた人間がものの数秒で元気を取り戻すなんて、そんなことがあるのか? と思わずにはいられないのだ。



 剣術の授業は、以前の先生に戻った。


 カッタルが担任になっていた頃は、剣術の授業もカッタルが教えることが多くて。だが彼はいなくなってしまって。結果、また、以前の担当教師に戻ったのだ。


「二人組を作ってクダサーイ! 今まで組んだコトノナーイ人と組むヨウーニ!」


 ここしばらくは生徒同士で模擬戦闘を行うという授業内容が続いている。毎回別の生徒とペアを作って、実践に似た戦いを繰り広げるのだ。実技科目は慣れも大事、ということを考慮しての内容である。


「フレア王女! 組まないかい? 意外と今まで組んだことがなかった気がするのだが」


 フレアの相手となる人物には、比較的偏りが出てしまっている。リカルド、ミルフィ、カステラ——フレアはこれまで、そういった者と組むことが多かった。とはいえ、色々な生徒と対決しなくてはならないという決まりがあるので、同じ顔ぶれとばかりペアになるわけにもいかない。


 そういう意味では、これは大きなチャンスだった。


「えぇ、そうね! いいわよ。……あまり強くないけれど」


 アダルベルト側からの声掛けで、フレアは彼とペアを組むことになった。


 木製の実際に斬ることはできない剣を握る。そして、向かい合う。フレアとアダルベルトはクラスメイト。ただし、今は敵。もちろん本当に敵同士になったわけではないけれど、そのくらいのこころもちで向き合わなければ斬り合うことはできない。


「いつでも来て構わないよ」

「……えぇ」


 交わすのは、短い一言。


 フレアは先手必勝と強く踏み込む。そして、踏み込んだ勢いで、剣を一気に振り下ろした。木と木がぶつかり、空気を揺らすは乾いた音。フレアの剣は完全に受け止められていた。


「なかなか早い攻撃だね! 素晴らしいよ!」


 アダルベルトには褒める余裕があった。

 それが力の差を表していると言っても過言ではないだろう。


 同じ程度、あるいは己より上の実力を持つ者と戦う時、人は相手を褒めることなどできない。模擬戦が終了した後に称賛することはあるかもしれないが、戦いながら褒めるというのは至難の技。ある意味では、交戦中に褒め言葉を発することができるのは相手の能力が自分より低いから、と言うこともできるだろう。


 フレアは懸命に木の剣を振る。

 アダルベルトは一撃一撃を確実に防いでいく。

 二人の攻防はすぐには終わらない。フレアが攻撃を仕掛けアダルベルトが防御するという流れが、延々と繰り返されていく。剣を使った演劇であるかのように。


 それから数分。


「はぁっ!」


 フレアが疲れてきたタイミングで、アダルベルトの一撃が決まった。

 彼の剣はフレアの首もとに触れる直前でぴたりと止まっている。


「ま、負けたわ……」


 首もとに剣を突き付けられれば、もはややりようがない。フレアは敗北を認めた。

 こうして、アダルベルトとフレアの模擬戦闘が終わる。


「フレア王女の剣技もなかなかのものだったよ!」

「褒めてくれて……ありがとう。でも、負けは負けね」

「案外ストイックだね!?」

「次に戦う時までには、もっと強くなるわ」


 フレアはカステラには勝てる。イノアにも勝ったことがある。けれども、リカルドやミルフィといった運動が得意な生徒には到底勝てそうにない。ミルフィは時折負けてくれるが、それはフレアの実力による価値ではない。そして、今日はアダルベルトにも負けた。


 もっと強くならなければ。


 今、フレアの心には、そんな感情が芽生えている。

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