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白の魔法  作者: 城柳 雪
4/5

釣り上げて、鯛。



 宿から反対側になるようモニュメントの前に立つ。


ここでもう一度気候を元に戻す魔法を使えば、犯人は焦って出てき、再度、冬にする。おびき出し方が簡単すぎて涙が出そうだ。



 気候を戻す魔法を、気合と根性と運だけで使う。


すぐに気温は上がり始め、そろりそろりと急な寒さに引きこもっていた人々が顔を出し始める。さてさて、宿から飛び出してくるのは蛇か虎か、はたまたドラゴンか。




「……師匠」



 頭を抱えて蹲った。

相手も気が付き、頭を抱え同じようにモニュメントの前で二人しゃがみ込む。



「……ご無沙汰してます」

 一応挨拶をすると、人の好い笑顔、ただし目の下にはクマ、で答えてくる。

「久しいですね、健やかにしていましたか」

「はい、今朝までは……」

 そう。今朝起きて冬になっているまでは健やかそのものでありましたと言いたくなる。

「……申し訳ありません」

 怒られた子犬のようにしょんぼりとする姿に、懐かしいものを胸に感じた。




 我が師匠。


年齢は2つしか変わらないが、その才能は世界を代表する魔法使いに名を連ねる程の実力者でる。天才中の天才。幼い頃から神童として周囲から評価を受けそれに答えるどころか、周囲の期待を優に軽々と越えてきた天才。


 見た目は色白のひ弱そうな青年である。童顔で年相応に見られることは無い。


 そしてなにより一番の問題は、性格。

バカがつくほどのお人よし。人を疑うことなく純粋で綺麗な心の持ち主、と言えば聞こえは良いが騙されて痛い目に合うのを、3年間魔法を教わりながら見てきた。


 当時、弟子はわたし一人しかおらず、そうこの流派に合う者は少ないため、師匠の面倒と代わりに仕事を引き受けたりとしたものだ。懐かしい。懐かしがっている場合ではないが。




「師匠、冬魔法……使いましたよね」

「……はい。申し訳ありませんでした」


 現行犯逮捕。これで今回の件はめでたく終了、万々歳。さあなまけた日常へ戻ろう。

と、小躍りしたい所ではあるがそうも行かない。



「謝るならしないでくださいよ。で、今回はどんな厄介ごとに巻き込まれたのですか」


 心優しく困っている人を放っておけない、まるで聖人のような師匠。このような人々を困らせることを気まぐれでするわけは無い。



「う……えーっと、なんとなく?」

「師匠、三年伊達に弟子してませんよ、わたし」

「言ったらっだめだって口止めされてるのです」

「それ言ってますよもう?!とりあえず城まで帰る間に話を聞かせてもらいますからね!」


「……ミリア、お願い?」


 無駄に作りの好い顔で、上目遣いをされる。

 他の女性ならイチコロだろう。はっきり言ってめちゃくちゃ可愛いというか保護欲を覚える。無意識な女の敵。


 残念ながら弟子には通用しないことをあの三年で学ばなかったのかと頭痛がする。


「師匠、腹くくってください」



 


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