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白の魔法  作者: 城柳 雪
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呼び出されて、女王陛下。



 ガンガンガンと、激しくドアを叩く音。

今はそれどころじゃないと言いたいが、それは皆同じだろう。

じきに向日葵が咲くはずなのにこれは何事か。


「ミリア!開けろ!!」


 死んでいたかった。

声の主はこの国の主である。なんとも乱暴な朝の挨拶だ。厄介事を押し付ける天才である、若くしてその座についた女王陛下。


 歳はさして変わらず、男性が多い城内で女性同士ということもあり、一方的に仲間扱いを受けていた。



 一国を収める王と、雇われてるだけの魔法使いの身分差を考えてほしい。


 当初は周囲からあらぬ疑いや非難、妬みなどを受け散々だった。今でこそ普通に見られるがあの頃のわたしの苦悩は10円ハゲを作る程である。治ったが未だに許せぬ。



「うるさいです!カトリーヌ様!」

「うるさいとはなんだ!さっさと扉を開けろ!開けないなら斧を持ってくるぞ!!!」


 流石に勘弁願いたい。

 嫌々、かけ布を引き摺り部屋のドアを開けると、頭から毛布をかぶった女王陛下が頬を膨らませ怒っていらした。さほど怖くはない。



「あんたまた魔法失敗したの?! なにこの寒さ! おかしいでしょ?! あたしの植えたアサガオどうしてくれのんよ! 」

「アサガオより国の心配してください……」

「それなら朝から非難轟々よ!さっさと戻して!」

 そら急に寒くなったら国民の皆さんもお怒りになるでしょうなと、心中お察しする。

農作物の被害を考えると頭が痛い。植物の成長関連であちらこちらに行く羽目になるだろう。憂鬱だ。


「人の話し聞いてんの、このバカ魔法使い」


 ダンッと足踏みをして襟元を引っ張られる。


「わたしの魔法ではないですし、また失敗とか言われるのは心外です」

「あんた以外うちの国にこんだけの魔法使えるやつ居ないじゃない!」


 褒められているがあまり嬉しくはない。

しかし、確かにこの国に居る魔法使いの中では、わたしが最高位に当たるのは事実である。

疑われて当然だ。



「女王陛下、落ち着いてください」


 後ろであわあわとしている臣下の方が仲裁に入ろうとするがカトリーヌは聞く耳を持たない。


「さっさと戻せへっぽこ魔法使い!」

「へっぽこ言わないでください!」


 掴んだ襟元でがくがくと揺さぶられる。



 さてはて。

事は至急を要する。自分以外の魔法使いがこの冬を招いたならば、本人に解かせるか、さらに強力な魔法で上書き対抗するしかない。


 普通に考えて、こんな嫌がらせのような魔法を使ったものが素直に解いてくれるとは思えない。何らかの思惑がありの事だろう。


 と、すれば取る手段はひとつ。



『気候元にもーどれっ』



 もう少しひねったカッコいい呪文にすればよかったと唱えながら思う。


 まだ外は雪が積もり残っているが瞬時に空気が変わる。

一応わたしとて魔法使いである。これくらい朝飯前。というか正直、寒いのは苦手なのである。


 がばっと毛布を掴み捨てたカトリーヌは仁王立ちで。

「やればできるじゃない、犯人突き止めてぶん殴ってやる」

悲しいことに女王陛下も寒さが苦手であった。ぷんぷんとこの奇っ怪な悪戯に腹を立てていらっしゃるご様子。


「ご自分でやってくださいよ、何のための権力と臣下たちですか」

「いやいや、だからその権力を今使ってるの」



 今日は散歩がてら美味しい街の食堂へ行くつもりだったのだが。踏んだり蹴ったりである。だが積もった雪を考えるとそう悠長な事も言っていられない。



 他の魔法使いが国にいる。


 そして気候を変えるという災害をもたらした。

他国からの者だとしたら厄介なことになる。

今の所その線が一番有力だが外れていてくれることを願いたい。



 特有の感覚を肌で感じ取った瞬間、すうっと足元から冷気が溢れ出す。魔法だ。



「くしゅん!」


 カトリーヌはくしゃみを一つし眉を寄せた。


「……絶対に許さん」




 こうして、わたしは女王陛下より新たな任を授かった。



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