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白の魔法  作者: 城柳 雪
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目覚めるとそこは雪国だった。



 思わず、かけ布を頭までかぶった。

足の指先が寒い。足だけではなく底冷えするような寒さだった。


 もう初夏だというのに珍しい。

薄着でも寝苦しい夜があるというのに、まるで冬にもどったかのようだ。


 そこで気が付く。

ああ、これは夢だ。夢の中なのだ、と。だから寒くて起きる気になれない。しばらく微睡んでいようそうしよう。いや、それにしても寒い、寒すぎやしないか? 夢の中でもこの寒さは勘弁願いたい。霜焼けになりそうだ。


 もぞもぞとベッドの上で格闘すること10分。勢いをつけて飛び起きる。さあ今日もくだらない1日の始まりだ。頑張れわたし。


 宮廷に使える魔法使い。

それがわたし、ミリア・テカトリーの仕事である。

毎日する事があるわけでも無し、新しい薬の調合やら、ちょっとした祈りやら、それっぽいことをしているだけであり魔法を使うことは私利私欲以外そうそうないのが現実である。

うっかり冷めてしまった珈琲を温めたり、立つのが面倒で近くのペンを引き寄せたり。

そんな私利私欲である。


 魔法というものは便利だが、同時にそれなりの責任を負う。

簡単に使うものでは無い。

戦争時代ならいざしらず、この平和な時代にわざわざ大規模な魔法を使う必要は無い。


 科学の発展も目覚ましく、今や魔法使いなど時代遅れになりつつある。

周囲からすれば神社の神主みたいな存在だ。

神がいるかどうかは知らないが。


「よっこいしょっと……はあ?!」


 がばっと起き思わず叫んだ。

寒い。寒いのだ。

薄い寝間着には耐えられない寒さ。


「なになになになに、なんでこんなにも寒いの……もうすぐ夏だってのに」


 かけ布をぐるぐると体に巻きつける。

息が白い。


『焔硝よ』


 暖を取る魔法を唱えるが、何も変わらない。

魔法が発動していないのだ。

なぜ?一体何が起きた?


 かじかむ足でベランダのカーテンを開けると、そこは白い世界。


雪国であった。


「……な、なんでやねん」


 血の気が引き眼の前まで白くなった。




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