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緋華の追憶  作者: 浦 かすみ
紫の龍

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19/32

満漢全席の葉っぱ 

紫の龍の章のスタートです。

宜しくお願いします^^


雷慈黒龍国の結界が解けてから二月経ち…そろそろ白弦国にも木枯らしが吹き始めています。


今日は木枯らしの中、李 洸兌(りこうえつ)少尉(昇格)、斈 緋劉(がくひりゅう)大吏(昇格)と珀 美蘭(はくみらん)さんと四人で燦坂の長距離馬車の乗降場所で、とある方を待っている。


「まだかな~」


緋劉が美蘭さんと馬車の発着時間が書いてある掲示板を見詰めている。これは実際に馬車に乗っている乗務員から術で定期的に知らせている到着時間なので、正確性がある。


「もうそろそろだと思うわよ、ね?洸ちゃん」


美蘭さんが問いかけるも、洸兌様は待合の長椅子に座って目を瞑って微動だにしない。そんな洸兌様の周りに若いお嬢さんが屯っているけど、ガン無視だ。美蘭さんが気にしてチラチラ見ているのが何ともむず痒いんだけど…。


「来た」


洸兌様は立ち上がって私達の横まで足早に歩いて来た。


「分かるんですか?」


「あいつは…俺の次くらいに霊力が高いから…」


あいつ…とは洸兌様のご兄弟の四男の隗兌(かいえつ)君。十四才だ。


「隗くんね、一番洸ちゃんに似てるのよ~明るくて元気がいい子だから皆とすぐ仲良くなれると思うわ」


ほほぅ、そうですか!天女のおっしゃる通りなら是非仲良くなりたいですね~。


やがて馬車が一台、停泊所に止まった。乗客が降りて来る中…天の御使いのような眩しい存在が現れた!


「きゃああ!」


あまりのことに歓喜の悲鳴を上げた私を許して欲しい。だってね、洸兌様の雰囲気から逞しい感じを抜いて女子成分を多めにした感じのそれは美しい美少年が立っていたんだもの。


「隗くーん!久しぶり!」


美蘭天女が声をかけると、天の御使いが満面の笑顔で駆けて来た。


「美蘭姉久しぶり!あ、洸兄ちゃん…」


お美しい…馬車の乗降場にいらっしゃる老若男女すべての方がこの美しい一団を注視している。


あ…あれ?私、この集団の中で満漢全席の中の彩り用の野菜の葉っぱみたいな感じじゃない?


「洸兄ちゃん…俺、来ちゃったよ。俺…兄ちゃんみたいに四天王目指して頑張る…いえ、頑張ります!宜しくお願いします!」


おおっ!洸兌様っ…ちょっとウルウルしてる?暫く見ない間にあかちゃんだった弟君が成長しててお兄ちゃん感動してる?


そう、この隗兌君は軍の採用試験を受けるんだって。


きっかけは美蘭さんに急かされて、実家に送った洸兌様の書簡だそうだ。今は禁軍の四天王の増長天の位を拝していることと、少尉に昇進したことを連絡したそうだ。


すると洸兌様のご出身の葉芭多利(はばたり)村では大騒ぎになったらしい。早く里帰りして来いだの、村長さんからお祝いの書簡が届いたり…そして男の子達の間で挙って軍に入隊しよう(させよう)と全村人が乗り気になっている…とか。


そんな中、実家の後をついでお酒造り(洸兌様の実家は酒蔵だ)をしている次男洸紀(こうき)さんと三男洸俊(こうしゅん)さん達の勧めで、洸兌様に似て運動神経が良く、機敏な隗兌君を軍へ…四天王再びっ…みたいな大人の皮算用も感じつつ…隗兌君も乗り気になったので、じゃあ…ということで今に至る訳である。


「まあ、頑張れよ~まずは試験に受かってからの話だな。それに四天王になるには未来の四天王候補がここにいるから…まずはこの二人と互角くらいにならないと話しにならないよ?」

と、私と緋劉の背中をドンと叩いた。


「あ…っと斈 緋劉、階級は大吏です。年は十四才同い年だね、宜しく!」


おおっあんなにモジモジして(過去)友達もいなかったあの翔緋ちゃんがっ自分から自己紹介してるよぉ…。


緋劉が笑顔で手を差し出すと、天の御使い、隗兌君はパアァ…と眩しい笑顔を放った。


「兄がお世話になっています!李 隗兌です」


緋劉が笑顔で私を見たので、私も自己紹介をした。


「彩 凛華、同じく大吏です。十三才です。宜しくお願いします」


隗兌君の霊力が若干上がった。おや?こいつ年下なのにもう大吏なの?…ってところかな?


すると洸兌様が私と緋劉の頭をぐりぐり撫でながら


「こいつらは特殊なんだよ、凛華は歴代最高霊力最大値の持ち主。緋劉は筆記試験満点」


と隗兌君を煽っている。これまたさ、初期の緋劉みたいな感じになっちゃうんじゃないの?


私の嫌な予感の通りに隗兌君は何故か私だけをジロリと見つつ


「負けないからな!」


と、啖呵をきりました。きられてしまいました。どうして私だけ狙い撃ち?


そうして、折角燦坂(さんざか)に来たんだから、甘味でも食べて帰るか~と洸兌様が言ったので皆で移動し始めると…緋劉の霊力がおかしい…?心配事や心の動揺のようなもので…霊質が揺らいで見える。


「緋劉、どうしたの?」


私が声をかけると、緋劉はこっちを見た。緋劉が霊力を体から放出してくる。


あれれ?この緋劉の霊質…知ってるぞー!昔、翔緋の時に嫌味な上官に絡まれて助けて欲しくて、私に助けて助けて霊力を向けてきたアレだね?


「甘味食べたくないの?」


「違う…」


「じゃあどうしたの?」


洸兌様も美蘭さんも隗兌君も皆が足を止めて緋劉を見詰める。


「あんまり大通りの方のお店に行きたくないって言うか…」


「どうして?」


私と美蘭さんの声が重なったのと同時に


「緋劉!」


という呼びかけが私達の後ろから聞こえて、皆で一斉に振り向いた。私達の後ろには四角い顔の恰幅の良いおじさんがいた。


「緋劉、お前…連絡も寄越さないで何しているんだ…。いつ戻ってくるんだ?」


え?何どういう事?


緋劉は何も言い返さないで黙っている。んん?この緋劉から感じる霊質も知ってるー!


化粧の濃い伯爵家のご令嬢に翔緋と同期の男前の侯爵家の三男を紹介しろと頼んだのにどうなっているだ!って詰られてた時の翔緋と同じ霊質だー!


私は緋劉の背後から静かに背中を摩ってあげた。がんばれーがんばれー!


緋劉の背中がピクンと動いた。ぐっと体に力が入り緋劉は前を向いた。


「言った…よね?俺、軍人になりたいんだって…」


「お前が勝手に決めてどうするんだ!父さんは認めんからな!」


お父さん!ああ!ということはあの有名な高級料理店の來慧亭(らいけいてい)のご主人なのか。


そういえば…以前愁釉(しゅうゆう)王が言っていたではないか…緋劉は親から軍人になることを反対されているって…。


「初めまして、緋劉の御父上。緋劉の上官に当たります、李 洸兌少尉です。禁軍の四天王を拝しております」


ニッコリと微笑みながら気まずい親子の間に洸兌様が割り込んだ。


四天王…という紹介を受けて緋劉のお父さんはびっくりしたのかのけ反った。


「き…禁軍の四天王様でいらっしゃいますか!?」


と、緋劉のお父さんが結構大きな声で叫んだので、周りに居た女子がきゃああ!と黄色い悲鳴を上げた。


「やっぱりぃぃっ!すっごく格好いいと思ってたんだぁ!」


いや…四天王だからって顔は関係ないと思うけど?


「いやあああん!本物よぉっ素敵ぃ~~!」


洸兌様はにっこり微笑んだまま緋劉のお父さんに視線を向けている。普段から悲鳴を上げられ慣れているようだ…。まったく動じない流石、洸兌様。


「こんな所で立ち話もなんですから、お時間がおありなら一緒に甘味食べませんか?」


美蘭天女が後光の射す微笑みを浮かべて緋劉のお父さんを促した。


緋劉のお父さんも天女の誘いは断れないのか…ポカンとしたまま頷かれた。


そして場所を移動して甘味を食べつつ…皆で親子の様子を見守った。私達の据わった卓には緊張感が漂っている。


先にお父さんが口火を切った。


「どうして軍に入った?」


「向いてると思ったから」


「どうして家に寄りつかん?」


「軍の仕事が忙しい」


「休暇ぐらいあるだろう」


「凛華の実家に一緒に行くから…」


ちょっとーいきなりの巻き込み事故だよ!バカチン緋劉!名前を出すなぁぁ!


凛華…凛華と呟きながらお父さんはこちらの方を見て私と視線が合うと「君か…」と呟いた。


「どういうつもりだね?息子を誑かして…」


はぁぁ?なるほどねっそう来たかっ!


「息子は來慧亭の大事な跡取りなんだ。君に付き合っている時間は…」


「凛華の事を悪く言うな!俺は自分の意思で軍に入った!大体跡取りって兄さんがいるだろ!」


で…でたーーーっ。前、楼柑村に一緒に帰った時に緋劉がチラリと言ってたお兄さんの存在…。どう言う事なの?つい前のめりになってしまうね。


お父さんは大きく溜め息をつくとお茶を一口飲んだ。


「あいつ…郭劉は凡庸だからな…。店は任せられない」


ぼんよう…凡庸?普通…え?このお父さん何を言っているの?


「なんだ、あのおっさん…」


私の横で天の御使いの暴言が聞こえましたが…?それはさておき…緋劉はワナワナと震えている。


「普通の何がいけないのかしら?」


今まで静かに杏仁豆腐を食べていた美蘭さんが、微笑しながら緋劉のお父さんを見た。


「やべぇ…」


またも私の横で天の御使いが…今度は慌てている。どうしたの?横目でチラッと隗兌君と見ると、耳打ちされた。


「美蘭姉…怒るとめっちゃ怖いんだよ。あの笑顔はそれの予兆だ…」


美蘭さんは微笑みを崩さずに


「緋劉君のお兄様、お酒を飲んで暴れたり、人様に暴力を振るったり、はたまた博打を打ったり…そういう方なのでしょうか?」


と緋劉のお父さんに聞いた。緋劉も美蘭さんの言葉で少し落ち着いたようだ。


「郭劉はそういうことはしない。ただ…」


「普通の何がいけないのですか?何かに突出した才能が無ければいけないのでしょうか?」


美蘭さんの攻撃の手は緩まない。微笑んでいる分何やら恐ろしい…。


「あんたには関係ないっ!うちの問題だっ!」


緋劉のお父さんが美蘭さんを怒鳴った。すると洸兌様と隗兌君がジワリ…と霊力を上げた。


私は思わず隗兌君を手で制した。ハッとして隗兌君は私を見たので私は一つ頷いて見せた。


はいはいっここらでおばさんの登場と行こうかね~。


「世の中にはですね、天才、奇人、凡庸等々…色んな才能をお持ちの方がいるわけですよ。それが社会というものです。世の中に天才しか存在しないとなると…それはもう当たり前過ぎて逆に凡庸になりませんかね?負の方向に力を発揮するのではなく、普通…つまりはどれも平均点を叩き出すって結構難しいのですよ?人って得手不得手がありますから。はっきり言っちゃうと緋劉だって欠点だらけですよ?あ、因みに私も欠点だらけです。自分で棚に上がって言っているわけではありません。凡庸とはすなわち及第点を出せる人物という事です。はい、終わり」


私が一気に捲し立てると、緋劉のお父さんは顔を真っ赤にした。何かまた言うかな…と思って構えていると


緋劉がポツンと呟いた。


「俺、客商売向いてないもん…」


これが決定打だったようだ…。緋劉のお父さんはがっくりと肩を落とし、頭を下げつつ店を出て行った。


緋劉は帰って行くお父さんを追いかけて、何かを話し…そしてスッキリした顔で戻って来た。


追加の胡麻団子と揚げ煎餅の注文を頼んで摘まみながら緋劉の話を聞くことにした。


「5才上に腹違いの兄がいるんです、さっき父さんが凡庸って言ってた。亡くなった先妻の子供で…穏やかで優しい人なんですよ?俺が軍人になりたい…て言ったら四天王目指してガンバレって後押ししてくれました。でもね~父はその優しくて穏やかな兄が気に入らないんですよ」


「優しくて何がいけないのよ?」


美蘭天女がぼそりと呟いたら、隗兌君がびびったのか、小さくガタタ…と音を鳴らして椅子から飛び上がっていた。そんなに美蘭さんが怖いの?


緋劉はさつま芋の拔絲白薯を食べながら首を傾げた。


「優しさは商売をする上で邪魔だ…とか何とか?でも俺からしたら経営は兎も角、食べる事が好きで、お客様にも美味しいものを食べてもらいたい…って思いが無い人が料理屋やってもダメだと思うんだけど…」


「あれ?緋劉…結構食べるの好きじゃない?」


「そりゃ凛華の作る海鮮炒飯とか美蘭さんの作る点心はいくらでも入るし最高に美味しいけど、明日から二人共料理をしません。…て言われて道端の草を食べて生活してねって言われても俺は平気」


「きょ…極端だな」


洸兌様が若干引き気味で答えた。


「それくらい食に関心が無い人が食事を提供する側にいたら…來慧亭は潰れちゃいますよ」


めっちゃバッサリ…そういえば元々の緋劉…翔緋の性格はこんな感じだったな…記憶が戻って少し昔の雰囲気も出て来たのかもしれない。


その後皆で市場に寄って、『いらっしゃい!隗兌君を祝う会』の食材を買って帰って丙琶の宿泊所に戻ると…。


「童達、邪魔しとるぞ!」


ひょえええ!?何故にここに黒龍王が!?


宿泊所の長椅子に鎮座する黒髪の妖艶な黒龍王…すごい違和感である。


「今日は良い知らせがあるぞ」


黒龍王はそれは美しい微笑みを讃えておられた。


「涼炎王がな、お目覚めになられたそうだ」


「!」


神龍王様にもうダメかもしれないと言われたまま、自分達も転生して時間だけが過ぎていたので…もうダメだったのだと思っていたのに…涼炎王!


「凛華…」


緋劉と手を握り合った。黒龍王は何度も頷きながら言葉を続けられた。


「実はな目覚めた涼炎王はな…『三鶴花と翔緋はどうしている?』と真っ先に聞かれたそうだ。それでな、神龍王様がな…お前達を龍の谷連れて来いとおっしゃっての」


「ええ!?」


「それは…」


「わあ龍ですか!」


と皆が騒いだが、黒龍王は手で制した。


「悪いが、童達しか連れて行けん。龍の谷は知られるわけにはいかんのでな」


と言う訳で…愁釉王に「龍の谷の内部をつぶさに観察して来て報告するように!」と言いつけられて私達は出発することになった。


なったのだけど…。


裏庭の開けた場所で龍に戻った黒龍王が黒き山のように私達を見下す。軍人や役人の見物客の数が凄い。


『早うせんか』


と、皆が見守る中、黒龍王はそう急かすけど…。緋劉と二人、尻込みしてしまう。だってね…。


「龍の…黒龍王の背中に乗るなんてっそんな…恐ろしい!」


黒龍王だからってことじゃないんだよ。女子ならばニュルとした皮膚を持つ生き物は苦手だと思うよ!あんなのと龍を一緒にするな!と怒られそうだけど、長くてにょろにょろしている生き物の背中に乗るって言うこと自体が恐怖なんだよっ…。分かってくれ!


『背中が怖いのなら掴んでいってやろうか?』


との黒龍王の提案にチラリと黒龍王の前足を見てしまう。あの鋭い爪にチョコッとでも体が当たったら…体が抉れてしまうんじゃないだろうか!


「ガタガタうるせぇぞ、チビ!ほらよっと!」


突然視界が遮られ、体がギューッと拘束された。


「んなっ!?何これ?何これ?」


体がグワッと持ち上がる。


「黒龍王~これで掴んで持ってて下さいよ」


『おおっ洸よ、気が利くの!』


「り…凛華…少しの辛抱だからな?」


私は洸兌様に捕縛術をかけられ、茣蓙(ござ)に包まれて、簀巻き状態にされて運ばれてしまいました。


乙女の矜持がズタボロです…。


視界は遮られたまま…ものすごい風圧と圧迫とで…口から若干…若干だが色んな何かを出しながら…ポイッと放り投げられて床にゴロンと転がり


「うわあ…凛華大丈夫か?」


と、呑気に緋劉に声をかけられたものの


「大丈夫じゃない…」


と声を上げるのが精一杯だった私は、そこがすでに龍の谷だったとは気が付いていなかった。


『母上ーー!』


男の人の声がして簀巻きの状態から抜け出た私の視界に、駆け寄って来る緑色の龍が目に入った。


『おおっ!おお…淵慈(えんじ)!立派な龍になって…』


ドオーン…と爆音が響いて、抱き合っている二匹の龍…。そしてもう一匹赤龍が走って来て三匹が抱き合って?るのか、噛み付き合ってるのか…すごい爆風でよく分からない状態だ。


「ね~ここ龍の谷なの?」


いつまでも終わりそうにない龍の抱きつきあいに飽きて、隣にいる緋劉に聞いた。


「そうみたいだよ。何かの結界を抜けて入って来たんだよ。結界術は…よく分からなかった」


「へえ…」


残念ながら私は簀巻き状態で術は視えてなかった。しっかり視ろ!と言われてきたのに…な。簀巻きにしてきた洸兌様を恨むぜ。


暫く待っているとやっと私達の存在を思い出してくれたようで、三匹?は人型になってくれた。


「私の旦那の鷹人(たかと)と息子の淵慈だ」


緑の髪色の黒龍王にそっくりな、格好良いお兄様の淵慈様はなんと、私と緋劉に抱き付いて来た。


「わ~本物だ!涼炎王に聞いているよ。三鶴花ちゃんと翔緋君だね。すごいね、永久の婚姻してるんでしょう?今はどうなの~?」


おお…淵慈様は恋愛?方面のことに興味津々なのかな?緋劉と見詰めあって照れてしまう。


緋劉が真っ赤になりながら淵慈様に答えた。


「はい、三度目の転生ですが、二人共今世でも…えっと恋人同士です…」


淵慈様は益々私達を抱き締めた。


「わ~良かったよ!神龍王様がかけた、永久の婚姻で揉めた事があるから…神龍王様が二人の事を気にしちゃってて…」


ああ、王族の方の婚姻のアレね?どんな風に揉めたのかな?気になってきましたよ。


龍の谷は大きな洞窟を宮殿のように作り代えているような構造の建物だった。


「ここは…城下町ってとこかな?奥に神龍王様の宮があるから、涼炎王もそちらにいらっしゃるよ」


黒龍王の王配の鷹人様の説明を聞きながら、愁釉王の言いつけ通りに内部構造などを確認しながら歩いた。


しかし…庭園のような所もあるのに、人?龍の姿はない…。閑散としてるなぁ。


「もっと龍の方?っていうのかな…が居るのだと思っていました」


「居ることは居るんだよ?君達が来たから隠れているんだよ」


へぇ~こんな童二人にビビっているのかな?違うか…。


やがて大きな吹き抜けの空間に出て来た。


「あ、神龍王様!」


な、何!?前…と言っても250年以上前だけど見た時はどでかい青い龍だな…と思ったんだけど…人型は初めてだ…。あ、あれ?あれれ?


駆けて行った淵慈様と連れだって歩いて来るのは…童だった。私達より童だ…。年の頃は十才くらい?


目の覚めるような青色の髪の可愛い男の子?に見えるけど…。


「三鶴花、翔緋…長きに渡り済まなかったな…。涼炎に会ってやってくれ」


見た目に反しておじさんみたいな声だ…違和感凄い。


「後で私からも話があるが…今日は泊まっていくか?」


「はいっ是非!」


っこら!私が返事する前に何故に緋劉が返事しちゃうんだよ?緋劉のやつ…冒険者魂に火がつけられてるね?どうせ洞窟宮殿で興奮してるんだろう?ああん?


返事をしてしまったからには仕方がない。今日はこちらで休ませて頂こう…。


やがて神龍王様は一つの扉の前で立ち止まった。


「さあ…ここだ」


私と緋劉は扉を押して中に入った。



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