第5話 新たな旅立ちと魔導少女レナ。
お読み頂き有り難う御座います。
第5話です。
朝食を終えたレン達は兵士局を訪れた。
昨日の盗賊退治の話をするためだ。
兵士長:『よく来たな、昨日は随分と世話になった。』
レン:『昨日兵士さんに聞いたけど、金品を要求されて断ったからってあんな人数で攻め混んで来るっておかしくないか?』
兵士長:『それが以前にも二度要求されたんだが、今回最後通告だと言われていたんだ。まさかあれほどの人数が攻めて来るとは思わなかった。』
アン:『この町には盗賊ハンターは居無いわよね?そんなに盗賊が来てたのに退治しようとは思わなかったの?』
兵士長:『実は領主が盗賊ハンターを雇おうと思ってギルドと打ち合わせをしていた矢先に今回の襲撃があったんだ。領主は少し盗賊を甘く見ていたのかも知れない。』
セシル:『確かに甘くは見ていたんでしょうね。襲撃にあってから兵士さん達の初動も遅かったみたいだけど、いくら何でもあれだけ多くの盗賊が町の中に入るのを許すなんて・・・。』
兵士長:『全くもって面目無い。門番をしている兵士が交代をするタイミングを狙われたのだ。町の近くに身を隠している盗賊に気付かなかった我々のミスだ。』
アン:『何はともあれ被害が少なくて良かったわ。でもこれだけ大きな町なら見張り台の一つ位はあった方が良いわね。』
そんな話をしていると、年配の男が入って来た。
兵士長:『これは領主様、ご無事で何よりで御座います。』
領主:『うむ、そなた達が盗賊を倒したという者達か?』
レン:『あぁそうだ。今丁度この町の防衛管理について話していたんだけど、何だってまた盗賊に何度も脅されてるのに、見張り台も作らなかったんだ?』
領主:『本来ならば早急に盗賊ハンターを雇い見張り台を建設するべきだったのだろうが、盗賊ハンターはニールセン近郊に出来た町の警護に行っていて人手が居らんのだ。見張り台を建設する為の資材もまだ届かなかった為にこの様な事態になってしまった。』
アン:『にしても、他に対策ぐらい無かったの?今回はアタシ達がたまたま居合わせたから良かったけど、せめて魔導師や剣士の冒険者を雇う方法だって有ったでしょうに。』
領主:『全くもってその通りだ。今回の一件は私が盗賊を見くびってしまったのが一番の要因だ。今後は万全の対策をこうじる事にしよう。』
兵士局を出たレン達は一度宿屋に戻り、巫女達を見送る事にした。
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ノイル:『どうも有り難う御座いました。』
レン:『気にすんなって。』
アン:『ところでフランに伝はあるの?』
ノイル:『はい、フランの神官様には以前お会いした事もありますし、我々の仲間も何名かはフラン神殿に支えております。』
セシル:『無事にフランに着くことを祈ってるわ。』
ノイル:『有り難う御座います。』
操馬手:『フラン行きが間もなく発車しまーす!お乗りの方はお急ぎくださーい!』
ノイル:『それではこれで。』
巫女達は深々と頭を下げて馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりと走り出した。
レン:『さて・・・と。俺達もボチボチ出発するか。』
アン:『そうね、じゃあレン馬車取って来て。』
レン:『あいよ!あ、そうそう、出発前に食料買っとけよ!』
レンが馬車を取りに行っている間にアンとセシルは町で買い物をしていた。
アン:『おじさん!もうちょいまけて!』
店主:『仕方無ぇなぁ、じゃあ銅貨3枚にまけてやるよ。』
アン:『やりぃ!おじさん話分かるじゃん♪』
セシル:『まったく、本当に逞しいわね。』
アン:『何言ってんのよ!次の町まで4日も掛かんのよ?その分の食料を買い込まなきゃならないんだから当然でしょ?』
セシル:『にしてもちょっと買い過ぎじゃない?』
セシルは三つの麻袋一杯に入った食料を見て言った。
アン:『ん~でもこんなもんよ?アタシとレンならこんなの1週間持たないわ。』
セシル:『だって4日なのよ?私の分を入れても多いと思うわ。』
アン:『大丈夫よ、町に近づいたら粗方平らげちゃうし。』
セシルが呆れていると、後ろから視線を感じた。
セシル:『アン、誰かに見られているわ。』
アン:『セシルも気づいたみたいね。さっきからずっとよ。敵意のある感じじゃ無いから黙ってたけど。』
アン達が歩き出すと明らかに後をつけて来ている。
アン達が角を曲がると、つけていた人物は走って追って来た。
アン:『あら、どんな奴かと思えば随分と可愛らしい追っ手ね。』
追っ手:『っ!!』
セシル:『貴女、魔導師かしら。私達の後をつけて何をしようとしてたのかしら?』
追っ手:『待って!私はあんた達に頼みが有ってあとつけたの。』
アン:『なら普通に声を掛ければいいじゃない。こっちとしては、あまり気持ちの良いものじゃ無いわね。』
追っ手:『ごめんなさい、まずは自己紹介するわ。私はレナ。見ての通り魔導師よ。昨日貴女達の戦いぶりを見て、私に協力して欲しくて後を追ったの。』
セシル:『協力して欲しい事が有るなら尚更普通に声を掛けるべきだったわね。少なくとも尾行された事で貴女に対しての印象はかなり悪いわ。』
レナ:『本当にごめんなさい。』
アン:『まぁ良いわ、それで協力して欲しい事って何?』
レナ:『実はここから西に馬車で4日程行った所にハウエルの町があるんだけど、最近町の周辺に盗賊団が居座って旅人を襲っているのよ。私1人でも蹴散らして通る事は出来るんだけど、さすがに数が多過ぎて殲滅させるには至らないの。私と一緒に盗賊団を壊滅して欲しいのよ。』
アン:『貴女ハウエルに住んでるの?』
レナ:『私は旅をしているだけよ。でもさすがに見過ごす事は出来無いわ。』
セシル:『アン、どうせハウエルに行くんだし協力してあげたら?』
アン:『そうね、どうせ一戦交えなきゃハウエルには入れない訳だし。・・・良いわ、協力してあげる。』
レナ:『恩に着るわ!』
アン:『それじゃあ1人増えた分食料を買い足さなきゃね。』
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レン:『おっせぇなぁ・・・何か有ったのかな?』
レンが馬車で暇を持て余して居ると、ようやくアン達が戻って来た。
アン:『おまたせ!』
レン:『おせぇよ!何してたんだ?』
セシル:『ちょっと野暮用が出来たのよ。』
アン:『レン、1人増えるわよ。この子はレナ。ハウエルまで一緒に行くわ。』
レナ:『レナよ。宜しくね。』
レン:『よ、宜しく・・・アン、どういう事なんだ?』
アン:『レナの話ではハウエルの周辺に盗賊団が居座ってるらしいのよ。レナはその盗賊団を壊滅させる為に、協力してくれる人を探してたそうなの。だからアタシ達が協力する事にしたって訳。』
レン:『まぁ確かにハウエルの町に入るならその盗賊団と鉢合わせになるだろうしな・・・よし分かった、協力するぜ。』
こうしてレナに協力する事になったレン達は、一路ハウエルに向けて出発した。
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町を出て2日目、レン達はラーランドの森を通っていた。
アン:『このラーランドの森が難所なのよねぇ。』
レン:『いかにも盗賊が出そうな所だもんなぁ。』
セシル:『あら、お金稼ぐには丁度良いじゃない?』
アン:『ただでさえハウエルに近付けば盗賊が増えるのよ?そう毎度毎度盗賊を相手になんかしてらんないわよ。』
レン:『とか言ってたら、ほら、おいでなすったみたいだぜ?』
前方で10人ほどの盗賊が道を塞いでいた。
アン:『はぁ・・・面倒臭いわね。』
レナ:『丁度良いわ、私の実力を見て貰いたいし、ここは私がやるわよ。』
レンが馬車を停めると、レナはゆっくりと盗賊に向かって歩き始めた。
レナ:『・・・フレアーバースト!』
レナが魔法を放つと、盗賊達の直上に大きな火の玉が飛んで行き、レナが指を鳴らすと物凄い爆音と共に火の玉が爆裂した。
レン:『ひゃ~、とんでもねぇな。』
アン:『これはちょっと盗賊に同情するレベルね。』
セシル:『でもこの爆激だと・・・。』
セシルが案じた通り、盗賊達は木っ端微塵に吹き飛んでしまった。
レナ:『ちょっとやり過ぎちゃった・・・。』
3人は苦笑いしながら思った。
≪うちらいらなくね?≫
お読み頂き有り難う御座いました。




