第4話 訳アリ巫女と盗賊団と大乱闘
お読み頂き有り難う御座います。
第4話です。
セシルを仲間に加えたレンとアンはシェルビーから次の町に向かう旅を始めていた。
アン:『ねぇレン、あれって砦かしら?』
レン:『そうみたいだな。』
セシル:『あれはハルマー砦ね。』
アン:『でも妙ねぇ、まるで廃墟みたいなんだけど。』
レン:『兵士も居ないみたいだな。ホントに廃墟なんじゃね?』
セシル:『えぇ、既に廃墟になっているわ。ここに潜んでいた盗賊を数日前に私が倒したばかりだもの。』
アン:『・・・セシルってサラッと凄い事言うわよね。』
レン:『まぁ俺達と違ってプロだからなぁ(笑)』
砦を抜けると、見通しの良い平原地帯が拡がっていた。
アン:『ここから隣町がもう見えてるわね、あそこで休憩しましょ。』
町に入るとすぐに食堂に向かった。
アン:『おじさーん!スペアリブの定食!大盛りね!』
レン:『俺は肉と野菜の炒め物の定食!大盛りで!』
セシル:『私は角煮定食をサラダ付きで。』
注文した料理を待ちながら、今日の予定を決める事にした。
アン:『いい?この後は絶対リブルの町まで寄り道は無しよ!』
レン:『今丁度昼頃だから、結構ギリギリなんだなぁ。』
セシル:『でも夕方前に着かないと、手前の森で 魔物を狩りながら行く事になるわね。』
アン:『それだけじゃ無いわ。リブルの宿屋は夜になると泊まり客を断るらしいのよ。ギルドの雑居部屋なんて泊まりたく無いでしょ?』
セシル:『断固拒否。』
レン:『確かにオッサン臭の充満するあの部屋はなぁ・・・。』
アン:『そんな訳だからお願いね?レン。』
レン:『なるほど、俺に操馬をしろって事か・・・。分かったよ。』
食事が終わり馬車まで戻ると、馬車の側でフードを被った四人組がこちらを見ていた。
レン:『悪いがこれから馬車を出すから退いてもらえるかな?』
女1:『すいません、どちらに向かわれるんですか?』
レン:『リブルですけど?』
女1:『出来たら乗せて行って頂けませんでしょうか?お代はお支払いしますので。』
アン:『失礼ね。フードを取ってお願いするのが礼儀ではなくて?』
女達はフードを取った。
四人ともエルフで、マントの下はキチンとした服装をしている。
女1:『私達は訳有って、フランの神殿に向かっている巫女です。乗せて行っては頂けませんでしょうか。リブル迄で結構ですので。』
セシル:『貴女達、エリオリアの巫女ね?身分を隠してフランに行く理由を教えて貰えるかしら?』
巫女1:『・・・実はエリオリアが正体不明の魔導師達に襲われたのです。神官長をはじめ、数多くのエルフが殺されました。私達はフランの神殿に助けを求めに行く途中なのです。』
アン:『セシル、エリオリアってどの辺りなの?』
セシル:『この町から西に馬車で6日ほど行った所にある大きな湖がある神殿よ。』
アン:『それじゃあエリオリアに行っても既に手遅れな訳ね・・・。良いわ、乗せて行ってあげる。』
巫女1:『有り難う御座います。私はノイル、こちらは順にテーサ・ミレア・ファーレです。』
巫女達は深々と頭を下げて礼をした。
町から出たレン達の馬車は、平原の中の街道を全速力で走っていた。
レン:『なぁアン、エリオリアって所はもう・・・。』
アン:『えぇ、多分陥落してるわね。彼女達はその事実だけでもフランの神殿に伝えたいんでしょうね。』
セシル:『彼女達は魔導師と言っていた。盗賊って言わなかったっていう事は、神殿同士の争いかも知れないわ。』
アン:『何よそれ!?他の神殿が仕掛けたって事!?』
レン:『静かにしろよ、彼女達に聞こえるだろ?』
セシルの話では神殿にも信派による派閥争いがあり、金で動く魔導師や殺し屋を雇って襲わせる事もあるそうだ。
神に支える神殿神官の中には貴族との癒着をしている者まで居るらしい。
レン:『まったくひでぇ話だな。神様が聞いたらさぞや嘆く事だろうよ。』
アン:『ねぇワタシ達に何か出来る事って無いのかな?』
セシル:『下手に関わらない方が懸命。巻き込まれて目を付けられたら聖都からもお尋ね者にされかねないわ。』
アン:『さすがにそれは面倒臭いわね。取り敢えずリブル迄はなんとか送り届けましょ。』
リブル手前の森に差し掛かると、反対側から来た馬車に呼び止められた。
男:『なぁあんた達、今リブルには行かない方が良いぜ!』
レン:『何かあったのかい?』
男:『盗賊団が暴れているんだよ。町の兵士達が応戦してるが、いつまで持つか・・・。』
レン:『分かった!有り難う!』
アン:『相手が盗賊なら遠慮はいらないわよねぇ?』
レン:『しゃーねぇな、一丁やるか?』
セシル:『やらないと今晩泊まる所も無くなるものね。』
レンはそのまま馬車を走らせリブルへ急いだ。
町の門を潜ると目の前では盗賊と兵士が戦っていた。
アン:『レン!』
レン:『あいよっ!』
アンとレンが参戦すると、あっという間に片付けてしまった。
兵士:『かたじけない!』
レン:『そんな事よりこれは一体?』
兵士:『この町に昨日盗賊団がやって来て、金品を要求して来たんです。町の領主様が盗賊団からの要求を断ったらこの有り様ですよ。』
アン:『随分酷い話ね!?レン!残りの連中も片付けに行くわよ!』
町のあちこちで暴れていた盗賊をレン達は問答無用に次々に倒して行った。
レン:『キリが無ぇな、一体何人居るんだよ・・・。』
アン:『町じゃ強力な魔法が使えないんだから仕方無いわ。』
セシル:『私は狭い所だとやりにくいから、広場の連中を片付けに行くわ。レン達は路地や通りに居る奴等をお願い。』
アン:『分かったわ!』
レン:『任せとけ!』
その後2時間あまりの戦闘の末、ようやく盗賊団を掃討する事が出来た。
レン:『やれやれ、これで片付いたかな?』
アン:『レン!そっちは終わった?』
レン:『あぁ、セシルが心配だ!広場に行くぞ!』
広場に着いたレン達の前に広がっていた光景は、まさに地獄絵図さながらの盗賊達の成れの果てだった。
セシル:『レン、アン、こっちも終わったわ。』
アン:『・・・ねぇ、涼しい顔で言わないでよ。』
レン:『取り敢えず怖いからその鎌から滴ってる血を拭け・・・。』
腰を抜かしていた兵士に町中の盗賊を倒した事を伝えると、他の兵士達に伝えに行った。
馬車の所に戻ると、巫女達は安堵した様子であった。
アン:『こんな状況になっちゃったけど、あなた達はこれからどうするの?』
ノイル:『私達はここから定期馬車でフランに向かいます。本当に有り難う御座いました。』
レン:『定期馬車ったって、この有り様じゃいつ動くか分かんないぜ?』
セシル:『取り敢えずは宿に泊まって明日にでも確認した方が良いわ。』
町の宿屋は何軒か盗賊の被害にあったが、ほとんどの宿屋は無事だった様で、レン達は宿屋に泊まる事が出来た。
翌朝、その日の昼に定期馬車が再開されると宿屋の主人が教えてくれた。
その後二人の兵士が宿屋に来て、レン達に兵士局に顔を出す様にと言われた。
お読み頂き有り難う御座いました。




