◆魔剣名鑑◆#4
◆魔剣名鑑 #26【〈茨木の異剣〉】◆
神殿鍛冶師コルハトルトス製の魔剣。古物。序列・二十一位。
この剣が与えた傷の、その“根”を張らせる。
一度傷を与えてさえしまえば、魔剣の魔力が続く限りその傷は物体を浸食し広がっていく。
そして、その状態の傷は単なる欠損ではなく――実体に対する干渉力や影響力を持つ。
既に傷である為に決して破壊され得ぬ無敵の盾であり、攻撃として振るえばより『破壊』の方向性を突き詰める最強の鉾となる。
これは既に存在するものの上から破壊という消しゴムをかけるようなもので、たとえ如何なる強度の物体であろうとも打ち込まれてしまえば決して免れ得ず散り散りに破壊される。
ただし、破壊に干渉するという同系統の権能を持つ〈水鏡の月刃〉の刀身は破壊できないらしい。
これは、僅かながらにでもただ刃があるだけで押し退けて作っている空気の傷を纏っている為なのか、それとも傷さえ刀身と見做す(逆に言えば刀身を傷とも見做せる)〈水鏡の月刃〉の特性なのかは定かではない。
もし他に破壊という概念に干渉する魔剣があったのなら、おそらくはその魔剣も破壊できないであろう。
元は徐々に寂れていく神殿を盛り上げる為、かつて飢えていたところを救われた鍛冶師が打った一品。
真の勇者なら抜けるという宣伝の元、集まった力自慢たちによって神殿は大層盛り上がったらしい。
能力については、その鍛冶師と神殿の巫女の子孫に伝えられていた。




