罪人と屈辱
「さぁ、刑の御時間です」
地下牢獄の看守長は高らかに告げ、一杯に両腕を引き延ばした。双眸に狂気、歪んだ欲が滲み、見る者を震え上がらせる。
ジベットに詰め込まれた囚人達は、のろのろと牢獄から這い出て、光を移さない目で移動を開示する。
「罪人が……」
囚人の一人がぼそりと呟いた。ボロボロ衣類を纏い、両手に拘束具を嵌めた姿は罪人と呼ぶに相応しいものだ。看守はその言葉に僅かに口角を上げる。繋げられた首輪を無理に引き寄せた。
「えぇ、えぇ、そうですよ? 罪人以外の何だと言うのでしょう。貴男方へ拷問を課し、苦しめているのは誰を隠そうこの私です。でもね、貴男方がやった行いだって、そう変わらないではありませんか。罪人が罪人に苦しめられる。こんなクソみたいな屈辱、貴男もとくと味わうが良い」
そう吐き捨てると、顔面を鷲摑み、そのままメリメリと爪を立てた。爪がひふに食い込み、血が湧きでる。桃色の頬肉が抉れ出て、骨が見える。それから耳を覆いたくなるような不快な音を立てて引きちぎった。
手に染まるは鮮血。赤く、赤く、色付ける。
「兄さん」
「仕事中は干渉すんなよ、シャルル。せめて此処を出てからにしろ」
―終―