カルペ・ノクテム
ネタバレ込みです((((;゜Д゜))))
読む方、ご注意をお願いします(-ω-;)
──だったら、“カルペ・ディエム”で良いのではないの?
その問いに、男は妖艶に微笑んだ。女心を蕩かしてしまうような、甘ったるい微笑みだった。
男は長い長髪をはらりと払い除け、口元に手を当てる。
「んー……。君は俺の正体を知って、驚いちゃうかも知れないからなぁ……。でも、人の驚いた顔は可愛くて好きなんだよね。うん、まぁ良いか」
するりと傍に擦り寄ると、密着気味に纏わり付く。椅子の上の、狭い隙間を利用して、私の上に乗り上げると、ぐっと顔を近づけてくる。
いやいや!! 近い!! 近い近い近い!! 少なくとも女子にするには近すぎる!!
「んん? どうしたの?」
「近い……」
語尾に、括弧付きの怒りを付け加えて欲しい。未婚の、愛だの恋だのほざいた事のないような娘に、この距離感はまずい。
垂れ下がっていた手を上げて、額を押し退ける。しかし上手くいかない……。
「だって君、凄く良い匂いがするから……」
胸元当たりに顔を埋めようとする、距離感を無視して止まない男をなんとか押し止め、嫌味を言ってやった。椅子から転げ落ちそうな私にとって、此れが精一杯の抵抗である。
「有り難ぇ話ですね……」
「俺はね──」
──吸血鬼なんだ──
目を見開き、呼吸を止める私に対し、嬉しそうに満面の微笑みを浮かべる。幸いにも、獲物を捕って食うような微笑ではなきにしろ、この体制は極めて危ない。
「ね? 分かったでしょう? 俺が“カルペ・ノクテム”という理由」
吸血鬼の活動時間は主に“夜”のイメージがある。彼はそのイメージ通りに、“カルペ・ディエム(その日を掴め)”と呼ばず、“カルペ・ノクテム(夜を掴め)”と言っていたのだ。
「ねぇ、吸ったりしないから、変わりに首を舐めるのは?」
「却下!!」
─終─
ロキパパはマイペースな上に、行動が密着気味です……。
娘も絶賛受け継いでます……。