銅、即ち血刀
剥げた土地に、川を渡る野生動物のような軍勢。その誰もが虚ろな、焦点の合わない目をして、蔓延るように歩いている。
そんな軍勢と対峙するかの如く、一人の女が仁王立ちしていた。
“女”と言うと成人女性を思い浮かべる者も多いと思うが、この女の外見は、まだ二十歳すらも迎えていないような、少女の体躯をしていた。恐らく、十八と言ったところだろうか。
「ちっ……敵が多いなぁ……」
舌打ち混じりに眼前を見据え、女は吐き捨てる。明らかに憂鬱そうで、煩わしさを隠しもしない表情。しかし其処に“恐怖”の二文字は欠片も無かった。
女は背負っていたケースを側に直立させる。そして凭れるように肩肘を置き、指を鳴らすと手品師のように開け放った。
中に収められていたのは背の高い“刀”と呼ばれる者達。そのどれもが箱から飛び出さんばかりに武者震いをし、『自分を使え』と自己主張を開始する。
「はいはいはいはいはい…………。金はまだ私にゃ無理だし、銀は今は使えないし、鉄はそもそも相応しくないし…………使うのはやっぱり銅か錫か……」
敵の前で呑気に使用武器を選んでいる。明らかに相手を油断し、嘗めて掛かっている。それが仇となったのか、軍勢の一体が女に向かって飛びかかって来た。だが──。
「あのさぁ──今考えてんの。邪魔しないで」
その一体は空中で上下を分断され、地上を跳ね回る。飛び散った生き血が掲げられた一振りに集中し、有無を言わさずに吸収されていった。人の血液を丸々吸い取った刃は、“愉悦”とばかりに脈動を開始。其れを見た女の目も、血のように赤く染まっている。
女は手早くケースを閉じると、あっさりと自分の肩に担ぎ、長身の刃を敵に向けた。
「良かったじゃないか、銅。久し振りの馳走だ」
女の顔に三日月。そして其れに答えるように、どくり、どくり、と脈を打つ。
女は一人飛翔し、軍勢の中に飛び込むと、容赦なく“銅”を振りかざす。一瞬にして赤が華を咲かすものの、全て一振りに集まり、地に一滴も落とさない。
女は次に残った者共に少しの掠り傷を付けていく。とろりと溶け出した紅は腕を伝う事なく一点に集まる。そう、銅に。
“銅”とは即ち、血を啜る妖刀、血刀だったのだ。
「あぁ、ヤバい死亡フラグ立てんの忘れった。にしても今日は随分と腹ペコだな」
─終─
私の銅に対するイメージは
外見・金髪、赤目。正統派王子系。
性格・食いしん坊。
ウイ○ーの如く、血を啜っている。
(志望校に……のアレ)
ぼんやりしている。ある意味可愛い気だるさ。
持ち主に我が儘を言ってみよう!!
もっと大切に扱って。
という感じです(*´∀`)
小ネタ
彼女が手にしている日本刀の名前は、五金由来です(*´∀`)
それぞれ役割が決まっています_(._.)_




