唇に本物の愛を乗せて
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
すいません、恋愛じゃないです。
「アレニエ? どうしてそんな、男の人の格好をしているの?」
私の前に立つ彼女はぐらりと首を折った。顔には張り付いた疑問符、目は大きく見開いていた。
背をかがめて視線を合わせて、出来る限り穏やかな口調で伝える。
「男の人だからですよ」
彼女は未だに納得していない様に疑問符を顔に貼り付けている。だから……今の彼女に伝わる最大限の言葉で、伝える事にした。
「そういう趣味なのです」
そういうと、花の咲いた笑顔を浮かべて、私の体にぎゅっとしがみついて来た。一生懸命背伸びをして、肩口に顔を埋めて、優しく背中を撫でる。母が成人した子にする様な仕草だった。
「そう、とても素敵ね。アレニエ。とても似合っているわ。あぁ、生まれてくれて有難う。出会ってくれて有難う。愛おしい服を着てくれて有難う」
吐く言葉は蜜のように甘く、じんわりと胸に染み渡る。
「えぇ……。有難う……御座います」
私の師であるシェーレは精神病を患っている。聞いた話によると、罰を与え続ける自分への現実逃避。痛め付ける日々へ絶望し、どうにか自我を保つ自身への強烈な自己暗示だそうだ。
故に彼女は罪人の事を罪人ではなく、『お人形』、『ぬいぐるみ』と称する。そして人形遊びでもする様に、皮膚と服を縫い合わせ、腕を千切る。
そんな彼女が一仕事を終えた後の精神障害は酷いものだった。何時もは曲がりなりにも私を『男性』と称してくれるのに、拷問の後は決まって私の性を『女性』と認識する。
軍服を来た私に疑問を浮かべ、少女の様な声音で問いかける。『なぁぜ?』と。『貴方は女の子なはず』と。
本日も仕事のあと、酷い精神病を患いながら、鼻歌を奏でる。ミシンを片手に生地を縫い合わせながら、フリルが盛られたブラウスを作る。恐らく男性物。
「アレニエはボーイッシュなものが好きなのね。ふふふ。お陰様で出来上がるものは、みーんな男爵のようなお洋服ばかりよ。ほら、新作。でもたまには可愛いドレスを贈らせて頂戴な」
シェーレは光のない双眸で私を見る。今こうして服作りに向き合っているのも、血なまぐさい世界からの現実逃避だろう。
彼女はこの仕事と向き合い、逃げる為に、精神を犠牲にしている。それはこの世界の見え方までも歪な偽物へと変えてしまう。それでも……囁く愛は本物だった。
以下何でも許せる方向け。
個人の意見飛び交います。私の発言が許せる方のみ宜しくお願いします。
一歩間違えれば毒親まっしぐらですが、ギリギリ踏みとどまっているのは、自分の価値観を押し付けないところかと。
確かに強烈な自己暗示の果に、仕事後はアレニエを『女の子』だと思ってます。
でもアレニエが『男の人』の服を着るのを肯定するし、なんなら男性物の服を送ります。
※趣味はキラキラ、フリフリ、派手派手ですが。
アレニエも困った顔で受け入れているので、弁明の余地はあります。
アレニエの幼少期、弄ばれた実験台の果て、壊れたら捨てればいい。そんな世界で唯一居場所をくれて、沢山の愛の言葉をくれたのがシェーレです。
苦手には思っても、嫌いにはならなさそうな。
苦手には思ってそうですが。




