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吸血鬼

 日曜日の繁華街にて、私は休日を謳歌していた。私が通う高校は私立で、土曜日も授業がある。部活やら何やらで日曜日が潰れる事だって少なくない。

 だが今日は完全完璧な“オフ”。何処で何をしようが咎められる事はない。

 そりゃ限度と言うものが存在するが、其れを破って謳歌するほど愚かじゃない。

 と言う訳で、久しく来ていなかった洋服店を転々とし、めぼしいものは無いかとチェックを入れていた。不幸にも気に入った品は無く、また来ようと店を後にしたその時だった。

 数多の人混みの中、一際異彩を放つ青年を発見した。

 茶色の良く跳ねた短髪に、流行を取り入れた服装。背には大型の楽器ケースのようなものを背負っている。

 彼は私と目が合うと、ゆったりと手招きを始める。普段なら怪しいと思って逃げ出す筈なのに、今はどうしようも無く惹かれている自分がいた。

 人の荒波を潜り抜けるようにして、彼の元まで辿り着くと、美しい顔が目に入る。白玉のように艶やかな肌に、温厚そうな両目。男と言うよりかは女に近い、柔和な顔立ちだった。

 男は口を開く。

「お嬢さん、俺の目を見ていてくれないか……?」

 穏やかさの中に潜む魅力。惹きつけられて、目を離す事が叶わない。そのまま恋人同士のように数分間見つめ合った。

 不意に彼は口を開く。

「ねぇ、俺と遊びませんか?」

 とろとろとした美声が鼓膜を刺激して、酔いしれる。

 彼とは初対面で、運が悪ければ妙な勧誘に引き込まれるかもしれない。しかし断る事は本能が拒否をした。

 もっと聞いていたい。もっと見られていたい。もっと、もっと──。

「御返事は?」

 私は口を開く事無くこっくりと頷いてしまった。それ程までに心地よい。悪魔の囁きは甘美だと耳にするが、彼の囁きは正にそれだった。

 抗う事を許さず、理性が蜂蜜漬けにされたように働かない。

「ふふっ。良い子は好きだよ……。大好き……」

 すると彼は私の腰に腕を回し、緩慢に歩き始めた。

 連れて来られたのは人通りの少ない路地裏。此処で悲鳴を上げたところで助けに来る人間はまず居ないだろう。

 だがそんな不安さえ払拭させる程、頭がぼーっとしている。

「力を抜いて……そう。首をこう……そう、張らせて」

 言われた通りに力を抜き、首を大きく傾ける。肩の筋肉や肌が引きつり、感覚が鋭敏になる。その上を彼の指先がつつっと這う。

 その後だった。彼は赤い口を開き、その研ぎ澄まされた肩にかぷり……と歯を立てる。

 普通なら物凄く痛い筈なのに、全然痛くない……。寧ろ吸われる感覚が心地良い……。いっそこのままへたり込んでしまいそうだ。

 暫くして、漸く埋めた顔を引き剥がす。真っ赤な舌が唇を舐る様にも惹かれるのは、有る意味病気なのかもしれない。

「ご馳走様」

 彼は額にそっと口付けをすると、姿を消してしまった。


 あれ……? 私はどうしていたのだろう? 服を見ていて、気に入りが無くて……。あぁそうだ、まだ行ってない所に足を運ぶつもりだった。

 せっかくの休日なのだ。謳歌しなくては勿体無い。


         ──終──

先行登場!! です(*´∀`)

(パパさんー(ノ^^)ノ 娘まだ本格登場してないけど……)


ワンパターンですが、こういった吸血シーンは何度か登場しそうなので、一部始終を切り取って書いてみました(ノ^^)ノ



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